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リサはフランツに軽々と運ばれ、あっという間に自室に到着した。
彼は片手で器用にリサのジャケットのポケットから鍵を取り出し玄関を開け、ずんずんと寝室まで進む。
「水持ってくる」
ベッドにおろされたリサが頷くのを確認して、彼は寝室から出て行った。
ひどい疲労感にぐったりとして、リサは枕に顔を伏せる。もう呼吸の乱れは収まったが、代わりに強い自己嫌悪がこみ上げてきていた。
——二度も、発作でみっともないとこを見せちゃった……。
もうこれで彼とは終わりかもしれない、という不安が頭をかすめた。
今まで何人かの男と交際らしきことをしてきたが、彼らは総じて、リサの抱えるパニック障害を目の当たりにすると怯んで遠ざかっていった。フランツは優しい人だが、彼もこんな壊れた女とは関係を築きたいとは思わないだろう。
「起きられる?」
寝室にフランツの低く柔らかい声が響いた。
リサは倦怠感が残る上半身をゆっくり起こし、差し出されたグラスを受け取る。
「あの……ありがとうございます。だいぶ落ち着きました」
フランツはベッドの端に腰を下ろして、リサが水を口にするのを見守っている。彼の琥珀の眼差しを見返すことができない。
「すみません……」
「謝ることじゃない」
リサはゆるゆると首を振った。
「私、先生に、迷惑しかかけてません。ずっと助けてもらってるばかりで……。あの、もし、キスのこととか、後悔しているなら言ってください。私ちゃんと、」
彼の手がするりとベッドの上で滑り、リサの手を捉える。自然に言葉は途切れた。
「迷惑なんかじゃないよ。キスも、僕が後悔してると思うの?」
「だって……普通そうでしょう?」
彼の長い指がリサのものに絡められる。男性の無骨さがあるのに、どこか優雅な手。その親指が、リサの手の甲を往復してくすぐった。
「実体のない「普通」のことは考えなくていいんじゃないかな。後悔なんてないし、それよりも、君が僕のことまた「先生」と呼ぶことに少しがっかりしてる」
彼の、少し難解なのにまったく装っているふうもない言葉が、リサを揺さぶり、傷口に消毒液がしみるような痛みを引き起こす。
フランツの乾いた手の平が片頬に当てられた。
「さっきも似たようなこと言ったかもしれないけど。前に君が発作をおこした時、「An Sie(彼女に)」の詩を読んだのは、とっさの判断だったんだ。でも君はそれをしっかり受け止めて、書き写し、「お守り」にしてくれた」
君に惹かれてるよ。と、彼は静かに言ってリサを引き寄せた。目尻と頬にキスが落とされる。
リサは、彼のジャケットに縋りそうになる手をぎゅっと強く握り込み、こみ上げる涙を喉の奥に飲み込んだ。泣いたりしてここで甘えてはダメだ。カウンセリングで言われた通り、一時的な慰めを求めて他人と体の関係に陥って、すぐに関係をダメにすることを繰り返した過去もあった。フランツとはそうなりたくない。
リサは顔を上げて彼となんとか目を合わせ、「もう大丈夫」と自分にも言い聞かせるように、微笑んでみせる。うまくできている自信は、ない。
フランツの瞳がこちらを探っている。彼はわずかに眉を寄せて、小さく息を吐き出した。
「……あとね、一つ思ったんだけど」
「……?」
「君、ちゃんと食べてる? さっき抱き上げた時、軽すぎて驚いた。台所見たら、ポテトチップスとかしかないし」
なんだろう、この話題のカーブは。
「冷蔵庫にはヨーグルトとかもありますよ」
「ヨーグルト、とか? 他には?」
何があっただろう、とリサは記憶を引き寄せる。卵が入ってたはずだが、もう賞味期限が切れている気がする。
リサが黙り込んだのを見て、フランツは「わかった」と言って立ち上がった。
「僕が作り置きしてるもの、今から持ってくるから。スパゲッティとかは自分で買って、あとはソースを温めて食べなさいね」
「え……え? あの、そんな。先生、これ以上そんな親切は、」
「親切というより、庇護欲の押し売りだから。あとその「先生」は早くやめて欲しい。君、ただでさえ僕の学生とそう変わりない年齢だから、その呼び方されると手出しにくくなる」
言われたことの一つ一つは理解できるが、情報量が多くて脳がフリーズする。おかげで、それまで抱えていた気鬱は和らいでいた。
最後にフランツはリサの頭をくしゃくしゃと撫でて、「すぐ戻るね」と部屋を出て行った。
自分の冷蔵庫じゃないみたいだ。
翌日、リサは出かける前に牛乳を取り出そうと冷蔵庫を開いて、そこにある料理に圧倒されていた。
作り置きされたキッシュや、パプリカの肉詰め、野菜と燻製サーモンのマリネがタッパーに入って、きちんと並んでいる。冷凍庫の方には解凍するだけのパスタ用ソースだけでなく、なぜかトーストも入っていた。
リサはそのトーストをオーブンに入れ、マリネのタッパーを開いてみた。トマトやズッキーニなどが色鮮やかで、さっそく食欲がそそられる。
牛乳だけで済ますつもりだった朝食は中止になって、食卓の上にはトーストとコーヒー、そしてたっぷりの野菜が並んだ。こんなきちんとした朝ごはんは久しぶりだ。味わって食べ進めると、いつの間にか身体中に活力が満ちてくる。
今日は「ドン・キホーテ」のプログラムノートに載せる解説を書くために、劇場の資料室に篭る予定だ。作曲家というよりも、いわゆる音楽雑用係の部分の仕事で、普段は憂鬱だと思ってしまう。けれど今日は朝から気分が晴れやかだった。
——胃袋が幸せって、いいことだ。帰ってきたらまた美味しい料理が待ってるって、素敵。
リサは鼻歌を歌いながら身支度を済ませ、春の風が新緑の木々を揺らす外へ足を踏み出した。
市民劇場には別棟があって、そこに総務などのオフィスやバレエ団のレッスン室がある。リサが向かう資料室もその別棟にあるが、普段はほとんど人の出入りがないため、一番日当たりの悪い北側の部屋だ。
リサは午前中いっぱいかけて、この劇場で過去に催されたバレエ公演をさかのぼり、古いブロマイド写真を見つけ出した。どうやら四十年ほど前にも、この市民劇場でバレエ「ドン・キホーテ」が上演されたらしい。その白黒写真の中では、かつて主役のキトリとバジルを演じたバレリーナが、美しい衣装を着て扇子を広げポーズをとっている。
観客に配るプログラムには、バレエのあらすじや曲の解説などが書かれるのが一般的だが、この市民劇場は「市民密着型」として、街の歴史に関連する記述も載せる。
リサは過去の公演ポスターやバレエ団の名簿をひっくり返しながら、見つけ出したブロマイド写真を中心に、プログラムノートの構成を練った。
そして昼過ぎの時間になった頃だった。
——しっかり朝ごはん食べると、お昼にもちゃんとお腹が空くんだな……。
グウと鳴るお腹を抱えて、スーパーでサンドイッチでも買ってこようと、リサはやっと薄暗い資料室から外に出た。
別棟の廊下を進むと、バレエ団のレッスン室からどっと人が溢れ出てきたのに鉢合わせした。どうやらバレリーナたちの午前の練習が終わったようだ。ダンサーたちには独特の姿勢の良さがあり、さらに運動後の溌剌とした雰囲気がみなぎっている。
じきに彼らは更衣室に流れ込み、リサは別方向へ角を曲がった。そして裏口へ繋がる階段を下りようとした時だった。耳に、かすかな押し殺したような声が聞こえてきた。
人目につきにくそうな階段の踊り場。蛍光灯の白い光が弱々しく点滅する下に、一人の女性がしゃがみこんでいた。服装や、黒髪をシニヨンにまとめている様子から、すぐにバレリーナだとわかる。
彼女は手にカッターを握り、太ももに赤い引っかき傷を作っていた。
リサははっと息を飲む。その気配に気が付いたのか、彼女もぱっと顔を上げた。青ざめた表情で彼女は硬直し、こちらを凝視する。
「あ……ごめんなさい」
とっさにリサはそう謝って踵を返すが、すぐに後ろから必死の声が追いかけてきた。
「ま、待って! 待って……違うの、これはっ」
リサの手を強く引き止め、そのバレリーナは泣きそうな顔で言い募る。
「お願い、誰にも言わないで。私、時々こういうことしちゃうだけで、大丈夫だから。ちょっと最近プレッシャーがあるだけで、普通に踊れるし。でもバレエ団長とかにバレたら……っ」
ああ、これは。と、リサの胸に共感めいた痛みが疼く。
「大丈夫。誰にも言わないよ」
「自傷っていっても、ちょっとした傷だから。私、いつもは普通だから。今日の練習でだって、」
「ねえ。大丈夫だってば。誰にも言わないって約束する。私も、」
リサはちょっと息を吸い込んで、彼女の震える手を握る。
「私も、パニック障害があるの。だから、貴女がそうやって辛いことを踏ん張ってるの、わかるから」
彼女はひっくひっくと息を引きつらせながら、リサの言ったことに一瞬目を見開いた。
どうすればいいだろう、とリサは考える。このまま去ることもできるが、彼女を落ち着かせるためにも、もう少し話してみたいという欲があった。
「ねえ、もしよかったら一緒に何かごはん食べない? 美味しいもの食べるとそれなりに元気が出るみたいって、私も最近気が付いたんだけど」
こうやって初対面の誰かを誘う勇気、自分のどこにあったのだろうと思う。リサはちょっと緊張して、彼女の返事を待った。
「……う、ん、ぜひ。私、着替えてくるから、ちょっと待っててもらえる?」
このバレリーナも恐る恐るという感じだが、リサの提案を受け入れた。
「もちろん」
彼女はショート丈のパンツで太ももの傷を隠し、バレリーナ特有の優雅さで更衣室に走っていった。
彼は片手で器用にリサのジャケットのポケットから鍵を取り出し玄関を開け、ずんずんと寝室まで進む。
「水持ってくる」
ベッドにおろされたリサが頷くのを確認して、彼は寝室から出て行った。
ひどい疲労感にぐったりとして、リサは枕に顔を伏せる。もう呼吸の乱れは収まったが、代わりに強い自己嫌悪がこみ上げてきていた。
——二度も、発作でみっともないとこを見せちゃった……。
もうこれで彼とは終わりかもしれない、という不安が頭をかすめた。
今まで何人かの男と交際らしきことをしてきたが、彼らは総じて、リサの抱えるパニック障害を目の当たりにすると怯んで遠ざかっていった。フランツは優しい人だが、彼もこんな壊れた女とは関係を築きたいとは思わないだろう。
「起きられる?」
寝室にフランツの低く柔らかい声が響いた。
リサは倦怠感が残る上半身をゆっくり起こし、差し出されたグラスを受け取る。
「あの……ありがとうございます。だいぶ落ち着きました」
フランツはベッドの端に腰を下ろして、リサが水を口にするのを見守っている。彼の琥珀の眼差しを見返すことができない。
「すみません……」
「謝ることじゃない」
リサはゆるゆると首を振った。
「私、先生に、迷惑しかかけてません。ずっと助けてもらってるばかりで……。あの、もし、キスのこととか、後悔しているなら言ってください。私ちゃんと、」
彼の手がするりとベッドの上で滑り、リサの手を捉える。自然に言葉は途切れた。
「迷惑なんかじゃないよ。キスも、僕が後悔してると思うの?」
「だって……普通そうでしょう?」
彼の長い指がリサのものに絡められる。男性の無骨さがあるのに、どこか優雅な手。その親指が、リサの手の甲を往復してくすぐった。
「実体のない「普通」のことは考えなくていいんじゃないかな。後悔なんてないし、それよりも、君が僕のことまた「先生」と呼ぶことに少しがっかりしてる」
彼の、少し難解なのにまったく装っているふうもない言葉が、リサを揺さぶり、傷口に消毒液がしみるような痛みを引き起こす。
フランツの乾いた手の平が片頬に当てられた。
「さっきも似たようなこと言ったかもしれないけど。前に君が発作をおこした時、「An Sie(彼女に)」の詩を読んだのは、とっさの判断だったんだ。でも君はそれをしっかり受け止めて、書き写し、「お守り」にしてくれた」
君に惹かれてるよ。と、彼は静かに言ってリサを引き寄せた。目尻と頬にキスが落とされる。
リサは、彼のジャケットに縋りそうになる手をぎゅっと強く握り込み、こみ上げる涙を喉の奥に飲み込んだ。泣いたりしてここで甘えてはダメだ。カウンセリングで言われた通り、一時的な慰めを求めて他人と体の関係に陥って、すぐに関係をダメにすることを繰り返した過去もあった。フランツとはそうなりたくない。
リサは顔を上げて彼となんとか目を合わせ、「もう大丈夫」と自分にも言い聞かせるように、微笑んでみせる。うまくできている自信は、ない。
フランツの瞳がこちらを探っている。彼はわずかに眉を寄せて、小さく息を吐き出した。
「……あとね、一つ思ったんだけど」
「……?」
「君、ちゃんと食べてる? さっき抱き上げた時、軽すぎて驚いた。台所見たら、ポテトチップスとかしかないし」
なんだろう、この話題のカーブは。
「冷蔵庫にはヨーグルトとかもありますよ」
「ヨーグルト、とか? 他には?」
何があっただろう、とリサは記憶を引き寄せる。卵が入ってたはずだが、もう賞味期限が切れている気がする。
リサが黙り込んだのを見て、フランツは「わかった」と言って立ち上がった。
「僕が作り置きしてるもの、今から持ってくるから。スパゲッティとかは自分で買って、あとはソースを温めて食べなさいね」
「え……え? あの、そんな。先生、これ以上そんな親切は、」
「親切というより、庇護欲の押し売りだから。あとその「先生」は早くやめて欲しい。君、ただでさえ僕の学生とそう変わりない年齢だから、その呼び方されると手出しにくくなる」
言われたことの一つ一つは理解できるが、情報量が多くて脳がフリーズする。おかげで、それまで抱えていた気鬱は和らいでいた。
最後にフランツはリサの頭をくしゃくしゃと撫でて、「すぐ戻るね」と部屋を出て行った。
自分の冷蔵庫じゃないみたいだ。
翌日、リサは出かける前に牛乳を取り出そうと冷蔵庫を開いて、そこにある料理に圧倒されていた。
作り置きされたキッシュや、パプリカの肉詰め、野菜と燻製サーモンのマリネがタッパーに入って、きちんと並んでいる。冷凍庫の方には解凍するだけのパスタ用ソースだけでなく、なぜかトーストも入っていた。
リサはそのトーストをオーブンに入れ、マリネのタッパーを開いてみた。トマトやズッキーニなどが色鮮やかで、さっそく食欲がそそられる。
牛乳だけで済ますつもりだった朝食は中止になって、食卓の上にはトーストとコーヒー、そしてたっぷりの野菜が並んだ。こんなきちんとした朝ごはんは久しぶりだ。味わって食べ進めると、いつの間にか身体中に活力が満ちてくる。
今日は「ドン・キホーテ」のプログラムノートに載せる解説を書くために、劇場の資料室に篭る予定だ。作曲家というよりも、いわゆる音楽雑用係の部分の仕事で、普段は憂鬱だと思ってしまう。けれど今日は朝から気分が晴れやかだった。
——胃袋が幸せって、いいことだ。帰ってきたらまた美味しい料理が待ってるって、素敵。
リサは鼻歌を歌いながら身支度を済ませ、春の風が新緑の木々を揺らす外へ足を踏み出した。
市民劇場には別棟があって、そこに総務などのオフィスやバレエ団のレッスン室がある。リサが向かう資料室もその別棟にあるが、普段はほとんど人の出入りがないため、一番日当たりの悪い北側の部屋だ。
リサは午前中いっぱいかけて、この劇場で過去に催されたバレエ公演をさかのぼり、古いブロマイド写真を見つけ出した。どうやら四十年ほど前にも、この市民劇場でバレエ「ドン・キホーテ」が上演されたらしい。その白黒写真の中では、かつて主役のキトリとバジルを演じたバレリーナが、美しい衣装を着て扇子を広げポーズをとっている。
観客に配るプログラムには、バレエのあらすじや曲の解説などが書かれるのが一般的だが、この市民劇場は「市民密着型」として、街の歴史に関連する記述も載せる。
リサは過去の公演ポスターやバレエ団の名簿をひっくり返しながら、見つけ出したブロマイド写真を中心に、プログラムノートの構成を練った。
そして昼過ぎの時間になった頃だった。
——しっかり朝ごはん食べると、お昼にもちゃんとお腹が空くんだな……。
グウと鳴るお腹を抱えて、スーパーでサンドイッチでも買ってこようと、リサはやっと薄暗い資料室から外に出た。
別棟の廊下を進むと、バレエ団のレッスン室からどっと人が溢れ出てきたのに鉢合わせした。どうやらバレリーナたちの午前の練習が終わったようだ。ダンサーたちには独特の姿勢の良さがあり、さらに運動後の溌剌とした雰囲気がみなぎっている。
じきに彼らは更衣室に流れ込み、リサは別方向へ角を曲がった。そして裏口へ繋がる階段を下りようとした時だった。耳に、かすかな押し殺したような声が聞こえてきた。
人目につきにくそうな階段の踊り場。蛍光灯の白い光が弱々しく点滅する下に、一人の女性がしゃがみこんでいた。服装や、黒髪をシニヨンにまとめている様子から、すぐにバレリーナだとわかる。
彼女は手にカッターを握り、太ももに赤い引っかき傷を作っていた。
リサははっと息を飲む。その気配に気が付いたのか、彼女もぱっと顔を上げた。青ざめた表情で彼女は硬直し、こちらを凝視する。
「あ……ごめんなさい」
とっさにリサはそう謝って踵を返すが、すぐに後ろから必死の声が追いかけてきた。
「ま、待って! 待って……違うの、これはっ」
リサの手を強く引き止め、そのバレリーナは泣きそうな顔で言い募る。
「お願い、誰にも言わないで。私、時々こういうことしちゃうだけで、大丈夫だから。ちょっと最近プレッシャーがあるだけで、普通に踊れるし。でもバレエ団長とかにバレたら……っ」
ああ、これは。と、リサの胸に共感めいた痛みが疼く。
「大丈夫。誰にも言わないよ」
「自傷っていっても、ちょっとした傷だから。私、いつもは普通だから。今日の練習でだって、」
「ねえ。大丈夫だってば。誰にも言わないって約束する。私も、」
リサはちょっと息を吸い込んで、彼女の震える手を握る。
「私も、パニック障害があるの。だから、貴女がそうやって辛いことを踏ん張ってるの、わかるから」
彼女はひっくひっくと息を引きつらせながら、リサの言ったことに一瞬目を見開いた。
どうすればいいだろう、とリサは考える。このまま去ることもできるが、彼女を落ち着かせるためにも、もう少し話してみたいという欲があった。
「ねえ、もしよかったら一緒に何かごはん食べない? 美味しいもの食べるとそれなりに元気が出るみたいって、私も最近気が付いたんだけど」
こうやって初対面の誰かを誘う勇気、自分のどこにあったのだろうと思う。リサはちょっと緊張して、彼女の返事を待った。
「……う、ん、ぜひ。私、着替えてくるから、ちょっと待っててもらえる?」
このバレリーナも恐る恐るという感じだが、リサの提案を受け入れた。
「もちろん」
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