パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

第十一章 サラの魔法道場編

閑話四 年越し

　サラさんの魔法道場から帰ってきてひと月、風はだんだんと冷たくなってきて、冬の訪れを感じる。

　ラムハは王国の南にあるため、北方に比べると寒さはさほどではないはずだが、それでも外に出る気がなくなるくらいには寒い。北部では冬はクエストが溜まり放題のところもあるという話も頷ける。

あれから師匠やヘルガさんと短剣の練習も始めて、ようやく少しずつ手ごたえを感じ始めたころだ。

　師匠自身も短剣を扱ったことがなかったため手探りで練習していくことになるかと思ったが、ヘルガさんは心得があるらしく手ほどきをしてもらっている。ヘルガさんが投げた短剣がスッと的の中心に刺さるのを見たときは二人して感嘆の声を上げたものだ。

　今日は一年の最後の日。年越しは家族とゆっくり家で過ごすのが一般的になっており、今年もそれに倣い、師匠とヘルガさんと三人で過ごす。

　ここに来て最初の年の瀬は孤児院で過ごそうかと考えもしたが、結局ここで過ごすことにしたっけ。だからこうして三人で新しい年を迎えるのは三回目か。

　去年と同じようにサンダーバードの丸焼きを囲んで、あんなことがあった、こんなこともあったと一年を振り返る。

「今年もあっという間だったね」
「そうですね」

　もぐもぐとサンダーバードの丸焼きを食べながら話す。

「やはり今年はコルネくんがAランクに昇格したのが一番のビッグニュースでしょう」
「そうだね。準備期間も長かった分、それ一色の一年って感じだね」
「上がることができて本当によかったです。正直あれをもう一度はしたくありませんから」

　そうだろうね、と苦笑する師匠の口元には丸焼きのスパイスがついていた。俺と同様に気付いたヘルガさんがハンカチで素早く拭ってから、またサンダーバードに持ち替えてパクパクと食べだす。

　来年もいい年になるといいな。