319 / 328
最終章
第310話 パーティメンバー 其の四
しおりを挟む
「コ、コルネ様──お久しぶりです」
そう言いながら緊張した面持ちでこちらに向かってくるジャンは、エミルの言うようにまるで別人のようだった。
「以前はひどい態度を取ってしまって、も、申し訳ありませんでした」
「──それは収穫祭のときにもう聞きましたし、俺も大人げないことをしたのでお互い様です」
かつてのジャンの言動と全く違うことに面食らい、戸惑ってしまう。
「あの……僕の都合のためにパーティメンバーを探していただいてありがとうございます」
「いえ、そんな……珍しくエミルからの頼みごとだったので」
「……」
「…………」
気まずい。ジャンは俺がSランク冒険者だから緊張しているのだろうということは伝わってくるし、俺も想像と全く違うジャンと何を話していいのか分からない。深刻そうな謝罪から昔のことを掘り返すのもまずい気がするし──
「エミル、何を話せばいいと思う……?」
ジャンと俺のちょうど間に立って横から見守っているエミルに、ジャンがひそひそ声で訊ねている。小さい声とはいえ離れているわけではないから、俺にもしっかりと聞こえてくる。
俺もちょうど同じことを考えてたよ。
「うーん、二人ともよそよそしい気がするからコルネに前みたいに名前で呼んでいいか訊いてみたらいいんじゃないかな」
エミルも同じようにひそひそ声で返すが、その口元はにやけている。完全に俺に聞こえているのを知っている顔だ。
「そ、そんなことしたら、失礼じゃ──」
「コルネ、ジャンが前みたいにコルネって呼んでいいかって」
「ちょっ、エミル!」
慌てるジャンを尻目にエミルが普通のボリュームで訊いてくる。以前会ったときにも感じたが、三年前よりも図太くなったと感じるのは気のせいではないと思う。
「別に。むしろそっちの方が落ち着くし──俺もジャンって呼んでもいい?」
「も、もちろん……だよ、コルネ」
ジャンは恥ずかしげに見たことのない表情で笑った。びっくりして少しの間見ていると、エミルが話しだす。
「あ、もし二人を誘うんだったら、コルネもパーティに参加しちゃえば? 再結成みたいな感じでそっちの方が絶対楽しいって」
たしかに入れるなら入った方が楽しそうだ。俺が手紙を送ったり受けとったりと準備をするのに、俺抜きで楽しむなど、正直妬けて仕方がない。
「そうだな、入れるのなら入りたい」
「エミル、それだとコルネと俺の役割が被って──」
ジャンはおそらくパーティに剣士が二人になってしまうことを心配しているのだろうが──
「心配いらないって。コルネだって一人でAランクパーティやってたんだから、がっつり討伐クエストで剣を振るおうとは思っちゃいないさ」
元から討伐クエストのためにパーティに入ろうとは思ってはいない。アドレアやマリーたちとただ昔のようにわいわい過ごしたいだけだ。
「エミルの言う通りだよ、討伐なら他のところで一人でやればいいから。ジャン、参加してもいいかな?」
「もちろん──コルネさえいいなら僕が反対する理由はないから」
そう答えるジャンはどこか満足げだった。
そう言いながら緊張した面持ちでこちらに向かってくるジャンは、エミルの言うようにまるで別人のようだった。
「以前はひどい態度を取ってしまって、も、申し訳ありませんでした」
「──それは収穫祭のときにもう聞きましたし、俺も大人げないことをしたのでお互い様です」
かつてのジャンの言動と全く違うことに面食らい、戸惑ってしまう。
「あの……僕の都合のためにパーティメンバーを探していただいてありがとうございます」
「いえ、そんな……珍しくエミルからの頼みごとだったので」
「……」
「…………」
気まずい。ジャンは俺がSランク冒険者だから緊張しているのだろうということは伝わってくるし、俺も想像と全く違うジャンと何を話していいのか分からない。深刻そうな謝罪から昔のことを掘り返すのもまずい気がするし──
「エミル、何を話せばいいと思う……?」
ジャンと俺のちょうど間に立って横から見守っているエミルに、ジャンがひそひそ声で訊ねている。小さい声とはいえ離れているわけではないから、俺にもしっかりと聞こえてくる。
俺もちょうど同じことを考えてたよ。
「うーん、二人ともよそよそしい気がするからコルネに前みたいに名前で呼んでいいか訊いてみたらいいんじゃないかな」
エミルも同じようにひそひそ声で返すが、その口元はにやけている。完全に俺に聞こえているのを知っている顔だ。
「そ、そんなことしたら、失礼じゃ──」
「コルネ、ジャンが前みたいにコルネって呼んでいいかって」
「ちょっ、エミル!」
慌てるジャンを尻目にエミルが普通のボリュームで訊いてくる。以前会ったときにも感じたが、三年前よりも図太くなったと感じるのは気のせいではないと思う。
「別に。むしろそっちの方が落ち着くし──俺もジャンって呼んでもいい?」
「も、もちろん……だよ、コルネ」
ジャンは恥ずかしげに見たことのない表情で笑った。びっくりして少しの間見ていると、エミルが話しだす。
「あ、もし二人を誘うんだったら、コルネもパーティに参加しちゃえば? 再結成みたいな感じでそっちの方が絶対楽しいって」
たしかに入れるなら入った方が楽しそうだ。俺が手紙を送ったり受けとったりと準備をするのに、俺抜きで楽しむなど、正直妬けて仕方がない。
「そうだな、入れるのなら入りたい」
「エミル、それだとコルネと俺の役割が被って──」
ジャンはおそらくパーティに剣士が二人になってしまうことを心配しているのだろうが──
「心配いらないって。コルネだって一人でAランクパーティやってたんだから、がっつり討伐クエストで剣を振るおうとは思っちゃいないさ」
元から討伐クエストのためにパーティに入ろうとは思ってはいない。アドレアやマリーたちとただ昔のようにわいわい過ごしたいだけだ。
「エミルの言う通りだよ、討伐なら他のところで一人でやればいいから。ジャン、参加してもいいかな?」
「もちろん──コルネさえいいなら僕が反対する理由はないから」
そう答えるジャンはどこか満足げだった。
0
あなたにおすすめの小説
無能扱いされ、パーティーを追放されたおっさん、実はチートスキル持ちでした。戻ってきてくれ、と言ってももう遅い。田舎でゆったりスローライフ。
さら
ファンタジー
かつて勇者パーティーに所属していたジル。
だが「無能」と嘲られ、役立たずと追放されてしまう。
行くあてもなく田舎の村へ流れ着いた彼は、鍬を振るい畑を耕し、のんびり暮らすつもりだった。
――だが、誰も知らなかった。
ジルには“世界を覆すほどのチートスキル”が隠されていたのだ。
襲いかかる魔物を一撃で粉砕し、村を脅かす街の圧力をはねのけ、いつしか彼は「英雄」と呼ばれる存在に。
「戻ってきてくれ」と泣きつく元仲間? もう遅い。
俺はこの村で、仲間と共に、気ままにスローライフを楽しむ――そう決めたんだ。
無能扱いされたおっさんが、実は最強チートで世界を揺るがす!?
のんびり田舎暮らし×無双ファンタジー、ここに開幕!
S級スキル『剣聖』を授かった俺はスキルを奪われてから人生が一変しました
白崎なまず
ファンタジー
この世界の人間の多くは生まれてきたときにスキルを持っている。スキルの力は強大で、強力なスキルを持つ者が貧弱なスキルしか持たない者を支配する。
そんな世界に生まれた主人公アレスは大昔の英雄が所持していたとされるSランク『剣聖』を持っていたことが明らかになり一気に成り上がっていく。
王族になり、裕福な暮らしをし、将来は王女との結婚も約束され盤石な人生を歩むアレス。
しかし物事がうまくいっている時こそ人生の落とし穴には気付けないものだ。
突如現れた謎の老人に剣聖のスキルを奪われてしまったアレス。
スキルのおかげで手に入れた立場は当然スキルがなければ維持することが出来ない。
王族から下民へと落ちたアレスはこの世に絶望し、生きる気力を失いかけてしまう。
そんなアレスに手を差し伸べたのはとある教会のシスターだった。
Sランクスキルを失い、この世はスキルが全てじゃないと知ったアレス。
スキルがない自分でも前向きに生きていこうと冒険者の道へ進むことになったアレスだったのだが――
なんと、そんなアレスの元に剣聖のスキルが舞い戻ってきたのだ。
スキルを奪われたと王族から追放されたアレスが剣聖のスキルが戻ったことを隠しながら冒険者になるために学園に通う。
スキルの優劣がものを言う世界でのアレスと仲間たちの学園ファンタジー物語。
この作品は小説家になろうに投稿されている作品の重複投稿になります
チートスキル【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得&スローライフ!?
桜井正宗
ファンタジー
「アウルム・キルクルスお前は勇者ではない、追放だ!!」
その後、第二勇者・セクンドスが召喚され、彼が魔王を倒した。俺はその日に聖女フルクと出会い、レベル0ながらも【レベル投げ】を習得した。レベル0だから投げても魔力(MP)が減らないし、無限なのだ。
影響するステータスは『運』。
聖女フルクさえいれば運が向上され、俺は幸運に恵まれ、スキルの威力も倍増した。
第二勇者が魔王を倒すとエンディングと共に『EXダンジョン』が出現する。その隙を狙い、フルクと共にダンジョンの所有権をゲット、独占する。ダンジョンのレアアイテムを入手しまくり売却、やがて莫大な富を手に入れ、最強にもなる。
すると、第二勇者がEXダンジョンを返せとやって来る。しかし、先に侵入した者が所有権を持つため譲渡は不可能。第二勇者を拒絶する。
より強くなった俺は元ギルドメンバーや世界の国中から戻ってこいとせがまれるが、もう遅い!!
真の仲間と共にダンジョン攻略スローライフを送る。
【簡単な流れ】
勇者がボコボコにされます→元勇者として活動→聖女と出会います→レベル投げを習得→EXダンジョンゲット→レア装備ゲットしまくり→元パーティざまぁ
【原題】
『お前は勇者ではないとギルドを追放され、第二勇者が魔王を倒しエンディングの最中レベル0の俺は出現したEXダンジョンを独占~【レベル投げ】でレアアイテム大量獲得~戻って来いと言われても、もう遅いんだが』
追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る
夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!
追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます
黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!
【完結】帝国から追放された最強のチーム、リミッター外して無双する
エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング2位獲得作品】
スペイゴール大陸最強の帝国、ユハ帝国。
帝国に仕え、最強の戦力を誇っていたチーム、『デイブレイク』は、突然議会から追放を言い渡される。
しかし帝国は気づいていなかった。彼らの力が帝国を拡大し、恐るべき戦力を誇示していたことに。
自由になった『デイブレイク』のメンバー、エルフのクリス、バランス型のアキラ、強大な魔力を宿すジャック、杖さばきの達人ランラン、絶世の美女シエナは、今まで抑えていた実力を完全開放し、ゼロからユハ帝国を超える国を建国していく。
※この世界では、杖と魔法を使って戦闘を行います。しかし、あの稲妻型の傷を持つメガネの少年のように戦うわけではありません。どうやって戦うのかは、本文を読んでのお楽しみです。杖で戦う戦士のことを、本文では杖士(ブレイカー)と描写しています。
※舞台の雰囲気は中世ヨーロッパ〜近世ヨーロッパに近いです。
〜『デイブレイク』のメンバー紹介〜
・クリス(男・エルフ・570歳)
チームのリーダー。もともとはエルフの貴族の家系だったため、上品で高潔。白く透明感のある肌に、整った顔立ちである。エルフ特有のとがった耳も特徴的。メンバーからも信頼されているが……
・アキラ(男・人間・29歳)
杖術、身体能力、頭脳、魔力など、あらゆる面のバランスが取れたチームの主力。独特なユーモアのセンスがあり、ムードメーカーでもある。唯一の弱点が……
・ジャック(男・人間・34歳)
怪物級の魔力を持つ杖士。その魔力が強大すぎるがゆえに、普段はその魔力を抑え込んでいるため、感情をあまり出さない。チームで唯一の黒人で、ドレッドヘアが特徴的。戦闘で右腕を失って以来義手を装着しているが……
・ランラン(女・人間・25歳)
優れた杖の腕前を持ち、チームを支える杖士。陽気でチャレンジャーな一面もあり、可愛さも武器である。性格の共通点から、アキラと親しく、親友である。しかし実は……
・シエナ(女・人間・28歳)
絶世の美女。とはいっても杖士としての実力も高く、アキラと同じくバランス型である。誰もが羨む美貌をもっているが、本人はあまり自信がないらしく、相手の反応を確認しながら静かに話す。あるメンバーのことが……
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜
あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」
貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。
しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった!
失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する!
辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。
これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる