不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第五章 変わる関係

116 奥の間=病院??

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結局エスターは奥の間に担ぎ込まれた。
ノルンの第一声が…。

「奥の間は、奥様の場所なのです!!病院ではありません!!!」

これだった…。
まぁ…ここのところ怪我人やら体調不良者が担ぎ込まれることが続いていたからなぁと僕は遠い目をした。
しびれがわずかになったジークハルトに、要注意として結局ロイスもバルハルト公とジェン公が見張るという事でしばらくは奥の間で寝泊まりするという事になった。

実際はエスターが担ぎ込まれたせいで護衛ということなのだが。

僕は久しぶりに温室で薬草に手入れをしている。
単純にノルンとマールに隔離されたのだ。
温室に…。
奥の間が色々な意味で危険だと…。

いや…矛盾していないか?

まぁ温室に併設している研究部屋で寝泊まりできるしもうここで引きこもりでもしようかなと、草取りをしつつ思う。

「ちょっと手を抜いてたからなぁ…」

ジークハルトが担ぎ込まれてから細やかに手入れを行っていなかった温室はちょっと荒れていた。
最低限の水やりなどはしていたが。

「はぁ…」

丁寧に不要な植物を抜いていく。
ラスティは、近くに置いた図鑑を眺めながら抜いた植物を分類していた。
一般論では雑草だ。
だが、意外にこの雑草とされる植物たちにも使い道はある。

乾燥させるもの、生のままアルコールにつけるもの、きちんと加工して毒のある部分を取り除くもの…ラスティはもくもくとその作業を行っていた。

「ラスティ様、もういい加減になさい!!」

マールの声にハッとする。
呆れた顔のマールはトレイで紅茶と砂糖菓子を運んできていた。

「はぁ…何をやっているんですか??」

僕は首を傾げつつ目の前の山になっている植物を見る。
マールはため息をついた。

「軽く水やりをして執務をするのでは??」

僕はそうだったと曖昧に笑う。

「ああ…ちょっと夢中になってた…」

マールは、はぁとため息をつく。

「悩みでもあるのですか?というか悩んでますよね?何でしょう?」

マールの言葉に僕は苦笑した。

「あるけど…言わない。」

僕の言葉にマールは肩をすくめた。

「ラスティ様。嫌なら嫌と言わないと。ジークハルト様やロイスはいいとしてもエスター様まで??と思っているのでは?陛下はそういうところはわからないのでしょう。」

僕は首を横に振った。

「別に…それはいいんだ。けど…しばらくここに閉じこもっていたいと少し思った。」

それは嫌なのでしょう?とマールは言う。

「嫌…」

嫌…そう嫌と言えば…嫌なのだろう。
ただ、単純に嫌というのかというと何かが違う。
何が違うのだろう。
自分でもわからない。

「ラスティ様?」

マールの声に僕は答えす目の前の植物を触る。
何が嫌なのか。

奥の間が好きに使われていること?
自分のテリトリーだから?
それは違う。
そもそも、ここは陛下の場所だ。
別に陛下が好きに使えばいい。
僕の専用の温室と研究部屋があれば僕は全然問題ない。

変なことばっかり起こっているから。
怖いから?
分からないから?
だから不安定にあっている?

いや…違う。
そういうことではない。

僕が嫌なこと。
僕が…。
僕が嫌だと思っていること。

僕が目を背けていること。

…んなの…わかってんだろ?

僕の中の『俺』が絞り出すように囁く。

わかってんだろ?

そう『俺』は言う。

僕は首を横に振る。
わからないよと。

『俺』はそうかとつぶやく。

たぶん…僕と『俺』はどんどんずれている。
この僕の不安定さは…僕はわからなくて『俺』が分かっているからだろう。

どうしてこんなことになったのだろう。
僕は思う。
どうして、僕と『俺』に分かれているの?

マールの声が遠い。
僕の体が、勝手に答えている。

『ごめんよ。少し…考えたいんだ。一時間くらいでいいから一人にしてくれる?』

マールは、わかりましたと言ってトレイを置いて温室を出て行った。
それを、待ってから僕の体は、勝手に植物の仕分けを始める。

『ったく…めんどくさいな…』

混乱する僕に、『俺』がささやく。
おまえが混乱していたから『俺』が出ているんだよ表にと彼は言う。

こんなにはっきりと分かれるなんて。
僕の言葉に『俺』はそうだなという。
僕の不安定の原因はそれだろうと『俺』はいう。

なんで…僕と君は分かれてしまったの?

そう僕が問うと『俺』が困ったようにつぶやく。
記憶も分かれてきているのかと。
何ことなのと問うたが『俺』は気にするなという。

『…『俺』とお前がわかれた理由は…たぶんだけど…どっちかが…陛下の言っていた御伽噺の五番目だったか?それなんだろう。記憶も実感も何もないからわからないが…ラスティと…五番目が分かれ始めている…と考えたらいいのではないかと思っている。』

なんでそんなことがわかるのさ。
僕の言葉に『俺』は分かっているわけではないと答えた。
『俺』はそうなだとつぶやいた。

『陛下のことを…夫と考えられるか?』

僕は首をかしげた。

「陛下は僕の旦那様でしょ?」

『俺』がため息をつきながら、そうではないのだが…まだ早いやとつぶやく。

何なんだよ、まったく…。
僕の言葉に、今のお前に言ってもわからないだろうと『俺』は囁いた。

鍵は…そうだな…は陛下だよ。

そう『俺』は言うと黙ってしまった。

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