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第十章 Aランク昇格編
第222話 Aランク昇格
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二体目のアンデッドを倒しギルドに戻る頃には、空は黄金色に染まっていた。
二体目のアンデッドとの闘いでは、どのあたりで消滅するかが一体目で分かっていたので、優雅とはいかないがほとんどダメージのない着地を決めることができた。
あまり長く持っていたくないと思っていた黒い石をギルドで渡し、報酬を受け取る。冒険者証の裏を見ると今日のクエストを達成した印がちゃんとついていた。
あとはこれを後日冒険者ギルドの本部に持っていけば、事実確認をしてもらってからAランクの認定が受けられるはずだ。
ついに────ついに終わったんだ。七十四日目の今日でBランク相当のモンスター四十八体を全部討伐するというAランク昇格の条件を達成したんだ。
四十八体も倒した気はしないが、ルート通りに移動してきたから漏れはないはずだから、きっと倒したんだろう。もう最初にラムハを出発したのはまるで遠い昔のようだ。
最初は調子がよかったけどだんだん塞ぎがちになっていって……ターニュでヘルガさんが来てくれて、そこからまた順調に進めるようになったんだっけ。
もしあのときヘルガさんが来てくれなかったら、あの後も俺は気乗りしないままクエストを受けつづけ、ペースもとても間に合わないほどになっていただろう。今でも深く感謝している。
感慨に浸りつつも、俺は宿屋への道を急ぐ。アンデッドを二体倒せたと──全て終わったと師匠に早く伝えなければ!
宿屋の階段を駆け上がり部屋に入ると、師匠が待ち構えており興奮した様子で訊いてくる。
「おかえり、アンデッドは倒せた?」
「はい! 二体とも倒せました!」
「ということは?」
「Aランク昇格です!」
「おおおおおおおおおおおお! やった! やったね、コルネくん! 昇格おめでとう!」
それからしばらく二人でAランク昇格の喜びを分かち合っていた。師匠からは「おめでとう」や「こんなに早く終わるなんて思わなかったよ」と色んな言葉をもらったが、その中でも「よく頑張ったね」という言葉が一番嬉しかった。
一通り喜んで、そろそろご飯にしようかとなった頃には窓の外は暗くなっていた。
「帰ってからもお祝いするけど、それとは別に今日はぱあっと行こうよ! 何食べる?」
「そうですね──お肉がたくさん食べられるところだとどこがありますか?」
以前トレトは通過しただけで初めてに近いので、俺はどんなお店があるのか分からない。きっとそういうことに関しては、テーブルに置かれたガイドブックの持ち主である師匠の方が詳しいはずだ。
「じゃあここなんてどうかな? ジューシーで肉厚なステーキが評判なんだって!」
「そこにしましょう」
迷いなくガイドブックを捲り、指差しながらそう答える師匠に頷く。ルンルンと鼻歌が聞こえてきそうな師匠と一緒に、俺はまだ見ぬご馳走に思いをはせながらトレトの街に繰り出すのだった。
二体目のアンデッドとの闘いでは、どのあたりで消滅するかが一体目で分かっていたので、優雅とはいかないがほとんどダメージのない着地を決めることができた。
あまり長く持っていたくないと思っていた黒い石をギルドで渡し、報酬を受け取る。冒険者証の裏を見ると今日のクエストを達成した印がちゃんとついていた。
あとはこれを後日冒険者ギルドの本部に持っていけば、事実確認をしてもらってからAランクの認定が受けられるはずだ。
ついに────ついに終わったんだ。七十四日目の今日でBランク相当のモンスター四十八体を全部討伐するというAランク昇格の条件を達成したんだ。
四十八体も倒した気はしないが、ルート通りに移動してきたから漏れはないはずだから、きっと倒したんだろう。もう最初にラムハを出発したのはまるで遠い昔のようだ。
最初は調子がよかったけどだんだん塞ぎがちになっていって……ターニュでヘルガさんが来てくれて、そこからまた順調に進めるようになったんだっけ。
もしあのときヘルガさんが来てくれなかったら、あの後も俺は気乗りしないままクエストを受けつづけ、ペースもとても間に合わないほどになっていただろう。今でも深く感謝している。
感慨に浸りつつも、俺は宿屋への道を急ぐ。アンデッドを二体倒せたと──全て終わったと師匠に早く伝えなければ!
宿屋の階段を駆け上がり部屋に入ると、師匠が待ち構えており興奮した様子で訊いてくる。
「おかえり、アンデッドは倒せた?」
「はい! 二体とも倒せました!」
「ということは?」
「Aランク昇格です!」
「おおおおおおおおおおおお! やった! やったね、コルネくん! 昇格おめでとう!」
それからしばらく二人でAランク昇格の喜びを分かち合っていた。師匠からは「おめでとう」や「こんなに早く終わるなんて思わなかったよ」と色んな言葉をもらったが、その中でも「よく頑張ったね」という言葉が一番嬉しかった。
一通り喜んで、そろそろご飯にしようかとなった頃には窓の外は暗くなっていた。
「帰ってからもお祝いするけど、それとは別に今日はぱあっと行こうよ! 何食べる?」
「そうですね──お肉がたくさん食べられるところだとどこがありますか?」
以前トレトは通過しただけで初めてに近いので、俺はどんなお店があるのか分からない。きっとそういうことに関しては、テーブルに置かれたガイドブックの持ち主である師匠の方が詳しいはずだ。
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「そこにしましょう」
迷いなくガイドブックを捲り、指差しながらそう答える師匠に頷く。ルンルンと鼻歌が聞こえてきそうな師匠と一緒に、俺はまだ見ぬご馳走に思いをはせながらトレトの街に繰り出すのだった。
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