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絆の邂逅編
第十九話 古代の魔物
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「・・・立ち入り禁止ぃ?」
ケインシルヴァの領土である制下の門へ辿り着いたユーガ達は、そこでケインシルヴァ兵からそう告げられ、トビが腕を組んでそう返した。
「申し訳ございません。只今、関係者以外は立ち入りが認められておりません」
兵士はトビの姿を見て明らかに不機嫌になったが、後ろのユーガとネロ、さらにルインを見ると怪訝そうな顔をした。なぜ敵国の人間同士が一緒にいるのか、と思っているのかもしれない。ルインがそれには構わず、兵士に一礼をして尋ねた。
「何かあったんですか?」
「は・・・只今、制下の門内では魔物が凶暴化している模様でして・・・それを調べております故・・・」
それを聞いてミナが、なるほど、と呟き、ユーガにそっと顔を寄せた。
「・・・元素(フィーア)の不安定によって、魔物が凶暴化しているのかもしれませんね・・・」
「・・・そうか・・・」
ユーガは頷いて、兵士に向き直った。
「俺達もその事を調べているんです。その事と、各地で起こっている地震が同じ原因かもしれなくて・・・」
「俺の」とネロ。「顔を立ててもダメか?」
「申し訳ございませんが、ここはお通しできません。我らの偉大なるカヴィス王からのご命令により、如何なる理由であっても誰であろうともここはお通しするなとの命ですので」
ダメか、とネロは頭を掻いた。
「ケチです」
シノが小さく呟いたのをトビは聞いたがそれを無視し、舌打ちをした。
「・・・仕方ねえ。カヴィスから通行許可証でも貰いに行くぞ」
どのみち、自分としても一度ガイアには帰りたかった事もあり、ユーガは頷いた。
「・・・わかった」
「ユーガさん」
『フィアクルーズ』でガイアへ向かう最中、甲板でネロと稽古を行っていたユーガはミナから呼ばれ、稽古を中断した。
「どうしたんだ?」
「ガイアって、クレーターみたいな地形にありますよね・・・?あのクレーターみたいなのって、なんなんですか?」
ミナの疑問にユーガは、たしか、と首を捻った。
「あれは元々あった地形だったって聞いてる。ああする事によって、敵が一方向からしか来れないんだってさ」
「それに加えて、ガイアは上から元素障壁(フィアガドス)を発動させられるんだ。そうすれば、空からの攻撃も防ぐ事ができるからな」
と、ネロがユーガに次いでそう言った。
「そう考えると、ガイアって凄くねーか?色んな事が計算された上での地形って事だろ?」
ユーガは腕を組んでネロに向けてそう言った。
「そうだな。まぁ、それを言うならシレーフォの方も中々だけどな」
「シレーフォ?何で?」
ネロは、知らないのか、と少し呆れたように頭を掻いた。
「シレーフォは海際に浮いている水上都市だろ?あの都市は水の流れを機関として使っているのさ。水流発電、と言うのが正しいかな?水さえあればあの都市は崩せないようなもんだ。しかも、海に面しているから攻め込むのは陸の正門からか港からしか攻め込めないから、海側に元素障壁を貼れば陸側から攻めるしかないから・・・」
「陸側の正門からしか攻め込めず、不測の事態が起こりにくい、という事ですか・・・考えられていますね」
ミナの呟きにネロは、そういう事、と頷いた。そこにユーガは、へぇ、と眼を見張った。
「どっちの首都も自然の地形を利用したんだな・・・けど、ネロ。何でそんなに詳しいんだ?」
「地理や歴史は好きだからな。このグリアリーフの生誕、とか興味あるだろ?」
「いや」
「あんまり・・・」
ユーガとミナはほぼ同時に呟き、ネロは口を尖らせた。
それにしても、本当にガイアは大きい都市だな、とユーガは思った。こんな地形にガイアを作ろうとした人物は本当に凄い人間なんだな、と実感する。海沿いの港から大きなクレーターの中にあるガイアをユーガ達は見下ろした。
「行くぞ」
トビの言葉にユーガ達は頷き、昇降機で降りて都市の中心の広場へ向かい、異変に気付いた。
「・・・ネロ、何か人が少なくなってないか?」
「・・・そうだな。俺も思った・・・」
ガイアはケインシルヴァの首都という事もあり、普段はこの広場にも人が溢れている事が多いのだが、今は人が両手で数えるほどしかいない。近くにいた女性にルインが声をかける。
「あの・・・」
声をかけて、ルインはぎょっとした。その女性はぶつぶつと何かを呟いており、まったくルインの事を見ていなかった。
「マキラ・・・行く・・・精霊・・・研究所・・・」
女性はそう呟いて、ルインから遠ざかっていった。
「い、一体何なのでしょうか・・・」
ルインがそう呟くと、ネロは不思議そうに首を傾げた。
「・・・おかしいな、あんな女の人ガイアにいたっけ・・・?」
うーん、とネロは唸ると、ルインが、
「情報収集しましょう。明らかにこの現状はおかしい・・・。各グループに分かれて、ある程度の情報が集まったらまたここに戻ってきましょう」
と提案をした。ユーガ達は頷きートビは嫌そうだったがー、ユーガはトビを連れてガイアを歩いた。
「何で俺とお前なんだよ?」
トビがユーガの方を見て不満そうにそう尋ねた。
「くじ引きの結果だろ?それに俺は、トビと一緒に行けて嬉しいぜ?」
トビはその言葉を聞いて、ふん、と鼻を鳴らして顔を背けた。
「ネロ達も情報収集してくれてるし、俺達も頑張ろうぜ」
「・・・へいへい、わかったよ」
トビがそう呟いたその時。
「・・・ユーガ君」
「ん?」
ユーガはその声を聞き逃さず、きょろきょろと辺りを見渡した。が、ユーガを呼んだその声の主は見当たらない。
「・・・聞き間違いかな・・・?」
「どこ見てんだ、馬鹿。上見ろ」
上?とユーガが顔を上げるとー、そこには旅に出る前に毎日と見て見慣れた顔が窓からユーガを見下ろしていた。
「フィ、フィラルさん⁉︎」
「やっぱり、ユーガ君。話があるの。そこのドアから入ってきて」
フィラルの見下ろしている建物の下には扉があり、そこの事を言っているのだろう、とユーガはわかった。トビは腕を組んで考えていたが、何も言わずに扉を開けた。ユーガも追いかけ、トビと共に階段を登って部屋の中に入った。
「久しぶりね、ユーガ君」
「フィラルさん、どうしてここに・・・?ルーオス邸での仕事は・・・?」
その話を聞く限り、恐らくこのフィラルという女性もユーガと同じように使用人なのだろう、とトビは推測した。
「ここは私の元々住んでいた家よ。そして、使用人の仕事は・・・辞めたわ」
「辞めた⁉︎な、何で・・・⁉︎」
「誰かに使われるのではなく、私は私として・・・生きたかったの。ルーオス家に使用人として働いていたのも、親を養うためだったし」
フィラルは窓から外を少し見て、ふぅ、と息を吐いた。
「・・・けど、仕事を辞めて大丈夫なんですか?親を養うって・・・」
「・・・親は亡くなったの。だから、良い機会だと思って旅に出る事にしたわ。私が私として生きていけるように」
亡くなった。その言葉を聞いて、ユーガは俯いた。気にしないで、とフィラルはユーガに言って、トビを見た。
「ところで、この人は・・・?」
「え?あ、ああ。こいつはクィーリア人なんだけど、俺達の旅に協力してくれてるんだ」
「・・・してねぇよ。俺の目的のためにやってるだけだっつの」
トビはそう言って腕を組み、顔を背けた。
「名前は・・・?」
フィラルがそう尋ね、ユーガがそれに答える。
「トビ。トビ・ナイラルツっていうんだ」
それを聞いたフィラルは、え、と顔をトビに向けた。
「トビってまさか・・・あなた、『蒼眼』の・・・?」
「!」
「『そうがん』?何だ、それ?もしかして、トビの・・・」
「あんた、『蒼眼』を知っているのか・・・?」
トビは組んでいた腕を解き、フィラルを見た。
「ええ・・・。ユーガ君は『緋眼』を持っているでしょう?」
「・・・『緋眼』まで知ってるなんて、あんた何者だよ」
トビは疑いの眼をフィラルに向けてその眼を細めた。
「・・・そうね・・・あなた・・・トビ君は固有能力(スキル)、『希少探知』を知っているかしら?」
「希少価値のある物や珍しい物を見るだけで判別できるっていうアレか?まさか、あんたはその固有能力を持ってるってのか?」
トビが尋ねると、フィラルは小さく頷いた。
「・・・結局、その『そうがん』って何だ?」
ユーガは、話が見えない、と言うように頭を掻いた。
「『蒼眼』は、ユーガ君の『緋眼』と対になる存在、として言い伝えがあるの。ユーガ君の『緋眼』は元素を乖離させる力があるのに対して、『蒼眼』は元素を集める性質があるのよ」
「え⁉︎」
ユーガはそれを聞いて、トビを見た。
「・・・・・・」
トビは俯いて下を向き、眼は影に隠れて見えない。
「・・・どうやら、何か訳ありのようね」
「・・・うるせぇ。お前には関係ねぇだろ」
トビは俯いたまま呟いた。嫌な過去を思い出させてくれる。その元素を集めるという性質のせいで、俺が今までどんな思いをしたか知らないくせにー。トビは内心舌を打った。
「・・・ふ」
ユーガは手を握りしめてぶるぶると震えており、小さくそう呟き、顔を上げた。その眼はキラキラと輝き、ユーガは拳を胸の前で上下に振った。
「元素を集める⁉︎な、何だそれ!めっちゃくちゃカッコいいじゃんか‼︎」
「・・・は?」
「・・・え?」
トビとフィラルは同時にユーガの方を見た。だってさ、とユーガは興奮が止まないのか話が止まらない。
「え、じゃあ俺とトビって真逆って事か⁉︎すっげぇっ!対となる存在とか、かっけぇな‼︎なぁなぁ、その元素を集めるって、今できるのか⁉︎」
ユーガに眼を輝かせて詰め寄られ、トビは少し後退りしてそれに答えた。
「・・・い、いや・・・俺は・・・まだ能力が目覚めてねぇから・・・」
「じゃあじゃあ、目覚めさせたら使えるようになるのか⁉︎フィラルさん、目覚めさせるにはどうすれば良いんだ⁉︎」
ユーガは続いてフィラルに詰め寄り、さらに問い詰めた。
「そ、そこまではわからないけど・・・ユーガ君、わかってるの?元素を集めてしまうという事は、トビ君だけでなくあなたやあなたの仲間にも危害が及ぶかもしれないのよ?」
フィラルの言葉にユーガは首を捻って、フィラルを見た。
「それの何がいけないんだ?仲間が危ない時は皆で助け合うって、当然だろ?俺は眼の前で仲間が危ないのに見捨てる事なんてできないし、そもそもそんなのトビのせいじゃないしさ。生まれつき持った固有能力なんだろ?だったらそれを俺達仲間が受け入れるべきだろ?」
「ユーガ・・・」
トビが呟き、ユーガは胸を張って、な!とトビを見た。
「・・・強いのね、ユーガ君は」
フィラルは微笑みながらユーガを見た。ユーガは、そんな事ないって、と苦笑を浮かべた。
「強くないよ。弱いからこそ仲間や絆を信じて、助け合いたいって感じるんだって思う」
この強さ。使用人として、ユーガが旅に出る前から知っていた強さは、相変わらずだ、とフィラルは思う。やはりこの単純さも含めて、小さいながらもファンクラブがあったりファンがいたりする要因なのだろう、とフィラルは思った。ーと、トビがフィラルに顔を向けて尋ねた。
「・・・フィラルだったな。さっき、どう見てもおかしい女がいたんだ。話しかけても全く反応しない変な奴がな。しかも、ユーガの話では見た事のない奴だったらしいが・・・何か知らないか?」
そうフィラルに聞きユーガは、そうだった、と思い出した。
(そういえば、目的それだったっけ・・・)
自分の記憶力の無さを実感しながら、ユーガも話し始めたフィラルの言葉に耳を傾けた。
フィラルの話を聞き終え、広場へ戻ったユーガとトビは顔を顰める羽目になった。明らかに異臭が辺りには漂い、とても言葉では表せないような強烈な異臭がユーガ達を襲った。
「な、何だ⁉︎」
「く・・・鼻がイカれる・・・!」
ユーガとトビは咄嗟に腕で鼻を覆った。
「おぉーい、ユーガ!トビ!」
ユーガ達は名前を呼ばれて顔を上げると、ネロが慌てて鼻を腕で押さえながらこっちへ走ってきていた。
「ネロ!何なんだ、この匂い・・・!」
「・・・それが・・・あー、説明するより見てもらった方が早い!こっち来てくれ!」
そう言うと、ネロは走ってきた方向へと向きを変えて再び走り出した。ユーガ達も慌てて後を追いかけて行くと、そこはガイアのもう一つの広間で、トビは到着した瞬間に何が起こったのかを理解したらしく、マジかよ、と呆れたように呟いた。
「アレだよ」
ネロが指差した方向には、鍋を火にかけて鼻歌を口ずさむミナがおたまをぐるぐると鍋の中で回していた。ミナは近付くユーガ達に気付き、あ、と声をあげた。
「ユーガさん!」
ぱぁっとミナの顔が明るくなり、ユーガを見た。どうやら、匂いの元はこの鍋から発生しているらしい、とユーガも理解した。
「み、ミナ・・・何作ってるんだ?」
ユーガがそう尋ねると、ミナは白米の上に鍋の中の『何か』をよそってユーガ達に差し出した。
「カレーですよ?皆さんがお腹が空いたそうでしたので、作ったのですけど・・・?」
ミナの言葉に、ユーガ達は言葉を失った。
「か、カレー・・・」
「・・・ミナ、ちょっと良いか」とトビ。「言っておくが、カレーはどうやっても紫色にはならねぇし、そんなぼこぼこした気泡も浮いてこねぇし、骨とか入ってねぇからな・・・?」
トビは頬をぴくぴくさせて、笑顔でカレーのような何かを差し出すミナに言った。
「あと・・・何だこれ・・・?見た事ない野菜とか肉とか入ってるけど・・・」
ユーガもトビの言葉にそう付け足し、カレーのような何かを見た。
「す、少し失敗しましたけど、美味しいと思いますよ!多分・・・」
「なら、どうやら俺とお前の『少し』の基準はかなり違うようだな」
トビは呆れたように呟き、頭を掻いた。
「で」と、調査から帰ってきたルインがそう言った。「カレーのような何かはどうしたのですか?」
「あ、ああ、うん。肥料として畑に埋めてきた。やっぱ無駄にはできなかったし・・・」
ユーガは頭をぽりぽりと掻いて苦笑しながら答えた。
「まだ少し異臭はありますが、まぁ・・・息はできます」
シノが抑揚なく言ったので、ミナは申し訳なさそうに肩をすくませた。
「まぁまぁ」とネロがそれを諌めた。「失敗は誰にでもあるだろ?仕方ないだろう?」
「だが、お前はミナと一緒にいたんなら、殺戮兵器の作成を止めてほしかったもんだぜ」
トビはすかさずそう言い、ネロもミナと同じように肩をすくませた。
「・・・それはさておき、ユーガ達は何か分かりましたか?」
「あ、ああ。どうやら、さっきルインが話しかけた人はやっぱガイアの人じゃないみたいだ。どうやらゼロニウスから来た人達らしい」
「マキラの事を改めて信仰するために、世界を作ったマキラに感謝しながら世界各地を旅して巡礼するらしいな」
ユーガの言葉をトビが継いだ。
「こちらもその話を聞きました。しかし、そこから先の話は聞きましたか?」
先の話?とユーガは首を傾げた。トビもルインに顔を向けて怪訝そうな顔をする。
「・・・どうやら、ゼロニウスから人が来た頃から数々の行方不明者がいるようです」
「行方不明者だって・・・?」
ええ、とシノも頷いた。
「ですから、細かい事をもしかしたらカヴィス陛下がご存知かもしれないと思い、謁見を申し込もうと提案しようと思っていました」
「わかった。じゃあ、シノの言う通り城に行ってカヴィス王に会いに行こう。どちらにせよ、通行許可証も貰いに行くって話だったしさ」
ユーガはそう言ってまだ肩をすくませるネロとミナの肩を叩いて、城へ繋がる昇降機へ足を向けた。トビもそれに着いて行こうとして、ルインに呼び止められた。
「トビ。ちょっといいですか」
「・・・何だ」
「行方不明者が出ているという話・・・あなたはどう思いますか?」
「・・・軽く旅行に、なんて軽々しい話じゃねぇ。ここまでの量の人が次々に行方不明になんて、とんでもねぇ事件だ」
「私は、何者かによる人攫いの可能性もあるかと」
トビはそれを聞いて腕を組んで頷いた。
「そうだな・・・それも考えるのが妥当だろう」
「ええ・・・それも兼ねて、王にお伝えしてみましょうか」
トビは頷いて、ルインがユーガを追いかけて歩くのを確認して、
「・・・強くないから・・・仲間を信じる・・・か・・・」
と呟いた。
「祖父上、失礼します。ネロです」
ネロはカヴィスの私室の扉をノックしてそう言うと中から、入れ、と声が聞こえた。
「失礼します。祖父上にお尋ねしたい事とお願いしたい事があり参りました」
「ネロにユーガ、それに仲間まで揃っているとはな・・・どうしたのだ?」
ルインは一歩前に出て、深々と礼をしてカヴィスの前に立った。
「御前を失礼します、陛下。まずお伺いしたい事というのは、このガイアで起こっていると聞いた行方不明事件の事に関してです」
「・・・貴公らにも、もう情報は回っていたか」
カヴィスは髭を触りながら座っていた椅子にさらに深く座り込み、大きく息を吐いた。
「そう、確かに今ガイアでは行方不明者が多発しておる。それがかなり頭の痛い問題でな・・・」
「・・・・・・」
トビは黙って聞き、腕を組んで眼を瞑った。ユーガはそれに気付いたが、カヴィスから名前を呼ばれて顔をトビから背けた。
「その事で、貴殿らに頼みがある。実は行方不明者は制下の門に行っておるかもしれん、との話が入っている。その、行方不明者の事を調べてはもらえぬか?忙しい事は承知しているが、頼む」
「・・・!ちょうど良かった!俺達も制下の門に入るためにカヴィス王から通行許可証を頂こうと思っていたんです!制下の門は俺達の目的地でもありますから、俺は構いませんけど・・・皆はどうする?それで良いか?」
ユーガの言葉に、トビ以外の仲間全員が頷いた。
「トビは・・・その、どうだ?」
「・・・良いだろう。だが、通行証と共にもう一つ条件を付けさせてもらう」
トビは腕を組んだまま、瞑っていた眼を開いた。トビの言葉に、カヴィスは顔を上げた。
「条件だと・・・?」
「ああ。レイト・フィムって奴を指名手配しろ」
「トビ⁉︎」
ネロはその言葉に眼を見張った。
「レイト・・・十二年前、貴公の家を焼いたという者をか・・・?」
「そうだ。俺は奴に聞きたい事があるからな。この二つができねぇなら、俺はこの依頼は受けねぇ」
「・・・カヴィス王。誠に勝手ながら、俺もお願いします」
ユーガもトビの言葉に同意したかのように頷いた。
「ユーガまで・・・⁉︎」
「ごめん、ネロ。俺はレイトの事を・・・ちゃんと調べたいんだ・・・。まだ、レイトの事を・・・信じたいから・・・」
ユーガは俯いてそう言うとカヴィスは、ふむ、と髭を撫でてユーガとトビを見た。
「・・・よかろう」
「祖父上、よろしいのですか・・・?」
ネロが怪訝そうにカヴィスに尋ねると、カヴィスは微笑みながらトビを見て、ネロに視線を向けた。
「何かの事には代償は付き物だろう、ネロよ」
「は、はぁ・・・」
「交渉成立だな」
トビは組んでいた腕を解き、腰に手を当ててそう言った。
「カヴィス王・・・申し訳ございません」
頭を下げたユーガにカヴィスは、構わぬ、と首を振って笑みを見せて、手を叩いた。すると、兵士が小さなカードをユーガに差し出した。
「通行許可証だ。受け取るが良い」
ありがとうございます、と言ってユーガは許可証を受け取って謁見を終え、城から出たユーガ達は城の前の広場で話を始めた。
「・・・トビ・・・、それにユーガまで・・・」
「ごめん、ネロ・・・」
ユーガは頭を下げて項垂れ、トビは鼻を鳴らした。
「けど、俺はやっぱ・・・フィムの事、ちゃんと知りたいんだ」
「・・・ユーガさん・・・」
ネロは何かを考えていたが、あーあ、と頭を掻いて腰に手を当てた。
「わかったよ。まぁ・・・俺もトビの家を滅ぼして、さらにユーガの家までも滅ぶ事になった元凶のフィムの事は・・・確かに気になるしな」
「では、通行許可証も頂けた事ですし、フィムの事はカヴィス陛下にお任せして、私達はもう一度制下の門へ戻りましょうか」
ルインは笑みを浮かべながらそう言って、仲間達を見た。ユーガ達は頷いて、港へ向かう昇降機へ乗り込んだ、その途中。
「・・・行方不明者、ですか・・・」
シノが顎に手を当ててそう呟いた。
「シノ、どうしたんだ?」
ユーガの問いかけに、シノは姿勢を崩さずユーガの方に眼だけを向けた。
「・・・都市の人間が段々と神隠しのように消えていく現象・・・、とある言い伝えにありました」
「言い伝え?」
トビは腰に両手を当てて聞き返した。ユーガはそれを見て、トビでも知らない事があるのか、と思った。
「馬鹿な、あの言い伝えが・・・現実だとでも言うのですか、シノ・・・」
ルインは、信じられない、と言うように笑みを浮かべて両手を広げた。
「確証はありませんが」とシノが今度はルインに視線を向けた。「そう考えれば、色々と辻褄が合うかと」
「シノ、その言い伝えって・・・?」
「・・・古代の魔物の一種、サキュバスの言い伝えです」
ユーガの問いにシノは顎から手を離し、そう言った。
「さ・・・」
「サキュバス?とは一体・・・?」
ミナがシノに尋ねると、
「・・・もしや、『魔族』の一種か・・・?」トビがそう尋ねた。「だが、そんなの実在するのかよ?そもそもその言い伝えも聞いた事ないが・・・」
トビの言葉に、ルインも頷いた。
「その言い伝えは確かに実在しますが・・・。しかし、シノ?あれはとても現実とは言い難い話でしたよ・・・?」
そこまで言って、昇降機は港前に到着していた。
「・・・とにかく、制下の門に行くぞ」
「そうだな・・・制下の門に行けば、『人工精霊』の事もその行方不明の人達の事も何かわかるかもしれないしな」
トビの言葉にネロはユーガの方を見て頷いて、ユーガもそれに頷き返した。
「うん。目指すは制下の門、だな」
仲間達はそれぞれ頷いた。
「・・・ユーガ」
夜、日が沈むのが近いと判断したユーガ達はガイアに宿を取って、一日休む事にしたのだった。宿で本を読んでいたユーガに、ルインが声をかけた。
「ルイン?どうしたんだ?」
読んでいた本を閉じて、ユーガはルインに顔を向けた。
「あなたに、サキュバスの言い伝えについてお話ししておこうかと思いまして」
「あ、シノがさっき言ってた話か?」
ユーガは足を組んで手を足首に置いて前のめりになってルインにそう尋ねた。ええ、とルインは頷く。
「まず初めに・・・ユーガ、あなたは『魔族』についてご存知ですか?」
「ま、『魔族』・・・?トビが言ってたよな・・・、『魔族』・・・えっと・・・?」
「知らないようですね」
ルインはふふっと笑い、ユーガを見た。
「『魔族』とは、人の負の感情が混じり合ってできた者です」
「本来の魔物とは違うのか?」
「ええ。魔物は卵や母体から産まれる事がほとんどですが、『魔族』は先程言ったように人間の心の闇から産まれた存在の事です」
「・・・それで、そのサキュバスってのも、その『魔族』なのか?」
その通りです、とルインは頷いた。
「そしてサキュバスは、言い伝えによると街の人間を攫い、その後血を吸って殺すといいます」
「へぇ・・・」
ユーガは感心したように眼を開き、けどさ、と笑みを浮かべた。
「そのサキュバスって、会ってみたくなってきたな!血を吸うって、何か吸血鬼みたいでかっけぇし!」
「ゆ、ユーガ・・・、わかっていますか?もし本当にサキュバスの仕業なのだとしたら、私達も生きては帰れないかもしれないのですよ?」
「大丈夫だろ!とりあえず、まずは話してみようぜ!」
そう簡単にいきますかね、とルインは呆れたように眼を細めた。が、再び笑みを浮かべるとその顔をユーガに向けた。
「・・・まぁ、話せばわかるというわけではありませんが・・・話さなければ何も始まりませんしね・・・」
「そういう事!サキュバスか・・・!会いたいなー!」
ユーガは心から楽しそうな笑みを浮かべて窓から外を眺めた。
「・・・ユーガ、忠告しておきますが、まだサキュバスは実在したと確定しているわけではありませんからね・・・?」
ルインの言葉にユーガは、わかってるよ、と頬を膨らませた。
その頃、制下の門から東に行った小さな孤島にて。肌白い肌と白い髪が月の光を反射して輝き、小さな口からは八重歯が二本飛び出している。全身に紫色のマントにフードを被り、そのマントの中には灰色で上胸を誇張していて腹の部分が空いている服と黒い翼が折り畳まれ、ミニスカートを履いたその後ろ部分からは尻尾がぴょろん、と動いている少女ー歳はかなり幼く見えるーは、木の枝に座って上唇をぺろりと舐めた。
「・・・アタシも、そろそろかなぁ・・・?ふふ・・・」
そして翼を広げて、地面に降り立つと瞬時に駆け出し、夜の闇に紛れて消えていったー。
ケインシルヴァの領土である制下の門へ辿り着いたユーガ達は、そこでケインシルヴァ兵からそう告げられ、トビが腕を組んでそう返した。
「申し訳ございません。只今、関係者以外は立ち入りが認められておりません」
兵士はトビの姿を見て明らかに不機嫌になったが、後ろのユーガとネロ、さらにルインを見ると怪訝そうな顔をした。なぜ敵国の人間同士が一緒にいるのか、と思っているのかもしれない。ルインがそれには構わず、兵士に一礼をして尋ねた。
「何かあったんですか?」
「は・・・只今、制下の門内では魔物が凶暴化している模様でして・・・それを調べております故・・・」
それを聞いてミナが、なるほど、と呟き、ユーガにそっと顔を寄せた。
「・・・元素(フィーア)の不安定によって、魔物が凶暴化しているのかもしれませんね・・・」
「・・・そうか・・・」
ユーガは頷いて、兵士に向き直った。
「俺達もその事を調べているんです。その事と、各地で起こっている地震が同じ原因かもしれなくて・・・」
「俺の」とネロ。「顔を立ててもダメか?」
「申し訳ございませんが、ここはお通しできません。我らの偉大なるカヴィス王からのご命令により、如何なる理由であっても誰であろうともここはお通しするなとの命ですので」
ダメか、とネロは頭を掻いた。
「ケチです」
シノが小さく呟いたのをトビは聞いたがそれを無視し、舌打ちをした。
「・・・仕方ねえ。カヴィスから通行許可証でも貰いに行くぞ」
どのみち、自分としても一度ガイアには帰りたかった事もあり、ユーガは頷いた。
「・・・わかった」
「ユーガさん」
『フィアクルーズ』でガイアへ向かう最中、甲板でネロと稽古を行っていたユーガはミナから呼ばれ、稽古を中断した。
「どうしたんだ?」
「ガイアって、クレーターみたいな地形にありますよね・・・?あのクレーターみたいなのって、なんなんですか?」
ミナの疑問にユーガは、たしか、と首を捻った。
「あれは元々あった地形だったって聞いてる。ああする事によって、敵が一方向からしか来れないんだってさ」
「それに加えて、ガイアは上から元素障壁(フィアガドス)を発動させられるんだ。そうすれば、空からの攻撃も防ぐ事ができるからな」
と、ネロがユーガに次いでそう言った。
「そう考えると、ガイアって凄くねーか?色んな事が計算された上での地形って事だろ?」
ユーガは腕を組んでネロに向けてそう言った。
「そうだな。まぁ、それを言うならシレーフォの方も中々だけどな」
「シレーフォ?何で?」
ネロは、知らないのか、と少し呆れたように頭を掻いた。
「シレーフォは海際に浮いている水上都市だろ?あの都市は水の流れを機関として使っているのさ。水流発電、と言うのが正しいかな?水さえあればあの都市は崩せないようなもんだ。しかも、海に面しているから攻め込むのは陸の正門からか港からしか攻め込めないから、海側に元素障壁を貼れば陸側から攻めるしかないから・・・」
「陸側の正門からしか攻め込めず、不測の事態が起こりにくい、という事ですか・・・考えられていますね」
ミナの呟きにネロは、そういう事、と頷いた。そこにユーガは、へぇ、と眼を見張った。
「どっちの首都も自然の地形を利用したんだな・・・けど、ネロ。何でそんなに詳しいんだ?」
「地理や歴史は好きだからな。このグリアリーフの生誕、とか興味あるだろ?」
「いや」
「あんまり・・・」
ユーガとミナはほぼ同時に呟き、ネロは口を尖らせた。
それにしても、本当にガイアは大きい都市だな、とユーガは思った。こんな地形にガイアを作ろうとした人物は本当に凄い人間なんだな、と実感する。海沿いの港から大きなクレーターの中にあるガイアをユーガ達は見下ろした。
「行くぞ」
トビの言葉にユーガ達は頷き、昇降機で降りて都市の中心の広場へ向かい、異変に気付いた。
「・・・ネロ、何か人が少なくなってないか?」
「・・・そうだな。俺も思った・・・」
ガイアはケインシルヴァの首都という事もあり、普段はこの広場にも人が溢れている事が多いのだが、今は人が両手で数えるほどしかいない。近くにいた女性にルインが声をかける。
「あの・・・」
声をかけて、ルインはぎょっとした。その女性はぶつぶつと何かを呟いており、まったくルインの事を見ていなかった。
「マキラ・・・行く・・・精霊・・・研究所・・・」
女性はそう呟いて、ルインから遠ざかっていった。
「い、一体何なのでしょうか・・・」
ルインがそう呟くと、ネロは不思議そうに首を傾げた。
「・・・おかしいな、あんな女の人ガイアにいたっけ・・・?」
うーん、とネロは唸ると、ルインが、
「情報収集しましょう。明らかにこの現状はおかしい・・・。各グループに分かれて、ある程度の情報が集まったらまたここに戻ってきましょう」
と提案をした。ユーガ達は頷きートビは嫌そうだったがー、ユーガはトビを連れてガイアを歩いた。
「何で俺とお前なんだよ?」
トビがユーガの方を見て不満そうにそう尋ねた。
「くじ引きの結果だろ?それに俺は、トビと一緒に行けて嬉しいぜ?」
トビはその言葉を聞いて、ふん、と鼻を鳴らして顔を背けた。
「ネロ達も情報収集してくれてるし、俺達も頑張ろうぜ」
「・・・へいへい、わかったよ」
トビがそう呟いたその時。
「・・・ユーガ君」
「ん?」
ユーガはその声を聞き逃さず、きょろきょろと辺りを見渡した。が、ユーガを呼んだその声の主は見当たらない。
「・・・聞き間違いかな・・・?」
「どこ見てんだ、馬鹿。上見ろ」
上?とユーガが顔を上げるとー、そこには旅に出る前に毎日と見て見慣れた顔が窓からユーガを見下ろしていた。
「フィ、フィラルさん⁉︎」
「やっぱり、ユーガ君。話があるの。そこのドアから入ってきて」
フィラルの見下ろしている建物の下には扉があり、そこの事を言っているのだろう、とユーガはわかった。トビは腕を組んで考えていたが、何も言わずに扉を開けた。ユーガも追いかけ、トビと共に階段を登って部屋の中に入った。
「久しぶりね、ユーガ君」
「フィラルさん、どうしてここに・・・?ルーオス邸での仕事は・・・?」
その話を聞く限り、恐らくこのフィラルという女性もユーガと同じように使用人なのだろう、とトビは推測した。
「ここは私の元々住んでいた家よ。そして、使用人の仕事は・・・辞めたわ」
「辞めた⁉︎な、何で・・・⁉︎」
「誰かに使われるのではなく、私は私として・・・生きたかったの。ルーオス家に使用人として働いていたのも、親を養うためだったし」
フィラルは窓から外を少し見て、ふぅ、と息を吐いた。
「・・・けど、仕事を辞めて大丈夫なんですか?親を養うって・・・」
「・・・親は亡くなったの。だから、良い機会だと思って旅に出る事にしたわ。私が私として生きていけるように」
亡くなった。その言葉を聞いて、ユーガは俯いた。気にしないで、とフィラルはユーガに言って、トビを見た。
「ところで、この人は・・・?」
「え?あ、ああ。こいつはクィーリア人なんだけど、俺達の旅に協力してくれてるんだ」
「・・・してねぇよ。俺の目的のためにやってるだけだっつの」
トビはそう言って腕を組み、顔を背けた。
「名前は・・・?」
フィラルがそう尋ね、ユーガがそれに答える。
「トビ。トビ・ナイラルツっていうんだ」
それを聞いたフィラルは、え、と顔をトビに向けた。
「トビってまさか・・・あなた、『蒼眼』の・・・?」
「!」
「『そうがん』?何だ、それ?もしかして、トビの・・・」
「あんた、『蒼眼』を知っているのか・・・?」
トビは組んでいた腕を解き、フィラルを見た。
「ええ・・・。ユーガ君は『緋眼』を持っているでしょう?」
「・・・『緋眼』まで知ってるなんて、あんた何者だよ」
トビは疑いの眼をフィラルに向けてその眼を細めた。
「・・・そうね・・・あなた・・・トビ君は固有能力(スキル)、『希少探知』を知っているかしら?」
「希少価値のある物や珍しい物を見るだけで判別できるっていうアレか?まさか、あんたはその固有能力を持ってるってのか?」
トビが尋ねると、フィラルは小さく頷いた。
「・・・結局、その『そうがん』って何だ?」
ユーガは、話が見えない、と言うように頭を掻いた。
「『蒼眼』は、ユーガ君の『緋眼』と対になる存在、として言い伝えがあるの。ユーガ君の『緋眼』は元素を乖離させる力があるのに対して、『蒼眼』は元素を集める性質があるのよ」
「え⁉︎」
ユーガはそれを聞いて、トビを見た。
「・・・・・・」
トビは俯いて下を向き、眼は影に隠れて見えない。
「・・・どうやら、何か訳ありのようね」
「・・・うるせぇ。お前には関係ねぇだろ」
トビは俯いたまま呟いた。嫌な過去を思い出させてくれる。その元素を集めるという性質のせいで、俺が今までどんな思いをしたか知らないくせにー。トビは内心舌を打った。
「・・・ふ」
ユーガは手を握りしめてぶるぶると震えており、小さくそう呟き、顔を上げた。その眼はキラキラと輝き、ユーガは拳を胸の前で上下に振った。
「元素を集める⁉︎な、何だそれ!めっちゃくちゃカッコいいじゃんか‼︎」
「・・・は?」
「・・・え?」
トビとフィラルは同時にユーガの方を見た。だってさ、とユーガは興奮が止まないのか話が止まらない。
「え、じゃあ俺とトビって真逆って事か⁉︎すっげぇっ!対となる存在とか、かっけぇな‼︎なぁなぁ、その元素を集めるって、今できるのか⁉︎」
ユーガに眼を輝かせて詰め寄られ、トビは少し後退りしてそれに答えた。
「・・・い、いや・・・俺は・・・まだ能力が目覚めてねぇから・・・」
「じゃあじゃあ、目覚めさせたら使えるようになるのか⁉︎フィラルさん、目覚めさせるにはどうすれば良いんだ⁉︎」
ユーガは続いてフィラルに詰め寄り、さらに問い詰めた。
「そ、そこまではわからないけど・・・ユーガ君、わかってるの?元素を集めてしまうという事は、トビ君だけでなくあなたやあなたの仲間にも危害が及ぶかもしれないのよ?」
フィラルの言葉にユーガは首を捻って、フィラルを見た。
「それの何がいけないんだ?仲間が危ない時は皆で助け合うって、当然だろ?俺は眼の前で仲間が危ないのに見捨てる事なんてできないし、そもそもそんなのトビのせいじゃないしさ。生まれつき持った固有能力なんだろ?だったらそれを俺達仲間が受け入れるべきだろ?」
「ユーガ・・・」
トビが呟き、ユーガは胸を張って、な!とトビを見た。
「・・・強いのね、ユーガ君は」
フィラルは微笑みながらユーガを見た。ユーガは、そんな事ないって、と苦笑を浮かべた。
「強くないよ。弱いからこそ仲間や絆を信じて、助け合いたいって感じるんだって思う」
この強さ。使用人として、ユーガが旅に出る前から知っていた強さは、相変わらずだ、とフィラルは思う。やはりこの単純さも含めて、小さいながらもファンクラブがあったりファンがいたりする要因なのだろう、とフィラルは思った。ーと、トビがフィラルに顔を向けて尋ねた。
「・・・フィラルだったな。さっき、どう見てもおかしい女がいたんだ。話しかけても全く反応しない変な奴がな。しかも、ユーガの話では見た事のない奴だったらしいが・・・何か知らないか?」
そうフィラルに聞きユーガは、そうだった、と思い出した。
(そういえば、目的それだったっけ・・・)
自分の記憶力の無さを実感しながら、ユーガも話し始めたフィラルの言葉に耳を傾けた。
フィラルの話を聞き終え、広場へ戻ったユーガとトビは顔を顰める羽目になった。明らかに異臭が辺りには漂い、とても言葉では表せないような強烈な異臭がユーガ達を襲った。
「な、何だ⁉︎」
「く・・・鼻がイカれる・・・!」
ユーガとトビは咄嗟に腕で鼻を覆った。
「おぉーい、ユーガ!トビ!」
ユーガ達は名前を呼ばれて顔を上げると、ネロが慌てて鼻を腕で押さえながらこっちへ走ってきていた。
「ネロ!何なんだ、この匂い・・・!」
「・・・それが・・・あー、説明するより見てもらった方が早い!こっち来てくれ!」
そう言うと、ネロは走ってきた方向へと向きを変えて再び走り出した。ユーガ達も慌てて後を追いかけて行くと、そこはガイアのもう一つの広間で、トビは到着した瞬間に何が起こったのかを理解したらしく、マジかよ、と呆れたように呟いた。
「アレだよ」
ネロが指差した方向には、鍋を火にかけて鼻歌を口ずさむミナがおたまをぐるぐると鍋の中で回していた。ミナは近付くユーガ達に気付き、あ、と声をあげた。
「ユーガさん!」
ぱぁっとミナの顔が明るくなり、ユーガを見た。どうやら、匂いの元はこの鍋から発生しているらしい、とユーガも理解した。
「み、ミナ・・・何作ってるんだ?」
ユーガがそう尋ねると、ミナは白米の上に鍋の中の『何か』をよそってユーガ達に差し出した。
「カレーですよ?皆さんがお腹が空いたそうでしたので、作ったのですけど・・・?」
ミナの言葉に、ユーガ達は言葉を失った。
「か、カレー・・・」
「・・・ミナ、ちょっと良いか」とトビ。「言っておくが、カレーはどうやっても紫色にはならねぇし、そんなぼこぼこした気泡も浮いてこねぇし、骨とか入ってねぇからな・・・?」
トビは頬をぴくぴくさせて、笑顔でカレーのような何かを差し出すミナに言った。
「あと・・・何だこれ・・・?見た事ない野菜とか肉とか入ってるけど・・・」
ユーガもトビの言葉にそう付け足し、カレーのような何かを見た。
「す、少し失敗しましたけど、美味しいと思いますよ!多分・・・」
「なら、どうやら俺とお前の『少し』の基準はかなり違うようだな」
トビは呆れたように呟き、頭を掻いた。
「で」と、調査から帰ってきたルインがそう言った。「カレーのような何かはどうしたのですか?」
「あ、ああ、うん。肥料として畑に埋めてきた。やっぱ無駄にはできなかったし・・・」
ユーガは頭をぽりぽりと掻いて苦笑しながら答えた。
「まだ少し異臭はありますが、まぁ・・・息はできます」
シノが抑揚なく言ったので、ミナは申し訳なさそうに肩をすくませた。
「まぁまぁ」とネロがそれを諌めた。「失敗は誰にでもあるだろ?仕方ないだろう?」
「だが、お前はミナと一緒にいたんなら、殺戮兵器の作成を止めてほしかったもんだぜ」
トビはすかさずそう言い、ネロもミナと同じように肩をすくませた。
「・・・それはさておき、ユーガ達は何か分かりましたか?」
「あ、ああ。どうやら、さっきルインが話しかけた人はやっぱガイアの人じゃないみたいだ。どうやらゼロニウスから来た人達らしい」
「マキラの事を改めて信仰するために、世界を作ったマキラに感謝しながら世界各地を旅して巡礼するらしいな」
ユーガの言葉をトビが継いだ。
「こちらもその話を聞きました。しかし、そこから先の話は聞きましたか?」
先の話?とユーガは首を傾げた。トビもルインに顔を向けて怪訝そうな顔をする。
「・・・どうやら、ゼロニウスから人が来た頃から数々の行方不明者がいるようです」
「行方不明者だって・・・?」
ええ、とシノも頷いた。
「ですから、細かい事をもしかしたらカヴィス陛下がご存知かもしれないと思い、謁見を申し込もうと提案しようと思っていました」
「わかった。じゃあ、シノの言う通り城に行ってカヴィス王に会いに行こう。どちらにせよ、通行許可証も貰いに行くって話だったしさ」
ユーガはそう言ってまだ肩をすくませるネロとミナの肩を叩いて、城へ繋がる昇降機へ足を向けた。トビもそれに着いて行こうとして、ルインに呼び止められた。
「トビ。ちょっといいですか」
「・・・何だ」
「行方不明者が出ているという話・・・あなたはどう思いますか?」
「・・・軽く旅行に、なんて軽々しい話じゃねぇ。ここまでの量の人が次々に行方不明になんて、とんでもねぇ事件だ」
「私は、何者かによる人攫いの可能性もあるかと」
トビはそれを聞いて腕を組んで頷いた。
「そうだな・・・それも考えるのが妥当だろう」
「ええ・・・それも兼ねて、王にお伝えしてみましょうか」
トビは頷いて、ルインがユーガを追いかけて歩くのを確認して、
「・・・強くないから・・・仲間を信じる・・・か・・・」
と呟いた。
「祖父上、失礼します。ネロです」
ネロはカヴィスの私室の扉をノックしてそう言うと中から、入れ、と声が聞こえた。
「失礼します。祖父上にお尋ねしたい事とお願いしたい事があり参りました」
「ネロにユーガ、それに仲間まで揃っているとはな・・・どうしたのだ?」
ルインは一歩前に出て、深々と礼をしてカヴィスの前に立った。
「御前を失礼します、陛下。まずお伺いしたい事というのは、このガイアで起こっていると聞いた行方不明事件の事に関してです」
「・・・貴公らにも、もう情報は回っていたか」
カヴィスは髭を触りながら座っていた椅子にさらに深く座り込み、大きく息を吐いた。
「そう、確かに今ガイアでは行方不明者が多発しておる。それがかなり頭の痛い問題でな・・・」
「・・・・・・」
トビは黙って聞き、腕を組んで眼を瞑った。ユーガはそれに気付いたが、カヴィスから名前を呼ばれて顔をトビから背けた。
「その事で、貴殿らに頼みがある。実は行方不明者は制下の門に行っておるかもしれん、との話が入っている。その、行方不明者の事を調べてはもらえぬか?忙しい事は承知しているが、頼む」
「・・・!ちょうど良かった!俺達も制下の門に入るためにカヴィス王から通行許可証を頂こうと思っていたんです!制下の門は俺達の目的地でもありますから、俺は構いませんけど・・・皆はどうする?それで良いか?」
ユーガの言葉に、トビ以外の仲間全員が頷いた。
「トビは・・・その、どうだ?」
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トビは腕を組んだまま、瞑っていた眼を開いた。トビの言葉に、カヴィスは顔を上げた。
「条件だと・・・?」
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「トビ⁉︎」
ネロはその言葉に眼を見張った。
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「そうだ。俺は奴に聞きたい事があるからな。この二つができねぇなら、俺はこの依頼は受けねぇ」
「・・・カヴィス王。誠に勝手ながら、俺もお願いします」
ユーガもトビの言葉に同意したかのように頷いた。
「ユーガまで・・・⁉︎」
「ごめん、ネロ。俺はレイトの事を・・・ちゃんと調べたいんだ・・・。まだ、レイトの事を・・・信じたいから・・・」
ユーガは俯いてそう言うとカヴィスは、ふむ、と髭を撫でてユーガとトビを見た。
「・・・よかろう」
「祖父上、よろしいのですか・・・?」
ネロが怪訝そうにカヴィスに尋ねると、カヴィスは微笑みながらトビを見て、ネロに視線を向けた。
「何かの事には代償は付き物だろう、ネロよ」
「は、はぁ・・・」
「交渉成立だな」
トビは組んでいた腕を解き、腰に手を当ててそう言った。
「カヴィス王・・・申し訳ございません」
頭を下げたユーガにカヴィスは、構わぬ、と首を振って笑みを見せて、手を叩いた。すると、兵士が小さなカードをユーガに差し出した。
「通行許可証だ。受け取るが良い」
ありがとうございます、と言ってユーガは許可証を受け取って謁見を終え、城から出たユーガ達は城の前の広場で話を始めた。
「・・・トビ・・・、それにユーガまで・・・」
「ごめん、ネロ・・・」
ユーガは頭を下げて項垂れ、トビは鼻を鳴らした。
「けど、俺はやっぱ・・・フィムの事、ちゃんと知りたいんだ」
「・・・ユーガさん・・・」
ネロは何かを考えていたが、あーあ、と頭を掻いて腰に手を当てた。
「わかったよ。まぁ・・・俺もトビの家を滅ぼして、さらにユーガの家までも滅ぶ事になった元凶のフィムの事は・・・確かに気になるしな」
「では、通行許可証も頂けた事ですし、フィムの事はカヴィス陛下にお任せして、私達はもう一度制下の門へ戻りましょうか」
ルインは笑みを浮かべながらそう言って、仲間達を見た。ユーガ達は頷いて、港へ向かう昇降機へ乗り込んだ、その途中。
「・・・行方不明者、ですか・・・」
シノが顎に手を当ててそう呟いた。
「シノ、どうしたんだ?」
ユーガの問いかけに、シノは姿勢を崩さずユーガの方に眼だけを向けた。
「・・・都市の人間が段々と神隠しのように消えていく現象・・・、とある言い伝えにありました」
「言い伝え?」
トビは腰に両手を当てて聞き返した。ユーガはそれを見て、トビでも知らない事があるのか、と思った。
「馬鹿な、あの言い伝えが・・・現実だとでも言うのですか、シノ・・・」
ルインは、信じられない、と言うように笑みを浮かべて両手を広げた。
「確証はありませんが」とシノが今度はルインに視線を向けた。「そう考えれば、色々と辻褄が合うかと」
「シノ、その言い伝えって・・・?」
「・・・古代の魔物の一種、サキュバスの言い伝えです」
ユーガの問いにシノは顎から手を離し、そう言った。
「さ・・・」
「サキュバス?とは一体・・・?」
ミナがシノに尋ねると、
「・・・もしや、『魔族』の一種か・・・?」トビがそう尋ねた。「だが、そんなの実在するのかよ?そもそもその言い伝えも聞いた事ないが・・・」
トビの言葉に、ルインも頷いた。
「その言い伝えは確かに実在しますが・・・。しかし、シノ?あれはとても現実とは言い難い話でしたよ・・・?」
そこまで言って、昇降機は港前に到着していた。
「・・・とにかく、制下の門に行くぞ」
「そうだな・・・制下の門に行けば、『人工精霊』の事もその行方不明の人達の事も何かわかるかもしれないしな」
トビの言葉にネロはユーガの方を見て頷いて、ユーガもそれに頷き返した。
「うん。目指すは制下の門、だな」
仲間達はそれぞれ頷いた。
「・・・ユーガ」
夜、日が沈むのが近いと判断したユーガ達はガイアに宿を取って、一日休む事にしたのだった。宿で本を読んでいたユーガに、ルインが声をかけた。
「ルイン?どうしたんだ?」
読んでいた本を閉じて、ユーガはルインに顔を向けた。
「あなたに、サキュバスの言い伝えについてお話ししておこうかと思いまして」
「あ、シノがさっき言ってた話か?」
ユーガは足を組んで手を足首に置いて前のめりになってルインにそう尋ねた。ええ、とルインは頷く。
「まず初めに・・・ユーガ、あなたは『魔族』についてご存知ですか?」
「ま、『魔族』・・・?トビが言ってたよな・・・、『魔族』・・・えっと・・・?」
「知らないようですね」
ルインはふふっと笑い、ユーガを見た。
「『魔族』とは、人の負の感情が混じり合ってできた者です」
「本来の魔物とは違うのか?」
「ええ。魔物は卵や母体から産まれる事がほとんどですが、『魔族』は先程言ったように人間の心の闇から産まれた存在の事です」
「・・・それで、そのサキュバスってのも、その『魔族』なのか?」
その通りです、とルインは頷いた。
「そしてサキュバスは、言い伝えによると街の人間を攫い、その後血を吸って殺すといいます」
「へぇ・・・」
ユーガは感心したように眼を開き、けどさ、と笑みを浮かべた。
「そのサキュバスって、会ってみたくなってきたな!血を吸うって、何か吸血鬼みたいでかっけぇし!」
「ゆ、ユーガ・・・、わかっていますか?もし本当にサキュバスの仕業なのだとしたら、私達も生きては帰れないかもしれないのですよ?」
「大丈夫だろ!とりあえず、まずは話してみようぜ!」
そう簡単にいきますかね、とルインは呆れたように眼を細めた。が、再び笑みを浮かべるとその顔をユーガに向けた。
「・・・まぁ、話せばわかるというわけではありませんが・・・話さなければ何も始まりませんしね・・・」
「そういう事!サキュバスか・・・!会いたいなー!」
ユーガは心から楽しそうな笑みを浮かべて窓から外を眺めた。
「・・・ユーガ、忠告しておきますが、まだサキュバスは実在したと確定しているわけではありませんからね・・・?」
ルインの言葉にユーガは、わかってるよ、と頬を膨らませた。
その頃、制下の門から東に行った小さな孤島にて。肌白い肌と白い髪が月の光を反射して輝き、小さな口からは八重歯が二本飛び出している。全身に紫色のマントにフードを被り、そのマントの中には灰色で上胸を誇張していて腹の部分が空いている服と黒い翼が折り畳まれ、ミニスカートを履いたその後ろ部分からは尻尾がぴょろん、と動いている少女ー歳はかなり幼く見えるーは、木の枝に座って上唇をぺろりと舐めた。
「・・・アタシも、そろそろかなぁ・・・?ふふ・・・」
そして翼を広げて、地面に降り立つと瞬時に駆け出し、夜の闇に紛れて消えていったー。
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