不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島　すけあ

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第五章　変わる関係

102　エスター王子とのお茶会

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エスターがセッティングした中庭でのお茶会。
僕は、ほとんど黙ったまま楽し気に話すマールとノーマを眺めていた。
エスターも同じような感じで殆ど黙ったままマールとノーマを見ている。

しばらくそうしていたが、僕はあることを思い出す。
陛下から渡されたものだ。

「そうそう、これを陛下から貴方に渡すように言われていたのだった。」

エスターにブレスレットを渡す。
ブレスレットを受け取ったスターは少し嬉しそうにしていたがふと首をかしげる。

「…これは…魔石？」

ええと僕は頷いた。
エスターは少し考えていたが、そうかといって腕にはめる。

「…お前は…つけていないのだな。」

僕は、そうですねと頷いた。

「僕も…皆の分もあったのですけれど…渡す前に壊れてしまったんですよね。」

僕の言葉にエスターは首を傾げた。

「壊れた…？」

何か思い当たったらしくエスターは、そうかとつぶやく。
ノーマは首を傾げた。

「そういえば…ラスティ様はジェン様に魔術を教わっていると聞きましたけど？」

ノーマの言葉に肩をすくめる。
今は、無理だろうと。
マールも少し複雑様な表情をした。
色々停滞しているのは本当だが…今は少し立ち止まる時だと持っている。
考える時だろう。
色々な新情報もあった。
情報をゆっくり吟味するには今の足踏みも必要なのだ。

「落ち着いたらね。」

ジェン公も、昼間は公務、夜はジークハルトの付き添いか子供たちの世話。
バルハルト公と交代で、ジークハルトは起きたのでそこまで手がかからなくなっているとしても。
それにしても…と僕は思う。
ノーマもわかっているはずだろう。
どうして、ジークハルトにつながりようなことをエスターの前で言うのか。

「このお茶請けのお菓子、美味しいですね。」

僕がそう言うとエスターがそれは…と解説を始めた。
どうやら彼の好物のようだ。
楽し気に話していたが、ふと我に返ったようで軽く咳ばらいをしている。
エスターについて…本当に何もしらなかったなと思っているとマールがにこにこと笑いながら口を開いた。

「そうだ…エスター様なら知っていますか？リオン様は元気にしていますか？」

僕も頷く。

「そうだね…元気にしているか…気になるね。」

エスターは、少し目を丸くする。

「気になるのか…ああ、リオンは元気にしている。少し…寂しそうにしていると今日シロに課題を持ってきた学園の生徒が言っていた。皆がいないのがつまらないといっているそうだ。」

僕は、そうですかと頷く。
マールもそっかとつぶやく。

「そういえば…課題が大量になりますよね。」

ノーマの言葉にエスターが多いなと頷く。
確かに多いが、僕とマールは結構終わってしまっている。
エスターには毎日課題が届いているという事なので、僕の方にも追加が来るのだろうか。

「まぁ…このあのくらいの課題など簡単にこなせなければ…執務など出来ないだろうしな。父上は私の持っている課題など足元にも及ばないくらいの大量の書類を瞬く間に処理してしまう。私もこの程度こなさなければ…」

エスターは、そういって少しうれし気に微笑んだ。

「そうだとも…父上に再度認められるように…この程度で…」

そう、エスターはつぶやく。
再度認められる…そうエスターはつぶやいた。
諦めていないという事なのだろう。

「何を認められたら…貴方は満足するのだろうな。」

僕の言葉にエスターは首をかしげる。

「陛下に何を認められたいの？」

エスターは黙ってしまった。

「それがわからないのなら…君の心は飢えたままになってしまうよ？」

僕の言葉にエスターは眉を寄せていたがつぶやくように言った。

「…父上に…自分という存在を認めさせる…それだけだ…同情やそういうものではなく…自分自身を。」

やれやれと僕は思う。
エスターがぎろりと僕をにらんだ。
憎いと僕をにらむその顔には覚えがあった。
前の生で彼がよくそんな顔をして僕をにらんでいたからだ。

「お前が来たから…私は教会へ行かされたのだ。ジークハルトに立場も奪われた。そのお前が言うのか？」

エスターは、僕を睨む。

「そうか…お前の所為だったな…そうだ…なぜ…私は気が付かつかなかった。お前がいなければ…私は…」

マールが立ち上り、僕を庇うようにエスターと僕の間に立った。
エスターは、マールが目に入っていないようだった。
ノーマが首をかしげる。

「なんでエスター様怖い顔してるの？？エスター様ってば～」

ノーマの声も耳に入っていないようでエスターは僕を憎々し気ににらみつけるばかりだ。
彼が立ち上ろうとした瞬間、付けていたブレスレットが淡く輝いた。
エスターは、はっとしたように顔を上げる。

「私は…今…何を…」

マールの険しい表情にエスターは、何か言おうとしてやめる。

「…どうも…エスター様はいろいろあってお疲れのようだ。今日はここまでで…。」

僕はそう言うと立ち上る。

「それでは…また…。」

そういいながら僕は陛下がエスターのために作ったブレスレットを見る。
陛下がエスターのために作ったものだ。
ここまで心を砕いてくれているというのにエスターは、まだ認めてほしいという。

「…エスター様…次にお会いする時までに…陛下が作ってくれたブレスレットの意味を考えてください。」

僕の言葉にエスターは、小さく頷いた。

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