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第一章 終わりと始まり
26 陛下が僕を娶った理由
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「ラスティを最初に引きとると決めたのは……罪悪感だったんだ。」
弟を死なせてしまったという罪悪感。
感情のままに人の命を奪った罪。
奪うことしかできない自分を陛下は嫌悪しているという。
一人くらい…自分の手で助けたい。
そう思っていた時に、僕の両親の訴えが陛下の耳に入った。
弟君と同じ、金の瞳を持つ子供がいる。
金の瞳を持つ者は、不遇の人生を送って短命であることが多い。
すでに、陛下の知っている金の瞳を持つ人は悉くなくなっていた。
調べてみると遠縁だが確かに王家の血筋をもつ子供。
王家につたわる御伽噺をその時に思い出したと陛下は言った。
金の瞳を持つ者が、いなくなったら神様がこの世界を見放したという合図。
世界は、炎に包まれて二度と目覚めない眠りにつく。
一気にいなくなった金の瞳の者。
おそらくは…僕は最後の一人の金の瞳を持つ者。
金の瞳を持つ者が、いなくなったら…。
御伽噺だ、とは思ったが…僕を守ることの理由にはなるだろう。
そう思って、僕の両親の訴えを聞き届けたと陛下は苦笑した。
「初めて見た時…弟が帰ってきたのかと思った。」
子供の頃の弟君に僕が重なったのだと陛下は微笑んだ。
「ああ…別にラスティを弟の身代わりにするつもりはないよ。身代わりにするつもりなら…息子として引き取っていた。君は覚えていないだろうけど…初めてあった私を見て君は微笑んでくれた。その笑顔が可愛くて…本当に可愛くてね。愛しいと思った。これが愛しいという感情だったなって思い出したんだ。」
僕を抱きしめる腕から力が抜けた。
「エスターを愛しているのかどうか…わからなくなったのも…その時かな。」
陛下は僕を見て愛しいという感情を思い出したと嬉しそうに微笑んだ。
そう言われるのは恥ずかしいし、その感情がやはり家族愛なのでは?とも思ってしまう。
けど…そう思ったことで陛下はわからなくなったのだという。
エスターに感じている感情が何なのかを。
…エスターは弟の仇の兄弟の息子。
弟の仇と同じ血を持っている。
エスターの母の行動も陛下の話を聞いて少し…わかった。
彼の方も同じだ。
陛下は、兄弟の仇。
仇の子など産むつもりがなかったのだろう。
この国の王など庭師の子で十分だ。
そう思ったのかもしれない。
「エスターには罪がない。けど…あの子は、あの国の王に似ているよ。」
憎い男に似た血のつながらない息子。
愛そうと思っている。
愛してはいると思う。
けれども年齢を重ねるごとのエスターは、その王に似てくるのだと陛下は言う。
「君を守るつもりで…私は同じことをしている。」
陛下は、囁くようにつぶやいた。
強引に娶って、両親から離して自分のものにしようとしている。
奪っていないのは命だけだ。
君に憎まれても仕方ないだろうと。
そう陛下はつぶやいた。
ぼくの記憶を奪い、勝手に紋章を刻んでいる。
家族と無理やり引き離して、城に閉じ込めているのは事実なのだから…と。
僕は、バルハルト公の言葉を思い出していた。
陛下は、弱いわけではない…けれど、確かに繊細なんだろう。
僕は陛下の手をなでた。
「ラスティ?」
出会って数日の僕が陛下の何かを…訳知り顔で何か言うのは変だろう。
どんな言葉もきっと今の僕の言葉は陛下に正確には届かない。
理解できていない子供の戯言でしかない。
強い人だから、僕は陛下にとっては守らないといけない者。
まだ子供の…悲しいけれど子供の言葉でしかない。
そう思った。
でも、今、思って言うことは伝えようと思った。
誠実に。
「僕は陛下のことをまだよくわかりません。」
陛下は、そうだねと苦笑した。
「でも、僕は陛下のこと好きです。それに、陛下の弟君に意地悪して死なせてしまった王様に陛下が起こる怒るのは当たり前だとも思います。」
そうかなと微笑む陛下に僕は言う。
「だから…陛下がその人たちと同じだとは僕は思いません。」
陛下は、そうかな…と言いながら、また僕を抱きしめる腕に力を込めた。
少し苦しいけれど。
「僕…陛下ともっと一緒にいたいです。そしたらきっと大好きになれると思っています。」
うん。もう大好きだけども。
今は、流石に抱かれていいまでは思わない、親愛の方の好きだけど。
傍にいたら、そこまで思えるだろうか。
別の感情になるのだろうか。
わからないけれど、この時点でも陛下のために何かしたいとは思っている。
「そっか…うん…私はもう、ラスティのことが大好きだけどね。」
はいと頷きつつ僕は、陛下の肩越しに教会の扉を見る。
誰もいないはずなのに、視線を感じたからだ。
扉が薄く開いていることに気が付いたのはその時だった。
たぶん…リオンだろう。
じっとこちらを観察しているようだ。
馬車の中のぼくたちは見えないはずだけれど。
そのはずなのに、見られてると感じてしまう。
被害妄想かな?とは思うけれど薄気味悪い。
エスターには、悪いけれど…陛下もここが嫌いみたいだし、僕もここに近寄らないようにしたい。
そう思わせる視線だった。
弟を死なせてしまったという罪悪感。
感情のままに人の命を奪った罪。
奪うことしかできない自分を陛下は嫌悪しているという。
一人くらい…自分の手で助けたい。
そう思っていた時に、僕の両親の訴えが陛下の耳に入った。
弟君と同じ、金の瞳を持つ子供がいる。
金の瞳を持つ者は、不遇の人生を送って短命であることが多い。
すでに、陛下の知っている金の瞳を持つ人は悉くなくなっていた。
調べてみると遠縁だが確かに王家の血筋をもつ子供。
王家につたわる御伽噺をその時に思い出したと陛下は言った。
金の瞳を持つ者が、いなくなったら神様がこの世界を見放したという合図。
世界は、炎に包まれて二度と目覚めない眠りにつく。
一気にいなくなった金の瞳の者。
おそらくは…僕は最後の一人の金の瞳を持つ者。
金の瞳を持つ者が、いなくなったら…。
御伽噺だ、とは思ったが…僕を守ることの理由にはなるだろう。
そう思って、僕の両親の訴えを聞き届けたと陛下は苦笑した。
「初めて見た時…弟が帰ってきたのかと思った。」
子供の頃の弟君に僕が重なったのだと陛下は微笑んだ。
「ああ…別にラスティを弟の身代わりにするつもりはないよ。身代わりにするつもりなら…息子として引き取っていた。君は覚えていないだろうけど…初めてあった私を見て君は微笑んでくれた。その笑顔が可愛くて…本当に可愛くてね。愛しいと思った。これが愛しいという感情だったなって思い出したんだ。」
僕を抱きしめる腕から力が抜けた。
「エスターを愛しているのかどうか…わからなくなったのも…その時かな。」
陛下は僕を見て愛しいという感情を思い出したと嬉しそうに微笑んだ。
そう言われるのは恥ずかしいし、その感情がやはり家族愛なのでは?とも思ってしまう。
けど…そう思ったことで陛下はわからなくなったのだという。
エスターに感じている感情が何なのかを。
…エスターは弟の仇の兄弟の息子。
弟の仇と同じ血を持っている。
エスターの母の行動も陛下の話を聞いて少し…わかった。
彼の方も同じだ。
陛下は、兄弟の仇。
仇の子など産むつもりがなかったのだろう。
この国の王など庭師の子で十分だ。
そう思ったのかもしれない。
「エスターには罪がない。けど…あの子は、あの国の王に似ているよ。」
憎い男に似た血のつながらない息子。
愛そうと思っている。
愛してはいると思う。
けれども年齢を重ねるごとのエスターは、その王に似てくるのだと陛下は言う。
「君を守るつもりで…私は同じことをしている。」
陛下は、囁くようにつぶやいた。
強引に娶って、両親から離して自分のものにしようとしている。
奪っていないのは命だけだ。
君に憎まれても仕方ないだろうと。
そう陛下はつぶやいた。
ぼくの記憶を奪い、勝手に紋章を刻んでいる。
家族と無理やり引き離して、城に閉じ込めているのは事実なのだから…と。
僕は、バルハルト公の言葉を思い出していた。
陛下は、弱いわけではない…けれど、確かに繊細なんだろう。
僕は陛下の手をなでた。
「ラスティ?」
出会って数日の僕が陛下の何かを…訳知り顔で何か言うのは変だろう。
どんな言葉もきっと今の僕の言葉は陛下に正確には届かない。
理解できていない子供の戯言でしかない。
強い人だから、僕は陛下にとっては守らないといけない者。
まだ子供の…悲しいけれど子供の言葉でしかない。
そう思った。
でも、今、思って言うことは伝えようと思った。
誠実に。
「僕は陛下のことをまだよくわかりません。」
陛下は、そうだねと苦笑した。
「でも、僕は陛下のこと好きです。それに、陛下の弟君に意地悪して死なせてしまった王様に陛下が起こる怒るのは当たり前だとも思います。」
そうかなと微笑む陛下に僕は言う。
「だから…陛下がその人たちと同じだとは僕は思いません。」
陛下は、そうかな…と言いながら、また僕を抱きしめる腕に力を込めた。
少し苦しいけれど。
「僕…陛下ともっと一緒にいたいです。そしたらきっと大好きになれると思っています。」
うん。もう大好きだけども。
今は、流石に抱かれていいまでは思わない、親愛の方の好きだけど。
傍にいたら、そこまで思えるだろうか。
別の感情になるのだろうか。
わからないけれど、この時点でも陛下のために何かしたいとは思っている。
「そっか…うん…私はもう、ラスティのことが大好きだけどね。」
はいと頷きつつ僕は、陛下の肩越しに教会の扉を見る。
誰もいないはずなのに、視線を感じたからだ。
扉が薄く開いていることに気が付いたのはその時だった。
たぶん…リオンだろう。
じっとこちらを観察しているようだ。
馬車の中のぼくたちは見えないはずだけれど。
そのはずなのに、見られてると感じてしまう。
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エスターには、悪いけれど…陛下もここが嫌いみたいだし、僕もここに近寄らないようにしたい。
そう思わせる視線だった。
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