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第五章 変わる関係
118 『俺』という存在
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僕は、『俺』の仕事を眺めながらぼんやりと考える。
ねぇ…君は…どうしたいの?
『俺』はそうだなと囁く。
『どうしたいというのは…あまりないかな…正直いえば…『俺』が自分に気が付いたのは…最近だから…君の望みと別にずれていないし…陛下への感情とノーマへの感想くらいか?違うの。他にもあったようにも思うけど…大きいのはそれくらいか…。最近『俺』たちも…周りも混乱してたし…まぁ…『俺』は…生きたいと思っているだけだ。』
『俺』の言葉に僕は、首をかしげる。
君は何もないの?…たとえば…そうだな…まずノーマをどうしたい?
『俺』は興味なさげにさらさらとペンを動かしながらそうだなとつぶやく。
『何も…すでに陛下が手を打っているだろう?ノーマはジークハルトの従者になる。ここでは陛下の眼に監視されているし、ジークハルトのところに行ったら今度はバルハルト公とジェン公が見張るだろう。『俺』たちが何かしようとしたら邪魔かもしれない。今のところはなにもしないほうがいいだろう。陛下の考えに任せる。』
僕はやっぱりなぁと思う。
『俺』は陛下大好きだなと。
その考えが伝わったのだろう。
『俺』の動揺が伝わってくる。
確かに『俺』の推測が当たっているなら彼は成人男性だ。
性別のある世界で偏見は無いが恋愛対象は女性の人。
けど…陛下が抵抗がないみたいに感じる。
『彼』の中では陛下は別格のようだ。
ジークハルトも問題なさそう…。
別人だと『俺』は言うけど…好みは同じようだ。
『文句あるのか?』
別にと僕は答える。
同じ感覚で過ごした所為だろう。
彼の感情は結局僕と変わらない。
出力の方法が違うだけのようだ。
変な感覚だけど…どう例えたらいいのか。
大元同じだけど育ちが違うから同じ能力を持っているけれど鍛えた能力が違う自分。
情報の出力の方法が増えた感じ?
なんだとも思った。
僕と『俺』に意識が分かれて混乱したけど…やっぱり僕と『俺』は僕なのだなと思う。
『俺』が何言ってんだ??と首を傾げつつ書類と格闘している。
僕はそれを眺めつつ、苦笑する。
君は僕で僕は君というのは変わらないなと思って。
『まぁ…長年一心同体だ。そうそう変わらないだろうさ。』
たぶん、少しずれた感情が僕らを元の位置に配置しただけで僕という個体の構成要素は変わらない。
僕と『俺』別れたのは…。
『俺』の言葉を信じるならば。
信じるけど…もしかしたら『俺』の勘違いもあるかもと少し悪あがきしている。
『お前なぁ…まぁいいけど。』
ぼやく『俺』に苦笑しつつ自分の考えをまとめる。
未来に僕が帰らないとならないということが決定したから…。
『俺』が僕を守るために切り離したのだろう…。
逆の立場なら僕もそうする。
自分を守るためというよりは…前進むことにつなげるために。
たぶん、今回死んだら…僕らはもう繰り返さないのだろう。
世界は滅んだままになるのだろう。
そして…ルートが一応決まったと思っていいのだろう。
たぶん…故意に。
エスターに毒を飲まされて死ぬルートはジークハルトが身代わりにさせられた。
ロイスに殺されるルートもエスターが…。
残ったルートは…トリスティに薬を飲まされて正気を失うルート。
ノーマが言っていた続編は一旦おいておく。
ノーマの言葉をそのまま信じるのは危険だという『俺』に同意する。
彼自身が、疑わしいという風に僕は思わないけれど…単純に僕自身がこんな変な状況になったのだ。
ノーマに何か秘密があっても驚かない。
ということで三番目のルートについて考える。
トリスティが、僕に薬を飲ませるようなことが起こるのだろうか。
僕がそう思うと、『俺』がため息をつく。
トリスティに限定するなと。
『商人の息子がやる可能性が残っている。もちろん関係のない…あの冒険者みたいなやつだっているってことだ。…考えたくないが…トリスティがラスティを憎むように仕向けられる可能性だってある。商人の息子は接点がないから今のところはどうしようもないだろう。王族と接点のできない攻略対象だったはずだ。直接出会うことは…16までないと思った方がいい。現状ではトリスティの対策だろう。今のトリスティがラスティを憎むようになるには何個か候補はあるが…』
僕は目を丸くする。
ええ??候補あるの??
『俺』は、はぁ??とため息をつく。
『…少しは頭を働かせてくれよ。一番簡単なのは大事な者がラスティが原因でひどい目にあったり死んだりすることだろう。トリスティの大事なものはなんだ?』
僕は、マールを思い浮かべる。
『そうだ…あとは…家族とかだろうな。』
ラスティがトリスティの家族に関わることはあまりないだろう。
宰相とは接点はあるが、トリスティの一件で宰相自体はラスティに悪い感情はないと思いたい。
『ん…今日のノルマ終わったぞ。』
『俺』はそう言うと軽く伸びをする。
『よし…『俺』は引っ込むか。』
ふっと体の感覚が切り替わるように僕は椅子に座っていた。
書類は綺麗に埋まっている。
「…ねぇ…君…もしかして……。」
僕はそこで言葉を飲み込む。
たぶん…いや…そうなのだ…。
「…嘘つきだな…君は……」
僕の中で『俺』は苦笑する。
『嘘はついていない…隠してはいるけどな。』
ねぇ…君は…どうしたいの?
『俺』はそうだなと囁く。
『どうしたいというのは…あまりないかな…正直いえば…『俺』が自分に気が付いたのは…最近だから…君の望みと別にずれていないし…陛下への感情とノーマへの感想くらいか?違うの。他にもあったようにも思うけど…大きいのはそれくらいか…。最近『俺』たちも…周りも混乱してたし…まぁ…『俺』は…生きたいと思っているだけだ。』
『俺』の言葉に僕は、首をかしげる。
君は何もないの?…たとえば…そうだな…まずノーマをどうしたい?
『俺』は興味なさげにさらさらとペンを動かしながらそうだなとつぶやく。
『何も…すでに陛下が手を打っているだろう?ノーマはジークハルトの従者になる。ここでは陛下の眼に監視されているし、ジークハルトのところに行ったら今度はバルハルト公とジェン公が見張るだろう。『俺』たちが何かしようとしたら邪魔かもしれない。今のところはなにもしないほうがいいだろう。陛下の考えに任せる。』
僕はやっぱりなぁと思う。
『俺』は陛下大好きだなと。
その考えが伝わったのだろう。
『俺』の動揺が伝わってくる。
確かに『俺』の推測が当たっているなら彼は成人男性だ。
性別のある世界で偏見は無いが恋愛対象は女性の人。
けど…陛下が抵抗がないみたいに感じる。
『彼』の中では陛下は別格のようだ。
ジークハルトも問題なさそう…。
別人だと『俺』は言うけど…好みは同じようだ。
『文句あるのか?』
別にと僕は答える。
同じ感覚で過ごした所為だろう。
彼の感情は結局僕と変わらない。
出力の方法が違うだけのようだ。
変な感覚だけど…どう例えたらいいのか。
大元同じだけど育ちが違うから同じ能力を持っているけれど鍛えた能力が違う自分。
情報の出力の方法が増えた感じ?
なんだとも思った。
僕と『俺』に意識が分かれて混乱したけど…やっぱり僕と『俺』は僕なのだなと思う。
『俺』が何言ってんだ??と首を傾げつつ書類と格闘している。
僕はそれを眺めつつ、苦笑する。
君は僕で僕は君というのは変わらないなと思って。
『まぁ…長年一心同体だ。そうそう変わらないだろうさ。』
たぶん、少しずれた感情が僕らを元の位置に配置しただけで僕という個体の構成要素は変わらない。
僕と『俺』別れたのは…。
『俺』の言葉を信じるならば。
信じるけど…もしかしたら『俺』の勘違いもあるかもと少し悪あがきしている。
『お前なぁ…まぁいいけど。』
ぼやく『俺』に苦笑しつつ自分の考えをまとめる。
未来に僕が帰らないとならないということが決定したから…。
『俺』が僕を守るために切り離したのだろう…。
逆の立場なら僕もそうする。
自分を守るためというよりは…前進むことにつなげるために。
たぶん、今回死んだら…僕らはもう繰り返さないのだろう。
世界は滅んだままになるのだろう。
そして…ルートが一応決まったと思っていいのだろう。
たぶん…故意に。
エスターに毒を飲まされて死ぬルートはジークハルトが身代わりにさせられた。
ロイスに殺されるルートもエスターが…。
残ったルートは…トリスティに薬を飲まされて正気を失うルート。
ノーマが言っていた続編は一旦おいておく。
ノーマの言葉をそのまま信じるのは危険だという『俺』に同意する。
彼自身が、疑わしいという風に僕は思わないけれど…単純に僕自身がこんな変な状況になったのだ。
ノーマに何か秘密があっても驚かない。
ということで三番目のルートについて考える。
トリスティが、僕に薬を飲ませるようなことが起こるのだろうか。
僕がそう思うと、『俺』がため息をつく。
トリスティに限定するなと。
『商人の息子がやる可能性が残っている。もちろん関係のない…あの冒険者みたいなやつだっているってことだ。…考えたくないが…トリスティがラスティを憎むように仕向けられる可能性だってある。商人の息子は接点がないから今のところはどうしようもないだろう。王族と接点のできない攻略対象だったはずだ。直接出会うことは…16までないと思った方がいい。現状ではトリスティの対策だろう。今のトリスティがラスティを憎むようになるには何個か候補はあるが…』
僕は目を丸くする。
ええ??候補あるの??
『俺』は、はぁ??とため息をつく。
『…少しは頭を働かせてくれよ。一番簡単なのは大事な者がラスティが原因でひどい目にあったり死んだりすることだろう。トリスティの大事なものはなんだ?』
僕は、マールを思い浮かべる。
『そうだ…あとは…家族とかだろうな。』
ラスティがトリスティの家族に関わることはあまりないだろう。
宰相とは接点はあるが、トリスティの一件で宰相自体はラスティに悪い感情はないと思いたい。
『ん…今日のノルマ終わったぞ。』
『俺』はそう言うと軽く伸びをする。
『よし…『俺』は引っ込むか。』
ふっと体の感覚が切り替わるように僕は椅子に座っていた。
書類は綺麗に埋まっている。
「…ねぇ…君…もしかして……。」
僕はそこで言葉を飲み込む。
たぶん…いや…そうなのだ…。
「…嘘つきだな…君は……」
僕の中で『俺』は苦笑する。
『嘘はついていない…隠してはいるけどな。』
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