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第六章 レオンの剣術道場編
第98話 レオンの剣術道場 其の九
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ここで生活を始めてから何日か経ち、一緒に修行をするグループの人たちとはだいぶ仲良くなった。
ご飯を一緒に食べたり、道場の外に遊びに行ったり、寝る前に部屋に集まったり──修行以外の時間のほとんどを一緒に過ごしていた。
その一方で、面識のない他の人たちには避けられているような気がしていた。
廊下ですれ違っても目を逸らされたり、曲がり角でぶつかりそうになったとき、不気味なものでも見たような顔をされたりした。
今は仲がいいグループの人たちも最初はこんな調子だったから、俺を知らない人からしたらそんなものかと思っていた。
ある日、寝る前にしていた他愛のない話の中で、グループでも天然っぽい一人が俺にこう訊いてきた。
「コルネってさ、実は悪の組織で精巧に作られた人形で、その親玉であるロンド様が遠くから操ってるって本当?」
「なんて?」
「ばっ……そんなわけないだろ」「本人にきくなよ」とその天然っぽいやつは諫められていたが、俺はそんなことはどうでもよくて、質問の内容が突飛すぎて何も頭に入ってこなかった。
俺が悪の組織の人形で……師匠が親玉で俺を操っている? 誰がどう考えても本当ではないことは明白で、胡散臭すぎて笑ってしまう。
もしかして、他のお弟子さんが俺を避けていたのはこの噂のせいか。噂自体を信じている人はそんなにいないと思うが、これだけやばい噂が出回る人間はどこかしらやばいと疑われても仕方がない。
問題はこの噂の出どころだ。「俺が人形だ」などという馬鹿げた噂が何もなしに生まれるはずがない。
おそらく伝わっていく中で誇張されたり、誤って伝わったりということはあっただろうが、何かしら元になったものがあるんじゃないか。
例えば、俺が虚ろな目で夜な夜な道場を徘徊していただとか、人形のようにカクカク動いていたとか……心あたりはないな。
俺とよく似た人が元からこの道場にいて、間違われている可能性は──ないな。元からいるのなら、みんな知っているはずだし、俺と間違うことはないだろう。
人形……悪の組織……操る…………操作……もしかして、魔力操作のことか?
魔力操作は、体を動かしている方向と同じ方向に引っ張ると、ただ動きが速いように見える。しかし、減速するためや動きを止めるために体が動いている方向と違う方向に引っ張ると、体が急に止まったり、ゆっくり落ち始めたり見えることがある。
この噂が魔力操作に端を発するものだとしたら、この噂を流したのはあの人しかあり得ない。
ここに来て魔力操作を使ったのは一回きり──レオンさんの手合わせのときだけなのだから。
「ヨーゼフさんってどこにいるか知ってる?」
「ベッドがあるのはこの棟のB38だからたぶんそこに──」
「分かんないから案内して」
俺は自分の推理の答え合わせをするべく、ヨーゼフさんの部屋に向かった。
ご飯を一緒に食べたり、道場の外に遊びに行ったり、寝る前に部屋に集まったり──修行以外の時間のほとんどを一緒に過ごしていた。
その一方で、面識のない他の人たちには避けられているような気がしていた。
廊下ですれ違っても目を逸らされたり、曲がり角でぶつかりそうになったとき、不気味なものでも見たような顔をされたりした。
今は仲がいいグループの人たちも最初はこんな調子だったから、俺を知らない人からしたらそんなものかと思っていた。
ある日、寝る前にしていた他愛のない話の中で、グループでも天然っぽい一人が俺にこう訊いてきた。
「コルネってさ、実は悪の組織で精巧に作られた人形で、その親玉であるロンド様が遠くから操ってるって本当?」
「なんて?」
「ばっ……そんなわけないだろ」「本人にきくなよ」とその天然っぽいやつは諫められていたが、俺はそんなことはどうでもよくて、質問の内容が突飛すぎて何も頭に入ってこなかった。
俺が悪の組織の人形で……師匠が親玉で俺を操っている? 誰がどう考えても本当ではないことは明白で、胡散臭すぎて笑ってしまう。
もしかして、他のお弟子さんが俺を避けていたのはこの噂のせいか。噂自体を信じている人はそんなにいないと思うが、これだけやばい噂が出回る人間はどこかしらやばいと疑われても仕方がない。
問題はこの噂の出どころだ。「俺が人形だ」などという馬鹿げた噂が何もなしに生まれるはずがない。
おそらく伝わっていく中で誇張されたり、誤って伝わったりということはあっただろうが、何かしら元になったものがあるんじゃないか。
例えば、俺が虚ろな目で夜な夜な道場を徘徊していただとか、人形のようにカクカク動いていたとか……心あたりはないな。
俺とよく似た人が元からこの道場にいて、間違われている可能性は──ないな。元からいるのなら、みんな知っているはずだし、俺と間違うことはないだろう。
人形……悪の組織……操る…………操作……もしかして、魔力操作のことか?
魔力操作は、体を動かしている方向と同じ方向に引っ張ると、ただ動きが速いように見える。しかし、減速するためや動きを止めるために体が動いている方向と違う方向に引っ張ると、体が急に止まったり、ゆっくり落ち始めたり見えることがある。
この噂が魔力操作に端を発するものだとしたら、この噂を流したのはあの人しかあり得ない。
ここに来て魔力操作を使ったのは一回きり──レオンさんの手合わせのときだけなのだから。
「ヨーゼフさんってどこにいるか知ってる?」
「ベッドがあるのはこの棟のB38だからたぶんそこに──」
「分かんないから案内して」
俺は自分の推理の答え合わせをするべく、ヨーゼフさんの部屋に向かった。
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