パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十章 Aランク昇格編

第193話 Aランクへの壁(ロンド視点)

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 僕が寝る前に旅の記念に買ったあれこれを眺めてニヤニヤしていると、いきなりコルネくんがやってきてAランクになりたいと告げた。ついこないだのように感じていたが、考えてみればコルネくんがBランクに上がったのはもう半年も前になる。

 色んな出会いと別れを経て、彼も焦っているのだろうか。特に同年代のうち唯一近くに残っていたマリーちゃんまで行ってしまったのが堪えたのかもしれない。

 いずれにせよ、コルネくんがAランクになりたいと言ったのだ。ならば、師匠である僕は全力でサポートするのみ。

 僕は棚の奥にしまいこんでいたモンスターの分布図を引っ張り出してくる。Aランクへの昇格はBランクとは比べものにならないほど難しい。

 その条件とは、Bランク相当とされている全種類のモンスターをそれぞれ二体以上倒すことだ。Bランクの中には通用する攻撃の種類が少なかったり、戦闘力ではなく捕まえにくさでBランク相当と定められているものもいる。

 そのようなモンスターのみの討伐でAランクに上がったパーティが、格の違うAランク相当のモンスターの討伐クエストで命を落とす──そんな悲劇を避けるためにこの条件が設けられている。

 二体以上となっているのは、弱っているところにとどめを刺しただけ、などのまぐれを防ぐためだ。つまるところ、出来る限りいろんなモンスターと闘ってAランクに備えろ、ということだ。

 Aランクへの昇格を認められるパーティが少ないのには理由が二つある。一つはモンスターの分布だ。

 地域が違えばそこに棲むモンスターの種類も違う。特定の地域にしか生息していないモンスターももちろんいる。そのため、Aランク昇格を目指すパーティは何度にもわたる移動を余儀なくされる。

 倒しては移動し、倒しては移動し──何十回と続くこの繰り返しに音を上げるパーティは少なくない。

 もう一つは期限だ。Aランクに上がるとなれば、もちろんBランク相当のモンスターなど軽々と倒せないと困る。

 すなわち余裕を持って倒せるか、ということだ。討伐クエスト自体はクリアしても、そのたびに深手を負って何日か休まなければならなかったり、次の討伐を躊躇してしまったりするようなパーティはAランクには相応しくない。

 Bランクのモンスターは倒せて当然なのだ。だから、昇格条件であるBランク相当全種類の討伐は三ヶ月以内に達成しなければならないという規定がある。

 この三ヶ月という期限が多くのパーティが挫折する原因だ。昇格を意気込む彼らのほとんどは最初の二、三体を討伐したところで気付いてしまう──このペースで続けるのは無理だと。

 僕は広げたモンスターの分布図からBランク相当のものの生息地を別の紙にリストアップしていく。

 書き写したものを見ながら、全てのモンスターを効率よく討伐するにはどのルートがベストかを考える。

(このルートが一番効率がいいけど、たしかここの山ではこのモンスターは個体数が少なかったはず……期限があるから見つける手間はなるべく省きたい。でも違うモンスターのためにここは外せない……)

 うんうんと唸っていると、気付いたときにはもうかなり夜が更けており、僕は慌てて寝るのだった。明日は冒険者会議だから早めに起きなくちゃいけないのに……心配だ。
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