パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

最終章

第262話 革命前夜

──レンド王国王都のとある屋敷にて。

「クハハハハハハハハ！」

　私は自室を歩き回りながら高笑いをする。扉越しに私の声は響き渡っているだろうが、使用人たちは私の笑い声には慣れっこだろう。

　ひととおり笑ったところで冷静になり、椅子に戻ってゆっくりと使用人に持ってこさせた酒をお気に入りのグラスに注ぐ。

　ここまでずいぶんと時間がかかった。私が放したティオール森林の巨大ケルベロスが想像以上の騒ぎになったため、調査が入念に行われて一気に動きづらくなってしまった。

　あれ以来王宮でも不審な行動をしている者がいないかと警戒が強まってしまい、ひどいときには外出先を逐一報告しなければならなかったときさえあった。何もしていないのに言いづらい外出を報告する羽目になった同僚にはかわいそうなことをした。

　モンスターの実験も目立たぬように時間を縫ってちまちまとしか出来なかったが……ようやく準備が整った。

　昔、どこかの誰かが言っていた。理想を叶えるには力が要ると。

　私は力を得た。この力で私の理想────王国の変革を成し遂げるのだ。

　グラスを手に取り、中の酒を一気に呷る。さあ、革命のはじまりだ。