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第十章 Aランク昇格編
第192話 旅から帰って
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マリーと別れてからの帰りの旅は、しんみりしてしまったのと期日までにラムハに戻らないといけないこともあって、そそくさと街を通り過ぎるだけだった。
ラムハに戻って数日、毎日していた修行が鈍った体には少しきつく感じられた。以前は軽々とまではいかないが、苦も無くできていたことまで出来なくなってしまうなんて……マリーにあんなことを言っておいてこの体たらくとは、情けない。
アドレア、ローランたち、レオンさんのところのみんな、そしてマリー──みんなにお互いに強くなろうと約束をして別れているのに、俺は本当に強くなれているだろうかと封じ込めていた焦りが顔を出してくる。
会えていないから分からないが、きっとみんな着々と努力を重ねている。なのに俺は──修行のメニューが新しくなったときに強くなったことは実感したし、師匠も「走るのが速くなった」とは言ってくれたが、目に見える証拠は何もない。
半年前にBランクに上がってからは、ずっとランクも上がっていないし、これといったモンスターを倒してもいない。
そもそも俺が狩っているBランクのモンスターはBランクの中でもあまり強くない方だ。逃げ足が速かったり、効果的な魔法の系統が少なかったりするためにBに分類されてはいるが、果たして俺は本当にBランク相当のモンスターを倒す実力があると言えるのだろうか。
オーガのときだって、俺には師匠に頼ることしかできなかった。もし師匠が到着するまでの間にオーガが山から下りてきたとしたら、村は壊滅していただろう。
たまたまオーガがすぐに下りてこなかったから師匠が対処できたものの、最悪の可能性だって十分にあり得た。もしもその場にいた俺にもっと実力があったら村が危険にさらされるリスクなど負わずにオーガを倒しに行けたはずだ。
つまるところ、俺の次の目標はAランクに昇格することだ。もちろん、すぐにAランクに上がるのは無理に決まっているが、少なくともそこに至る一歩だけでも踏み出したかった。何かしらの行動を起こしたかったのだ。
それも「俺は停滞してなどいない」と思いたいがための自己満足にすぎないのかもしれないが、ただ止まっているよりはマシだ。
俺は治っていない軽い筋肉痛の体を持ち上げ、師匠の部屋へと向かう。寝る前のこの時間帯には確実に部屋にいるはずだ。
「こんな時間に用事とは珍しいね。どうしたんだい、コルネくん?」
俺の足音を聞いた師匠がドア越しに問いかける。
「師匠──俺、Aランクに昇格したいです」
少し間があってから、師匠の返事がある。
「分かった。今日はもう遅いから明日──また明日話そう」
扉の向こうからそう答える師匠の声は、先ほどまでのふわふわした声ではなく、低くはっきりとした声だった。
ラムハに戻って数日、毎日していた修行が鈍った体には少しきつく感じられた。以前は軽々とまではいかないが、苦も無くできていたことまで出来なくなってしまうなんて……マリーにあんなことを言っておいてこの体たらくとは、情けない。
アドレア、ローランたち、レオンさんのところのみんな、そしてマリー──みんなにお互いに強くなろうと約束をして別れているのに、俺は本当に強くなれているだろうかと封じ込めていた焦りが顔を出してくる。
会えていないから分からないが、きっとみんな着々と努力を重ねている。なのに俺は──修行のメニューが新しくなったときに強くなったことは実感したし、師匠も「走るのが速くなった」とは言ってくれたが、目に見える証拠は何もない。
半年前にBランクに上がってからは、ずっとランクも上がっていないし、これといったモンスターを倒してもいない。
そもそも俺が狩っているBランクのモンスターはBランクの中でもあまり強くない方だ。逃げ足が速かったり、効果的な魔法の系統が少なかったりするためにBに分類されてはいるが、果たして俺は本当にBランク相当のモンスターを倒す実力があると言えるのだろうか。
オーガのときだって、俺には師匠に頼ることしかできなかった。もし師匠が到着するまでの間にオーガが山から下りてきたとしたら、村は壊滅していただろう。
たまたまオーガがすぐに下りてこなかったから師匠が対処できたものの、最悪の可能性だって十分にあり得た。もしもその場にいた俺にもっと実力があったら村が危険にさらされるリスクなど負わずにオーガを倒しに行けたはずだ。
つまるところ、俺の次の目標はAランクに昇格することだ。もちろん、すぐにAランクに上がるのは無理に決まっているが、少なくともそこに至る一歩だけでも踏み出したかった。何かしらの行動を起こしたかったのだ。
それも「俺は停滞してなどいない」と思いたいがための自己満足にすぎないのかもしれないが、ただ止まっているよりはマシだ。
俺は治っていない軽い筋肉痛の体を持ち上げ、師匠の部屋へと向かう。寝る前のこの時間帯には確実に部屋にいるはずだ。
「こんな時間に用事とは珍しいね。どうしたんだい、コルネくん?」
俺の足音を聞いた師匠がドア越しに問いかける。
「師匠──俺、Aランクに昇格したいです」
少し間があってから、師匠の返事がある。
「分かった。今日はもう遅いから明日──また明日話そう」
扉の向こうからそう答える師匠の声は、先ほどまでのふわふわした声ではなく、低くはっきりとした声だった。
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