パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十章 Aランク昇格編

第213話 バジリスク

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 挑戦を始めて今日は二十九日目。

「行ってきまーす」
「いってらっしゃい」

 二日間の休養を終え、俺はまたターニュに戻る。休養といってもこの二日は久しぶりに以前と同じような毎日の修行をしていたから、休んでいたかと訊かれるとそうではない気がするが、精神的にはとても安らいだ時間だった。

 次に帰ってくるのは早くても二十日後。移動を除いた十六日間は討伐クエストを進められるだけ進める。二日で一体を最低限のペースとするため、もし帰っている間の六日分すなわち三体以上の余裕がない場合は、向こうに残って討伐クエストを続けなければならない。

 まあ俺が序盤のペースで進められれば、おそらく二十日後にはまたここでのんびりと過ごせているだろう。



 三十一日目。昨晩ターニュに着いてぐっすり眠ってしまった。あまり深く眠りすぎると襲われたときに気付けないのでよくないのだが、疲れとラムハでの寝方で気持ちよく眠ってしまったみたいだ。そのおかげで目覚めはばっちりなので、結果オーライとしておこう。

 今日の討伐クエストはバジリスク。強い毒を持ったニョロニョロと長い体のモンスターだ。一般的なバジリスクの胴体の太さは人の腕くらいで、全長は身長の二倍ほどある。

 厄介なのは毒で、噛みつかれると何もしなければ死に至ることもある。他のパーティではバジリスクと戦うときは噛まれたらすぐに回復魔法をかけるらしいが、俺には回復魔法を使う仲間はいない。

 絶対に噛みつかれないように立ち回らなければならない。理想は不意打ちで首を切ってしまうことだが、そう上手くいくとは限らない。慎重にいかなければ。

 慎重にいかないといけないが、それはそれとして今日は一体じゃなくて二体倒して気持ちよく宿屋に戻りたい。バリバリ倒していくぞ。



 一体目のバジリスクを無事に倒し、討伐部位である眼球を回収した後、二体目を探していると、少し離れたところからバキバキとたくさんの枝が折れる音がする。

 何かしらのモンスターがいるのは確実なので、見つからないように少しずつ近づいていく。

「ウォォォォォォォォォォォォン!」

 モンスターがいるであろう場所から突然大きな咆哮が聞こえてくる。これは明日クエストを受ける予定だったオルトロスのものだ。

 オルトロスはケルベロスに姿かたちはよく似ている。頭の数がケルベロスは三つなのに対してオルトロスは二つで、オルトロスの方が一回りサイズが大きい。

 大きさは個体差があるので、外見だと頭の数でしか見分けがつかないのだが、最も違う点が一つある。気性だ。

 ケルベロスは気性が穏やかで人懐っこいため、愛玩モンスターとして飼う人もいるくらいだが、オルトロスの気性は非常に荒い。獰猛で、人を見ればすぐに襲ってくるほどだ。

 人だけでなく他のモンスターを襲うことも多いらしい。もしかするとこのオルトロスも何かと戦っているのかもしれない。

 もっと近づいて様子を窺おう。
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