パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一

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最終章

第270話 対オーガ

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 師匠が冒険者会議に向かった後、一人で修行メニューをやっていると、鐘の音が聞こえてくる。

 いつも鐘が鳴る頃には最初の素振りは終わっているのだが、今日はまだ終わっていない。やはり始めるのが遅かったせいだろう。

 少しペースを上げるか──そう思って、腕にこめる力を一層強くした。そのときだった。

「オオオオオオオオオオ……!」

 地鳴りのような大きな咆哮が市場の方から聞こえた。ビリビリと空気が震えるような、そんな咆哮だった。

 咆哮が収まると、今度は建物が崩れる音がひっきりなしにする。にわかには信じがたいが、俺が得た情報はラムハの街中でモンスターが暴れていることを意味していた。

 俺は手に持っていた剣を鞘に納めることもせずに、玄関へと急ぐ。

「コルネくん!」

 俺を呼び止めるヘルガさんの声も焦りが滲み出ている。

「私はここにいます。どの道戦力にはなりませんし、冒険者ギルドの人がまた来る可能性もあるので。くれぐれも気をつけて」

 俺は軽く頷き、玄関を飛び出した。



 全速力でモンスターがいる場所へと走る。土煙の上がっている方角から考えると、モンスターがいるのは街の中心部あたりだろう。

 どうやって街の中心にいきなりモンスターを出現させたのかは分からないが、これはおそらく誰かが恣意的にやっている。

 今朝師匠が突然出かけることになって、その間にモンスターが街で暴れるなど偶然にしては出来すぎている。きっと冒険者会議の日程が変更になったというのは真っ赤な嘘で、師匠をラムハから連れ出すのが目的だったのだろう。

 しかしそれが分かったところで状況は変わらない。俺はこの街の一冒険者として師匠不在の中、モンスターをどうにかしなければならない。

 逃げてくる人の波に逆らいながら走っているとモンスターの姿が見える。緑色の巨躯に俊敏な動き──このモンスターは……

「オーガ……」

 ヴィレアで大騒ぎになったAランク相当のモンスターだ。師匠から聞いていた特徴通りだから間違いない。しかし、身長は師匠が言っていた人間の数倍ではなく五倍以上はある。倒れかけている二階建てとの建物と同じくらいなので、明らかに数倍ではないだろう。

 大きい個体なのか、はたまたあのときのケルベロスのように巨大化したものなのかは分からないが、相当手強いのは確実だ。

 通常、モンスターは体が大きくなればなるほど動きが遅くなる傾向がある。しかし、オーガは例外で剣士のように俊敏に動く。

 一回殴っただけで壁に簡単にひびが入るのを見ると、一撃でも食らったらおしまいだということが分かる。おまけに拳を振るうスピードは人間と同じかそれ以上に速い。

 街を破壊しているのをそのまま見過ごすわけにはいかないが、正直俺が勝てるビジョンは見えない。どう闘ったものか……
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