パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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第十一章 サラの魔法道場編

第252話 初めてのAランクモンスター討伐 其の三

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 マーナ・ガルムが水を飲み終わり、森へと戻っていくのを見てから俺も動きだす。そのままの速さで歩いていればだいたいこのあたりにいるはずだ。

 できれば不意打ちをしかけて戦闘を有利に始めたかったが、この距離だと音が鳴るのを気にしていては追いつけないかもしれない。音を立てるのを構わずに急いで走っていると、木々の隙間からマーナ・ガルムがこちらに向かってくるのが見える。

「ウォン!」

 お互いに距離をつめていくと、マーナ・ガルムがひと鳴きして跳びかかってくる。俺は魔力操作を使って体をずらし、攻撃を躱す。

 やはり速い──突っ込んでくるマーナ・ガルムには土魔法で壁を作ってぶつからせたいところだが、さっき試した感じだとここの地面ではマーナ・ガルムの攻撃に壁が間に合わない。

 宙を舞っているマーナ・ガルムが着地する前に風魔法と魔力操作を同時に使い、方向転換しきっていない体を無理やり剣が振るえるような体勢にもっていく。すでに体を回転させながら着地しようとしていたマーナ・ガルムは俺の不自然な体の動きにぎょっとしているようだ。

 そこから炎の魔法剣でマーナ・ガルムの胴体へと打ち込んでみる──が、刃が通らない。勢いもついていない上に無理な体勢では力が伝わらず、すぐに刃が止まってしまう。

 すかさずマーナ・ガルムが爪で攻撃してこようともがくので、すぐにバックステップで距離を取る。

 スタッと軽く着地してこちらを睨むマーナ・ガルムは全く攻撃など効いていないような様子だが、体の側面が見えたときに白銀の毛並みが赤く染まっているのが分かる。

 確実にダメージは入っている。ならばあとは少しずつでも消耗させていけばいい。低く唸り声をあげていたマーナ・ガルムは、焦ったようにもう一度こちらに跳びかかって噛みつこうとしてくる。

 あまり同じ手を二度は使いたくないが、土壁が使えない以上は仕方ない。さきほどと同じように魔力操作で横にずれる──が、それを読んでいたのか避けた先の俺を抉るように前足の爪を振るう。

 避けなければ──このままでは肩口をごっそりと抉られてしまう。もっと、もっと速く魔力を動かせ。風の魔法も。筋肉も。

「──ッ!」

 全力で体や魔力を動かし、ごっそりとということにはならなかったが、鋭い傷ができ上腕から血が流れ出すのが分かる。

 痛みを堪え、もう一度同じように魔力操作で体を動かし、先ほど付けた傷のある場所に剣戟を叩きこむ。

「アォォォォォン!」

 今度は剣に肉を切る感覚がある。痛みのあまり甲高い悲鳴を上げるマーナ・ガルム。どさっと地面に落ちたマーナ・ガルムにとどめを刺すように首を炎の魔法剣で断ち切る。

 俺の動きを学習して即座に対応して見せる──これがAランクモンスターか。単純にスピードや動きもBランクに比べて上だったが、高い学習能力は予想外だった。

 サラさんも毛皮はいいと言っていたし、血の匂いにつられて他のモンスターがやってくる前に山を下らなければ──討伐部位マーナ・ガルムの耳を切り取り、その場を去ろうとすると、後ろからもう聞こえないはずの鳴き声がする。

 振り返ると、仲間と思われるマーナ・ガルムが──しかも複数体がこちらを見ていた。
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