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第九章 ルミーヴィアへの旅編
第186話 ロンドとの邂逅
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アタシと対峙している四人についてだが、マリーちゃんとアルノはいいとして、残る二人は全く分からないので、アルノに誰なのかと訊いてみる。
「こっちがコルネ──俺の弟みたいなもんだ。それで、えーと……こっちは…………」
コルネと紹介された少年はいいとして、もう一人の紹介にアルノは明らかに戸惑っている。こいつはもしかすると訳アリか?
気になったので、こっそりとそいつを探ってみる。回復魔法は体を以前の状態へ巻き戻す補助をする魔法──それゆえ対象の人体情報の把握は必須となる。
臓物の状態となると難しいが、魔力の流れくらいなら少し離れていてもアタシならサクッと読み取れる。どれどれと、魔力の流れを探っていると予想外の結果に驚く。こいつ──魔法使いだ。
筋肉の付き方から普段体を動かしていることは間違いないため、騎士か冒険者か、はたまた盗賊か、などと思っていたが──これは間違いない。この淀みなく流れる魔力──魔法使いだ、それも一流の。
王国魔法師団か、とカマをかけてみたが濁されてしまった。図星だという表情ではなかったので、おそらくハズレだろう。
一体何者なのかという疑問は残るが、宿屋でいつまでも話されては迷惑だろう。ここは一緒に飯を食えば、マリーちゃんとも仲良くなれるし、気が緩んでコイツも正体をポロッと漏らすかもしれない。
「ええええええええええええ!? あ、あのSラ──」
思わず出てしまった大声を途中で止める。このお方がまさかあのロンド様だったなんて──たしかに一流の魔法使いでありながら、鍛えていることとも辻褄が合うけれども。
長い間二人しかいなかったSランク冒険者に新たに加わった若き冒険者──そのニュースを聞いたとき、ちょうど私はパーティのランクがなかなか上がらないことに悩んでいた。
ランクが上がるにつれて昇格条件が厳しくなってきて、この調子で私は私塾を開くという夢に辿り着けるのだろうかと不安になっていた。
冒険者には寿命がある。生命としてのものではなく、冒険者として活動できる歳という意味だ。アタシは焦っていた。
そんなときにロンド様がSランク冒険者の仲間入りをしたと聞いて、アタシももしかしたら──そう思えた。
アタシが生まれたときからSランク冒険者は二人というのは常識で、三十年以上も他の者を寄せ付けない二人は手の届かない山のような存在だった。
アタシも、なんてのはさすがに楽観的すぎるけど、手が届くものなんだと分かって目の前が明るくなった気がした。それに顔も知らない関係でも同世代の冒険者が頑張ってると思うと励みになった。
だからこうしてロンド様と会えて、ゆっくり話せるなんて夢のようだ。
「こっちがコルネ──俺の弟みたいなもんだ。それで、えーと……こっちは…………」
コルネと紹介された少年はいいとして、もう一人の紹介にアルノは明らかに戸惑っている。こいつはもしかすると訳アリか?
気になったので、こっそりとそいつを探ってみる。回復魔法は体を以前の状態へ巻き戻す補助をする魔法──それゆえ対象の人体情報の把握は必須となる。
臓物の状態となると難しいが、魔力の流れくらいなら少し離れていてもアタシならサクッと読み取れる。どれどれと、魔力の流れを探っていると予想外の結果に驚く。こいつ──魔法使いだ。
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王国魔法師団か、とカマをかけてみたが濁されてしまった。図星だという表情ではなかったので、おそらくハズレだろう。
一体何者なのかという疑問は残るが、宿屋でいつまでも話されては迷惑だろう。ここは一緒に飯を食えば、マリーちゃんとも仲良くなれるし、気が緩んでコイツも正体をポロッと漏らすかもしれない。
「ええええええええええええ!? あ、あのSラ──」
思わず出てしまった大声を途中で止める。このお方がまさかあのロンド様だったなんて──たしかに一流の魔法使いでありながら、鍛えていることとも辻褄が合うけれども。
長い間二人しかいなかったSランク冒険者に新たに加わった若き冒険者──そのニュースを聞いたとき、ちょうど私はパーティのランクがなかなか上がらないことに悩んでいた。
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そんなときにロンド様がSランク冒険者の仲間入りをしたと聞いて、アタシももしかしたら──そう思えた。
アタシが生まれたときからSランク冒険者は二人というのは常識で、三十年以上も他の者を寄せ付けない二人は手の届かない山のような存在だった。
アタシも、なんてのはさすがに楽観的すぎるけど、手が届くものなんだと分かって目の前が明るくなった気がした。それに顔も知らない関係でも同世代の冒険者が頑張ってると思うと励みになった。
だからこうしてロンド様と会えて、ゆっくり話せるなんて夢のようだ。
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