cross of connect

ユーガ

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絆の邂逅編

第九話 再会

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「こんなでっけぇ元素機械が何で家の地下にあるんだ・・・⁉︎」
ユーガは巨大な元素機械を見上げて呟いた。
「・・・しかし・・・この元素機械は一体・・・」
トビも元素機械を見上げて呟く。トビでも知らない事もあるのか、とユーガは内心思ったが、すぐに再び元素機械に眼を戻した。
「・・・これは・・・もしかして、製造機械(クリエブロスト)⁉︎」
「製造機械?それって何ですか?」
ルインの言葉にミナが眼を向けた。ルインは驚きを隠せない様子で、
「・・・千年前、元素戦争があったのはご存知ですか?」
と言った。ああ、とユーガ達は声を揃えて答える。千年前、ケインシルヴァとクィーリアは不足した元素を求めて戦争が起こった。歴史が苦手なユーガでも、その程度はわかる。
「その元素戦争で、クィーリアは兵が足りなくなったんです。そこで、当時の国王は兵を増産するための計画を立てたんです。それは、兵のDNAを採取し・・・『模造品(クローン)』を作るという方法でした」
「模造品・・・?それって?」
ユーガは腕を組んでルインに尋ねた。
「・・・模造品はDNAを採取された者と全く同じ姿をした人間を作り出す技術のことだ」
ユーガの質問にトビが答え、顎に手を当てる。
「模造品・・・それを作る機械がこれって事か?」
恐らく、とルインは頷く。
「でも、どうしてそんな物がこんな所に・・・?」
ミナの疑問に、答えられる者は当然いない。全員が黙り込み、その静寂を破ったのはユーガだった。
「・・・とにかく、これが元素を大量消費してるかもしれないんだろ?だったら停止させとけば良いんじゃねぇか?」
「・・・そうだな、そうしておくのが得策、か・・・」
トビが頷いたのを見て、ユーガは近くにあった操作盤のような物に近付いた。ユーガが手を置くと、何やら文章がずらずらと並んだが、ユーガはすぐにわからん、と頭を抱えた。見かねたトビがユーガを押し除けて操作盤を操作した。ーと、その時。トビの顔に向かって火の魔法が飛んだ。ユーガが反射的に剣を引き抜いてそれを弾き、火はユーガの剣に吸収される。
「づっ・・・」
吸収したとはいえ、多少なりともダメージは負う。
「・・・外したか」
コツ、と靴の音が響く。その声は、聞いた事のある声。ぞわ、とユーガは鳥肌が立つのを抑えられなかった。黒いコートを羽織り、フードを深く被っていて背中に槍を備えている。
「あなたは・・・!」
ルインのその声と同時に、トビも少し動揺を見せた。
「あの時の・・・」
ミナは首を傾げていたが、ルインとトビは覚えている。トルーメンに向かう最中、雨でユーガが風邪を引き、魔物に襲われた時に出会ったのだ。しかし、ユーガはそれよりも前、トビ達よりももっと昔にその声を聞いた。
「・・・お前達にその機械は止めさせない」
そう言って、フードを取った。その顔に、ユーガは息を呑んで、呟く。
「兄、貴・・・?」

ーどこへ行くのも、兄貴と一緒だった。二つ上の兄貴は俺から見たらとても大人っぽくて、陰ながら憧れていた。誕生日の時も祝ってくれて、本当に嬉しかった。けど、あのクィーリア兵が攻めて来た時、目を覚ますと側にいた兄貴はいなかった。母さんと父さんの遺体はあったけど、兄貴だけは見つからなかった。まさか生きているとは、思いもしなかった。だけど、どうして兄貴がー。

「兄貴・・・なんで・・・」
ユーガが呆然と呟くのを聞きながら、トビはユーガが兄と呼んだ男に向かって歩いた。
「・・・あんた、何なんだ?助けてくれたかと思えば不意打ちで魔法で殺そうとしてきた」
男は、チラリとユーガを見たがすぐに視線を逸らし、トビに眼をーその眼は紅色をしているー向けた。
「・・・僕の名はフルーヴ・ネサス。お前ら、この元素機械を止めるつもりなのか」
「・・・フルーヴ、って・・・やっぱり兄貴じゃないか!今まで何を・・・」
そこまでユーガが言ったところで、フルーヴは鋭い視線をユーガに向けて背中の槍をユーガの喉に突きつけた。
「質問に答えろ。この元素機械を止めるつもりなのか、と聞いている」
「あ、ああ・・・」
ユーガはこくこくと頷くと、フルーヴはそうか、と呟いた。
「・・・残念だがお前達にこの機械を止めさせる訳にはいかない」
そう言うと、フルーヴは鋭い眼をユーガに向けた。ユーガは眼を見開き、フルーヴを見た。
「兄貴・・・どうして!どうして止めるんだよ!これを止めないと、元素の流れが不安定になって・・・!」
「世界は滅ぶ」
「ー!」
フルーヴの驚く程冷静な声に、ユーガは信じられないものを見るような眼を向けた。
「そこまでわかってるなら、どうして俺達を止める?」
トビがフルーヴに切れ長な眼を向け、腕を組む。
「お前達にこれを止められたら困るんでな・・・諦めるか僕達の下に下るか選べ」
そう言い、フルーヴは背中の槍を抜いてユーガに向けた。ミナがフルーヴに短剣を向け、呆然としているユーガの肩を揺すった。
「ユーガさん、しっかりしてください・・・」
「あ、ああ・・・」
ユーガは剣を引き抜くが、剣先が震えるのを抑えられなかった。
「ユーガ!戦えないなら下がってろ!邪魔だ!」
トビが叫ぶと、フルーヴは槍をーそれは常人なら両手でないと持てなさそうな槍だーを片手で持ち、トビに向かって疾風の如く突き出した。トビはそれを危ないところで避け、銃を放つ。しかし、フルーヴはそれを槍の柄で弾き、槍を剣のように持ってトビに振りかぶった。ミナがそれを短剣で防ぐが、やはり小さい短剣と巨大な槍では大きさが違いすぎる。
「あっ・・・」
フルーヴはミナの脚を払う。ミナは尻もちをつき、フルーヴを見上げた。
「汝、牙烈なる風に包まれよ!エアブースト!」
ルインの魔法がフルーヴを包む。土煙が立ち、よし、とルインは呟いた。ーが、煙が収まるとフルーヴが魔法の詠唱にかかっていた。
「・・・無情なる深淵に眠るが良い」
「!」
ルインが気付き、マジックバリアを貼ろうと詠唱に入るが、遅い。
「・・・ナイトゼノ」
闇の魔法がルインを包み、ルインが苦しみに叫ぶ。ユーガはそれを呆然と見ながら、剣が、腕が、体が震えるのを感じた。
「・・・やめろ」
「・・・覚悟はいいか?」
フルーヴがトビに、ミナに、ルインに槍を向ける。ユーガは剣を強く握りしめ、脱兎の如く駆けた。
「・・・やめろぉっ!」

ひゅ、と剣が目の前で振るわれた。その剣は、目の前に向けられていた槍を弾いていた。フルーヴの眼が、驚きに見開かれる。
「・・・貴様・・・」
そこに入ったのは、緋眼が輝きを放っている『彼』。
「ユーガ・・・!」
トビは目の前で剣をフルーヴに向けるユーガに眼を向けた。その眼は、先程までの呆然とした眼ではなく決意に満ちた眼をしている。
「・・・やめてくれ、兄貴!これ以上、俺の仲間を傷付けないでくれ!」
ユーガはどこか縋るように、フルーヴに叫ぶ。しかし、それとは裏腹にフルーヴは冷たい声だった。
「・・・僕はお前の兄なんかじゃない。いいか?僕の名はフルーヴ・ネサス。名は同じだろうと、僕はお前の事なんて知らない」
「・・・っ」
ユーガは唇を噛み、なら、と呟く。
「・・・仲間を傷付けるなら・・・たとえ兄貴でも許さない!」
緋色の瞳が輝き、その眼がフルーヴをまっすぐ捉えた。フルーヴは一度眼を閉じ、再び開く。ーそして。
「・・・紅眼、解放」
フルーヴの紅色の眼がユーガと同じように輝き出し、重ねていた槍をユーガの剣から離す。
(・・・あの剣・・・)
フルーヴは懐かしみを覚えるような思いが胸の中に広がってきたのをちっ、と舌打ちをして抑え込み、槍をユーガに向けた。
「・・・トビ、皆の回復を頼む」
「・・・・・・わぁったよ」
トビは特に怪我が酷いルインに手を当て、ミナもトビのサポートに入った。
「兄貴・・・行くぞ!」
ユーガは剣を構えて走り出し、フルーヴに向かって振るいー。

ー剣が、宙に舞ったー


「・・・今戻った」
トビは宿屋の扉を開けて呟いた。ミナがおかえりなさい、と返事をする。
「・・・様子はどうだ?」
トビは、ベッドに横たわる人物に顔を向けてそう聞いた。その質問に、包帯に身を包むルインが答えた。
「・・・まだ、意識は戻りません」
ルインもベッドに顔を向ける。そこに横たわるのはー。
「ユーガさん、大丈夫でしょうか・・・」
ミナが、横たわるユーガを見て呟く。あの時、ユーガとフルーヴは戦った時、フルーヴの圧倒的な力を前にユーガはなす術なく地に伏してしまったのだ。
「・・・しかし、彼・・・フルーヴの目的は何なのでしょうか・・・」
ルインが誰に聞くでもなく呟いた。トビが腕を組んで椅子に座る。
「・・・世界が滅ぶ事に対して特に感情を抱いていないなら、世界を滅ぼす事が目的だろうな」
「ええ・・・ですが、フルーヴさんは良い情報を残していきましたね・・・」
ミナがそう言い、トビとルインも頷いた。
「ああ。少なくともフルーヴは独断で動いてるわけじゃなさそうだな」
「そのようですね。『僕たちの下に下るか』・・・そう言ってましたし」
ああ、とトビが頷いたのと同時に、ユーガが唸ってゆっくり眼を開けた。
「ユーガさん!」
「ユーガ!」
全員が、ユーガの前に顔を出す。ートビはそうしなかったが。
「う・・・トビ・・・ルイン・・・ミナまで・・・」
ユーガはゆっくり体を起こそうとしたが、痛みに顔を顰めた。
「散々にやられたんだ、黙って寝とけ」
トビが腕を組んでユーガを見る。ユーガは、うん、と頷いて、そういや、と口を開いて、
「兄貴は・・・?」
そう、尋ねた。
「・・・わかりません・・・フルーヴが何かを放ったように見えて、そこから記憶が・・・」
ルインが答え、トビもミナも同じように頷く。
「そっか・・・兄貴・・・」
ユーガはそう言って、両手を頭の後ろに回した。
「・・・あ、あの製造機械は・・・」
「・・・完全には止めきれていない。もしかしたら、フルーヴが再起動させてるかもしれねぇ」
「ですから、ユーガが回復したらまた行ってみましょう。あの機械を止めないと、元素の不安定化は治らないでしょうし」
ルインがそう言って、ユーガに微笑んだ。わかった、とユーガは答え、
(そういえば・・・兄貴の眼も光ってたよな・・・もしかして、兄貴の眼も特殊な眼なのかな・・・)
と思い出した。

「・・・よし、これで完全に止まるはずです」
ルインが製造機械の裏から出てきて待っていたユーガ達にそう言った。ユーガが回復し、トビ達の怪我も治ってすぐ、ユーガ達は製造機械を止めに来ていた。
「ありがとう、ルイン」
「・・・しかし、フルーヴがいなくて幸運だったな」
トビがそう呟いて息を吐いた。ええ、とミナも頷く。
「しかし・・・なぜこれがこんなところにあるのでしょうか・・・」
「さぁな・・・もしかしたら、ヘルトゥス王が何か知ってるかもしれない。聞いてみるのも手だな、ユーガ」
「・・・そうだな、ヘルトゥス王に聞いてみよう。ミヨジネアの王様だから、聞いてみて損はないだろうし」
ユーガはトビの言葉に頷き、隠し扉から外へ出た。
「そういや」とトビがミナを振り向いた。「お前、ミヨジネアの王城直属の調査員なんだろ?何で製造機械がここにあるのか、とか知らねぇのか?」
「王城直属、とはいえメレドルの街を調べはしませんでしたし・・・そもそも、製造機械が現代にあるとは思いませんでした」
ふーん、とトビはそれだけ言って眼を細めた。
「・・・しかし、ミナの反応は当然だと思いますよ。製造機械は千年前に使用されていた物。今の世の中に実在しているとは、考えないでしょうし」
ルインがどこかトビを抑えるように言い、ユーガもそれに頷く。
「千年前の技術、か・・・それがこの街にあるって、なんか感慨深いよな」
そうですね、とルインが呟く。
「千年前に使用されていた物が今ここに存在している・・・それは、ある意味では貴重な体験なのかもしれませんね」
「貴重、ねぇ・・・」
トビがどこか胡散臭さを感じさせる声で呟き、お、と声を上げた。
「トビ?どうしたんだ?」
トビの後ろから前を見たユーガは、説明を聞くまでもなく理解した。そこに立っていたのは、青髪で高貴な服を着ている人物。ユーガはその人物の名を呼ぶ。
「・・・ネロ!」
「・・・ユーガ!こんなところで会うなんて・・・しっかし、なんか久しぶりに会う気がするな!」
ネロはいつもと変わらない笑顔をユーガ達に向けて、ルインとミナに視線を向ける。
「・・・ん、この人達は・・・?」
「私はルイン・グリーシアと申します。元はケインシルヴァのレイフォルスの研究者でした。あなたはケインシルヴァのルーオス家の子息殿とお見受け致します」
ルインが恭しくネロに膝をついて頭を下げた。ネロは顔に驚きを浮かべ、ユーガを見た。
「ルインって・・・あのケインシルヴァの天才魔導士の?」
「うん、そのルイン。レイフォルスを追い出されちまって、俺達と来る事になったんだ。こっちはミナ。ミヨジネアで会った、俺達と同じように王城直属で地震の調査をしているみたいだ」
「・・・なるほど・・・俺がいない間に色々あったみたいだな。ユーガ、トビ。今の事情の説明を頼むよ」
ネロがそう言い、ユーガとトビを同時に見た。ユーガはわかった、と答え、トビは舌打ちをして渋々話し始めた。一通り説明を終えると、ネロは少し考え込んだ。
「・・・元素の不安定化、そして製造機械か・・・それに、ユーガのお兄さんが敵かもしれないのか・・・」
「かも、じゃねぇ」とトビ。「あいつは敵だ」
その言葉を聞いて、ユーガは少し胸が痛んだ。それに気付いたネロが、まぁ、と前置きをする。
「ユーガのお兄さんの目的とかはさておき・・・ユーガは元素の不安定化を止めたんだよな?」
「いえ」とルイン。「どうやら、まだみたいです。元素の不安定さは変わっていない」
それを聞き、ユーガが眼を見開いた。
「・・・じゃあ、まだ他にも原因があるのか・・・?」
そうだろうな、とトビが腕を組んだ。そこからしばらく全員が考え込んだがミナがネロに、あの、と視線を向けた。
「ネロさんはどうしてメレドルへ?観光、というわけでもないでしょうし・・・」
あ、とユーガも顎に当てていた手を下ろした。
「確かに・・・ルーオス公爵とガイアに残って公務をするんじゃなかったのか?」
そう、ユーガが聞くとネロは少し俯いて実は、と前置きをした。
「・・・四大幻将の二人が突然ガイアに来たんだよ」
「なんだって⁉︎」
「確か・・・『絶雹のキアル』と『煉獄のフィム』だったっけか?そいつらが来たんだ」
ネロは唇を噛み、くっ、と視線を上げた。
「・・・じゃあ、あの時二人がいなかったのはガイアに行っていたから・・・⁉︎」
ミナがそう言い、ユーガもミヨジネア城が攻められていた時に確かにその二人がいなかった事を思い出した。
「・・・ネロ、ガイアの状況は?」
こんな時にも冷静に、トビがネロに聞いた。
「・・・ほぼ壊滅だ。幸いにも死者は出なかったが・・・家のメイドも、祖父上も怪我を負ったんだ・・・」
「そんな・・・カヴィス王は無事なのか⁉︎」
「ああ、大丈夫。少し怪我を負ったけど、重い怪我じゃなかったみたいだ」
そっか、とユーガは安心して息を吐いた。ですが、とルインが腕を組む。
「・・・四大幻将の動きが掴めませんね・・・彼らは何を目的にそんな事をするのでしょうか・・・」
「それはわからないけど・・・とにかく、俺はそれを伝える為にこの街の王、ヘルトゥス王に謁見に来たんだ」
「なら」とユーガがネロを見る。「俺達もヘルトゥス王に会いに行くんだ。一緒に行こうぜ、ネロ」
そうだな、とトビも頷く。ネロは少し考えたが、わかった、と頷いた。
「じゃあ、一緒に行かせてもらうよ」
行きましょう、というミナの言葉に、全員が頷いた。

「そういえばさ」
ユーガは後ろを歩くネロの隣に寄って、尋ねた。
「ネロ、ここまで船で来たのか?」
「ああ、そうだけど?」
どうした?とネロがユーガを見た。
「いや、こっちからケインシルヴァに帰る事は出来なかったんだ。四大幻将が港を封じてる、とかで」
それを聞くと、ああ、とネロは笑った。
「俺は正式なケインシルヴァからの使者だからな。カヴィス王からの証明書もあったし、咎められる事もなかったよ」
「・・・やっぱ、ネロって貴族なんだよな」
ユーガがそう呟くと、ネロは何言ってんだ、と笑った。何でもないよ、とユーガも笑みを浮かべる。
「・・・つーか、あのミナって子・・・中々可愛いじゃん」
ネロが少し意地が悪い顔をして、ユーガに顔を寄せた。そうかな、とユーガは首を傾げた。
「ユーガ・・・お前、相変わらずそういう話に興味ねーなぁ」
つまんねー、とネロは呆れ目でユーガを見た。
「お前なー、ミナを可愛いとか思わねーの?」
「え?そりゃ、可愛いけど・・・」
お、とネロはユーガの肩に手を回した。
「なんだなんだ?恋に発展しそうだったりするのか?」
「何言ってんだ?ネロの家のメイドだって可愛い人ばっかじゃん」
ネロはああ、と頭を抑えた。そうだった。ユーガはこういう話にあまり興味がない。それに、自分の思った事を口に出しやすい。そのためなのか、家のメイドから意外と「天然で可愛い!」だったり「あの感じが良いよね!」等と本人は知らないが恋愛対象にされていたり、小さいながらファンクラブがあったりするのだ、とネロは思い出した。
「ああ・・・そうだな、うん。メイド・・・うん」
ネロはユーガの肩に回した手を離し、何度も頷いた。ユーガは何なんだ?と首を傾げてネロに眼を向けたがネロは、何でもないよ、の一点張りで通した。この手の話は、ユーガにしてると何故か疲れるという事を、ネロはすっかり忘れていた。

「四大幻将が、ガイアに攻めただと・・・?」
一連の流れを話したネロの言葉に、ヘルトゥスは椅子から体を前のめりにした。
「ええ。・・・しかし、ヘルトゥス王すら知らないのですか・・・」
「うむ・・・よし、四大幻将を指名手配にかけさせよう」
指名手配、とトビが呟き、腕を組んでヘルトゥスから眼を逸らした。
「何か?トビ殿よ」
近くにいた人物ー大臣であろうかーがトビに視線を向けた。
「いや?ただ、指名手配なんてしたところであんたら、四大幻将を捕まえる事なんてできんのかって思ったんだよ」
王の前だというのに、この遠慮の無さー、変わらないな、とネロは苦笑いする。しかし、ふっ、とヘルトゥスは笑みを浮かべた。
「それに関しては心配いらぬ。四大幻将よりも戦力のある兵が我等にはいる」
「ええ、このような時のために、すでに準備してあります」
とミナが答える。それを聞いて、ルインは内心口笛を吹いた。この準備の良さ。流石、と言うべきかもしれない、と思う。
「大臣、四大幻将の指名手配を」
「かしこまりました」
礼をして、大臣が部屋から出る。おそらく、指名手配の準備をしに行ったのだろう、とわかる。
「そして・・・製造機械、だったか?」
ええ、とルインが答える。
「何かご存知ありませんか?製造機械について・・・」
ヘルトゥスはしばらく考えていたが、ゆっくりと横に首を振った。
「・・・すまぬ・・・」
「そうですか・・・けど、兄貴の口ぶりだと少なくとも兄貴が所有者なんじゃないか?」
ユーガは腕を組んでトビ達を見た。だろうな、とトビも頷く。
「ま、あの口ぶりだとそうなるな」
「そうなると、ユーガのお兄さんを探さないといけないのか・・・」
「フルーヴさんを探すんですか・・・大変そうですね・・・」
ーと、ミナの言葉にヘルトゥスが、何、と反応した。
「フルーヴ・・・?ユーガ殿、貴公の兄はフルーヴ殿なのか?」
「え・・・兄貴を知ってるんですか⁉︎」
ユーガは組んでいた腕を解き、ヘルトゥスに顔を向けた。うむ、とヘルトゥスは頷く。
「フルーヴ殿は、三年前にこの街を魔物の襲撃から救ってくださった方でな・・・この城に住み込んでいたんだ」
「三年前・・・だが、どうしてミナはフルーヴを知らねぇんだ?」
トビがミナに蒼い眼を向けた。
「・・・その時、私はクィーリアで調査をしていましたから・・・しかし、その時の方がフルーヴさんだったなんて・・・」
「では、もしかしてこの城にまだフルーヴの部屋があったりしますか?」
ルインがヘルトゥスに尋ねると、ヘルトゥスは頷いた。
「うむ、二階にまだある。ここ数ヶ月は帰ってきていないが、荷物はまだ置いてあるぞ」
なら、とトビがユーガを見る。
「フルーヴの部屋を見せてもらうとするか。何かしら手がかりがあるかもしれないしな」
「ああ、そうだな」
そう言うと、女性ーミヨジネア城のメイドだろうかーがユーガ達を、こちらです、と案内した。階段を登り、一つの部屋の前で脚を止めた。
「こちらです」
「ありがとうございます」
ネロが礼をすると、メイドは恭しく礼をしてゆっくりと後ろに下がった。
ユーガが部屋を開けると、意外にも整った部屋が広がっていた。確かに、いろいろな荷物が置いてある。
「・・・これが、兄貴の部屋・・・」
ユーガがそう呟くと、隣にいたミナが、あ、と声を上げた。何かを見つけたらしい。
「何だ?それ・・・日記か?」
トビがそう聞くとネロがそれを拾い、ぱらぱらとノートをめくる。
「・・・ああ、日記っぽいな」
「フルーヴの日記、ですか・・・少し気が引けますね」
ルインは少し苦笑いしたが、やはり興味があるのかネロの手に持つ日記を見た。
「・・・読んでみましょうか」
「・・・うん」
ミナの言葉に、ユーガは頷いた。ネロが、ほい、と日記をユーガに渡した。ユーガは机の横にあった椅子を置いてそこに座り、日記を、ゆっくりと開いたー。
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