不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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閑章 リオンside 月

閑話 16  四番目の神 ※

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ていねいに自分を触ってくるレスリルにリオンは苦笑する。
ただ触っているだけのような手つきで、壊れるとでも思っているようだとリオンは、ぼんやりと思う。
やわらかに、優しく触れる手にリオンは、自分はいったい何をしているのだろうなと思う。

「なぜ、貴方は…ラスティ殿下なのでしょうね。貴方は…なぜ、そこまでラスティ様に愛情をささげているのですか?どうして…何度も生まれ変わっても彼を切り捨てることが出来ないのですか?」

ぽつりとレスリルはつぶやく。
リオンは、そうだねと頷いた。
薄い胸を愛おし気に撫でるレスリル見て少し引きながら、リオンはどうしてなのだろうと考える。
レスリルは陛下から聞いていたのかもしれないが、世界が繰り返していることやリオンの心情に詳しいことも疑問ではあったが、レスリルについては、残り時間で調べれないだろうとあきらめる。

だが、彼の問いかけに何故かと問われて何故だろうと考える。
一番は、可愛いという事かなとリオンは思う。
リオンはラスティの好きな所を考える。
顔も好きだし、少し落ち着いた声も、聡明な頭脳も優しい性格も彼の好きな所をあげていくときりがないなとリオンは思う。

「理想だからかな…。」

レスリルは、リオンの肌に唇を触れさせていたが顔を上げた。

「理想の…相手という事ですか?」

ほんの少しレスリルの瞳に嫉妬の炎がともる。
リオンは答えず、苦笑した。
でも…欲しいわけではないんだよな…とリオンはレスリルの拙い愛撫を受けつつ考える。
理想というのは当てはまる。
だからと言ってラスティを絶対に手に入れたいかと言われるとそうでもない。
幸せに笑ってほしいという願いだけだ。

「理想の…ん…兄かなぁ…弟……」

人の体温の心地よさにリオンは、とろんと気持ちよさそうに表情を溶かした。
ラスティへの思いに肉欲は薄いとリオンは思う。
こうやって抱かれることを、逆に抱くことを望んでいるわけではない。
レスリルの徐々に強くなる愛撫にリオンは、快楽を拾うようになった自分の体に苦笑する。

「だって…ラスティ…殿下に…こんな…姿…みせたくない…なぁ…」

リオンの言葉にレスリルは、そうですかとつぶやく。

「なら…見たいのですか?」

そう言いながらレスリルは、リオンに腹に指を走らせた。
リオンはその感触にふるりと体を揺らせる。

「は…それは…みたいかも?いや……どうかな……」

自分で抱くという選択肢はリオンには無いが、少し見てみたいなとリオンは思った。
できれば…そう、ディオスと幸せになったラスティの姿として。
リオンの頭に浮かぶのは、ゲーム画面のディオスとラスティのスチルだった。
薬でおかしくなったラスティを辛そうに抱くディオスの表情にリオンは、これかと思う。
ラスティを幸せにしたいと思った理由をリオンは思い出したのだ。
前世の先輩の妹から聞いた、先輩の話をそのスチルを見た時にああと共感した思いだ。
なんでこの子ばっかりこんな目に合うのかなぁっと、先輩と自分が同じことを思えたことを思い出した。
リオンは、彼女に伝えきれていなかったことを思う。
思い出したというのは違うとリオンは思う。
目を逸らしては、思い出してリオン自身を苛む思い。

贖罪。

自分に降りかかる苦しみや辛さは、あの時の罪だとリオンは、飲み込んでいた。
リオンの中にはこの世界はゲームで現実ではないという思いも少しはあった。
けれども…それでも必死に過ごしたのは…、何とかしたいと思ったのは、ただ、その感情だ。

懺悔。

リオンは、何故か言葉が止まらなくなっていた。

「だって…そうだ…俺の所為で…先輩は…死んだんだ。」

言うつもりの無い言葉がリオンの口から音になっていた。
言っても意味がない。
この言葉をわかる人間などここにはいない。
リオンのつぶやきにレスリルは、思った通り不思議そうに首をかしげる。

「俺が好きなのは、ラスティとは違う…似てるけど…違う…先輩…先輩だもの…その先輩に甘えて…死なせた…疲れてた先輩に…俺の仕事の後始末させて…余計に疲れさせて…先輩は…事故にあって、死んだんだ…。」

何度も何度も突き付けられる、罪の意識にリオンは乾いた笑い声をあげた。
ここはきっと地獄なのだとリオンは思う。
ラスティを幸せにしたら、唯一知っている先輩の願いを叶えたら…きっと自分は先輩に許してもらえるとリオンは思う。
ありえないことだとは、リオンは分かっているし、思っている。
けれども、思わずにはいられなかった。
レスリルは、息を吐いた。

「人の思いは…本当に…怖いくらい深いですね…」

どういう意味だと、リオンはレスリルの顔を見た瞬間に己の中に彼の楔を打ち込まれたのを感じた。

「ああ…あ…うぁぁ…いやぁぁ…」

今まで感じたことのない強烈な快楽にリオンは一気に堕ちた。
レスリルは、快楽にあえぐリオンを見て優しく微笑む。

「ああ…カワイイですね。本当に愚かで…拙い思いにしがみついて…哀れでカワイイ私の聖者様。」

レスリルが、ゆるやかに腰を揺らす。
それだけでリオンは、悲痛なまでの鳴き声を上げた。

「貴方がしようとしていたのでしょう?知っていました。だから…代わりに私が行いました。貴方の魂に私の魂を紐づけしてあげました。貴方の持っている魔石の力では、ここまでできなかったでしょうから…私がやった方が確実です。これで…私は、記憶を持ったまま次の繰り返しの世界に進みます。ええ…貴方の手足となりましょう。可愛い聖者様。無駄なことに必死になって。私はずぅっと記憶を持っている。ああ…本当に…本当に…君の思いは愚かで…悲しくて…純粋で…あまりに私に似すぎていて…情が移ってしまったよ。壊しつくしてしまうつもりだったんだ。動くつもりなんてなかったのに…。こうやって人に紛れて愚かな人々を眺めて終わりを待つつもりだったのに…っ君があんまりにも、愚かで愛しくて…悲しくて…機会を与えたくなってしまったよ。最後の最後の…一回限りの機会だ。」

くすくすと笑いながら、レスリルは、ゆっくりと腰を揺らす。
それだけでリオンは、今まで感じたことの無いような悦楽を感じ声を上げた。

「なんで…こんなの…なんでぇ…ああ…んぅ…やぁ…い…いやぁ…」

リオンは必死にシーツをつかんで感覚をやり過ごそうとする。
この男の言葉を逃してはダメだとリオンは、必死に意識を保とうとする。
だが、レスリルが緩く動くだけで、おかしくなるくらいの快感を体は感じていた。

「んぁ…あんああ…ダメ…動かないで…やぁ…」

おかしいとリオンは思う。
レスリルは、ゆるやかに動いているだけ。
快楽になれた自分に体がここまで乱れるような行為ではないとリオンは思う。
異常だとリオンは体を恐怖で震わせた。
こんなことはおかしいとリオンは、思いついた言葉を声に乗せた。

「レ…ス…リル…ま…ま…さか……へ…いか…と…おな…じ?」

とぎれとぎれの言葉に、レスリルは、ほぅと頷く。
リオン自身は幾度も、繰り返しの生で王家の御伽噺も教会の神話も把握していた。
ゲームの方でディオスの弱体化のための依頼で必要なアイテム、それは先日ディオスに送った宝珠だった。
それは神が与えてくる宝珠と対になっているもので、ディオスの中に生まれた世界を恨む心を吸収し浄化することでリオン達に強力な防御結界を作るアイテムだという。
世界を守る宝珠と同じくらいの結界を作らないと防げないディオスの力はどれだけ強力なのか。

だから…ディオスは神である。
人ではない魔王である。
それがリオンの認識だった。
彼と同じものだというならば、リオンが思いつく神は自分か仕えている神だけだ。

「ああ…そんなぁ…ん…いやぁ…やめ…やめてぇ……」

にやりと笑うレスリルにリオンは絶望の瞳を向けたのだった。

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