259 / 328
第十一章 サラの魔法道場編
第252話 初めてのAランクモンスター討伐 其の三
しおりを挟む
マーナ・ガルムが水を飲み終わり、森へと戻っていくのを見てから俺も動きだす。そのままの速さで歩いていればだいたいこのあたりにいるはずだ。
できれば不意打ちをしかけて戦闘を有利に始めたかったが、この距離だと音が鳴るのを気にしていては追いつけないかもしれない。音を立てるのを構わずに急いで走っていると、木々の隙間からマーナ・ガルムがこちらに向かってくるのが見える。
「ウォン!」
お互いに距離をつめていくと、マーナ・ガルムがひと鳴きして跳びかかってくる。俺は魔力操作を使って体をずらし、攻撃を躱す。
やはり速い──突っ込んでくるマーナ・ガルムには土魔法で壁を作ってぶつからせたいところだが、さっき試した感じだとここの地面ではマーナ・ガルムの攻撃に壁が間に合わない。
宙を舞っているマーナ・ガルムが着地する前に風魔法と魔力操作を同時に使い、方向転換しきっていない体を無理やり剣が振るえるような体勢にもっていく。すでに体を回転させながら着地しようとしていたマーナ・ガルムは俺の不自然な体の動きにぎょっとしているようだ。
そこから炎の魔法剣でマーナ・ガルムの胴体へと打ち込んでみる──が、刃が通らない。勢いもついていない上に無理な体勢では力が伝わらず、すぐに刃が止まってしまう。
すかさずマーナ・ガルムが爪で攻撃してこようともがくので、すぐにバックステップで距離を取る。
スタッと軽く着地してこちらを睨むマーナ・ガルムは全く攻撃など効いていないような様子だが、体の側面が見えたときに白銀の毛並みが赤く染まっているのが分かる。
確実にダメージは入っている。ならばあとは少しずつでも消耗させていけばいい。低く唸り声をあげていたマーナ・ガルムは、焦ったようにもう一度こちらに跳びかかって噛みつこうとしてくる。
あまり同じ手を二度は使いたくないが、土壁が使えない以上は仕方ない。さきほどと同じように魔力操作で横にずれる──が、それを読んでいたのか避けた先の俺を抉るように前足の爪を振るう。
避けなければ──このままでは肩口をごっそりと抉られてしまう。もっと、もっと速く魔力を動かせ。風の魔法も。筋肉も。
「──ッ!」
全力で体や魔力を動かし、ごっそりとということにはならなかったが、鋭い傷ができ上腕から血が流れ出すのが分かる。
痛みを堪え、もう一度同じように魔力操作で体を動かし、先ほど付けた傷のある場所に剣戟を叩きこむ。
「アォォォォォン!」
今度は剣に肉を切る感覚がある。痛みのあまり甲高い悲鳴を上げるマーナ・ガルム。どさっと地面に落ちたマーナ・ガルムにとどめを刺すように首を炎の魔法剣で断ち切る。
俺の動きを学習して即座に対応して見せる──これがAランクモンスターか。単純にスピードや動きもBランクに比べて上だったが、高い学習能力は予想外だった。
サラさんも毛皮はいいと言っていたし、血の匂いにつられて他のモンスターがやってくる前に山を下らなければ──討伐部位マーナ・ガルムの耳を切り取り、その場を去ろうとすると、後ろからもう聞こえないはずの鳴き声がする。
振り返ると、仲間と思われるマーナ・ガルムが──しかも複数体がこちらを見ていた。
できれば不意打ちをしかけて戦闘を有利に始めたかったが、この距離だと音が鳴るのを気にしていては追いつけないかもしれない。音を立てるのを構わずに急いで走っていると、木々の隙間からマーナ・ガルムがこちらに向かってくるのが見える。
「ウォン!」
お互いに距離をつめていくと、マーナ・ガルムがひと鳴きして跳びかかってくる。俺は魔力操作を使って体をずらし、攻撃を躱す。
やはり速い──突っ込んでくるマーナ・ガルムには土魔法で壁を作ってぶつからせたいところだが、さっき試した感じだとここの地面ではマーナ・ガルムの攻撃に壁が間に合わない。
宙を舞っているマーナ・ガルムが着地する前に風魔法と魔力操作を同時に使い、方向転換しきっていない体を無理やり剣が振るえるような体勢にもっていく。すでに体を回転させながら着地しようとしていたマーナ・ガルムは俺の不自然な体の動きにぎょっとしているようだ。
そこから炎の魔法剣でマーナ・ガルムの胴体へと打ち込んでみる──が、刃が通らない。勢いもついていない上に無理な体勢では力が伝わらず、すぐに刃が止まってしまう。
すかさずマーナ・ガルムが爪で攻撃してこようともがくので、すぐにバックステップで距離を取る。
スタッと軽く着地してこちらを睨むマーナ・ガルムは全く攻撃など効いていないような様子だが、体の側面が見えたときに白銀の毛並みが赤く染まっているのが分かる。
確実にダメージは入っている。ならばあとは少しずつでも消耗させていけばいい。低く唸り声をあげていたマーナ・ガルムは、焦ったようにもう一度こちらに跳びかかって噛みつこうとしてくる。
あまり同じ手を二度は使いたくないが、土壁が使えない以上は仕方ない。さきほどと同じように魔力操作で横にずれる──が、それを読んでいたのか避けた先の俺を抉るように前足の爪を振るう。
避けなければ──このままでは肩口をごっそりと抉られてしまう。もっと、もっと速く魔力を動かせ。風の魔法も。筋肉も。
「──ッ!」
全力で体や魔力を動かし、ごっそりとということにはならなかったが、鋭い傷ができ上腕から血が流れ出すのが分かる。
痛みを堪え、もう一度同じように魔力操作で体を動かし、先ほど付けた傷のある場所に剣戟を叩きこむ。
「アォォォォォン!」
今度は剣に肉を切る感覚がある。痛みのあまり甲高い悲鳴を上げるマーナ・ガルム。どさっと地面に落ちたマーナ・ガルムにとどめを刺すように首を炎の魔法剣で断ち切る。
俺の動きを学習して即座に対応して見せる──これがAランクモンスターか。単純にスピードや動きもBランクに比べて上だったが、高い学習能力は予想外だった。
サラさんも毛皮はいいと言っていたし、血の匂いにつられて他のモンスターがやってくる前に山を下らなければ──討伐部位マーナ・ガルムの耳を切り取り、その場を去ろうとすると、後ろからもう聞こえないはずの鳴き声がする。
振り返ると、仲間と思われるマーナ・ガルムが──しかも複数体がこちらを見ていた。
0
あなたにおすすめの小説
(完結)魔王討伐後にパーティー追放されたFランク魔法剣士は、超レア能力【全スキル】を覚えてゲスすぎる勇者達をザマアしつつ世界を救います
しまうま弁当
ファンタジー
魔王討伐直後にクリードは勇者ライオスからパーティーから出て行けといわれるのだった。クリードはパーティー内ではつねにFランクと呼ばれ戦闘にも参加させてもらえず場美雑言は当たり前でクリードはもう勇者パーティーから出て行きたいと常々考えていたので、いい機会だと思って出て行く事にした。だがラストダンジョンから脱出に必要なリアーの羽はライオス達は分けてくれなかったので、仕方なく一階層づつ上っていく事を決めたのだった。だがなぜか後ろから勇者パーティー内で唯一のヒロインであるミリーが追いかけてきて一緒に脱出しようと言ってくれたのだった。切羽詰まっていると感じたクリードはミリーと一緒に脱出を図ろうとするが、後ろから追いかけてきたメンバーに石にされてしまったのだった。
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜
サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。
〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。
だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。
〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。
危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。
『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』
いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。
すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。
これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる