不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

文字の大きさ
141 / 233
第六章 運命の一年間

123 門番さん

しおりを挟む
ノルンにエスコートされて王宮へ行くことになった。
奥の間を出るといつもの門番さんにも誕生日を祝われた。

「どうかしましたか?」

僕の様子に門番さんは、優しく微笑む。
門番さんは、元陛下の剣術指南役で陛下にとってはもう一人の父親のような人らしい。
本当は、側近の一人として支えてほしいと陛下は思っていたらしいが、門番さんが断った。
陛下を見守るという任務に就きたいという彼の希望を検討した結果、奥の間の警護主任という立場になったという。
彼の名を僕は知らない。
奥の間にいる者の中では陛下しか知らないという。
だから皆門番さんや門番様と呼んでいる。
噂では今でも陛下より強いのではないかと言う噂のある老騎士。
王宮でもあまり彼を知るものがいないという不思議な人でもある。

「いえ…」

門番さんは、深いしわのある顔を柔和に微笑ませて僕の言葉を促した。

「ラスティ様、何か不安がおありなのでは?」

僕は、どうしようかと思っていると勝手に口が動いた。

『…その…16になったということは…そろそろ子をと議会で陛下が言われていると…聞いていたので…』

門番さんは、ああと頷いた。
『俺』のやつぅと内心思いながら顔が赤くなる。
なんてことを門番さんに相談させるんだ。

「ああ…そのことですか…お気になさらず、成人してからゆっくり考えればよいことです。確かにしばらくうるさいかもしれませんが…」

ええと『俺』は頷いた。

『陛下もそうおっしゃいましたが…側室の話も多く出ているとも聞きますから…』

僕は、以前聞いたことがあるなとは思い出したが、陛下が否定していたのでなくなったものと考えていた。まだまだあるらしく有力な貴族から息子をという声が上がっていると『俺』がため息交じりに門番さんに言う。
門番さんにというよりは、僕に聞かせてるのだろう。
このまま王宮に行って噂を耳にする前にと『俺』なりの気遣いのようだが。
門番さんは、苦笑する。

『それに…聖者リオンをとの声も…』

僕は内心、ええ??と思う。
それは知らなかった。
門番さんは、おやおやと笑う。
黙って聞いていたノルンが、少し憤慨したように答えた。

「あくまで噂で、それは無いでしょう。」

ご心配なさらずと笑う門番さんに、『俺』はそうですねと頷く。

「ラスティ様は今日引きこもりたいとおっしゃっていたのは…その噂ですか?」

『俺』は軽く首を横に振った。

『まぁ…色々…思うところもあって。』

たしかにいろいろ考えたけども。
僕がそう思っているとノルンが、首を傾げた。

「陛下はラスティ様が18歳になるまでは待つと宣言されていますし…それまでにラスティ様が別の人を選んだらそれも受け入れると…」

『俺』は、そうだねと頷く。

『うーん…それなんだよねぇ。』

ノルンは『俺』の言葉に首を傾げた。

「なにか?」

『俺』は少し拗ねたようにつぶやく。

『だって…陛下にとっては…僕は他の人に譲れるくらいの価値なんだよね?』

ノルンは、青くなる。
門番さんはおやおやと苦笑した。
僕は『俺』の言葉にだよねぇと思う。
陛下は、ラスティをいつでも手放せるように、一歩引いている。
それはなんとなく感じていた。
まぁ…一瞬でも独占欲を感じてしまった僕がいう事ではないが。

「違います…陛下は…本当に…」

分かっているよと頷く『俺』にノルンは言葉を探しているようだった。
門番さんは、そうですねと頷いた。

「まぁ…もう少し待ってやってくださいラスティ様。」

僕はおや?と思う。
『俺』も同じことを思ったようだった。
門番さんは微笑んでいる。

「手放す気なら、もっとはやく手放しているでしょう。陛下は、ラスティ様を手元に置きたいと願っておられますから…ご安心ください。ふふ…」

門番さんの態度に僕は首をかしげる。
『俺』はそっと僕と入れ替わっていた。

「ああ…失礼しました、陛下はラスティ様に対しては少し臆病になっているなと…いつでも手放すことができるようにと考えているようですが…無理なのでしょうなと…。」

ノルンも頷く。

「ええ、陛下は手放す気はないでしょうね。」

頷きあう二人に僕は困惑するだけだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

俺、転生したら社畜メンタルのまま超絶イケメンになってた件~転生したのに、恋愛難易度はなぜかハードモード

中岡 始
BL
ブラック企業の激務で過労死した40歳の社畜・藤堂悠真。 目を覚ますと、高校2年生の自分に転生していた。 しかも、鏡に映ったのは芸能人レベルの超絶イケメン。 転入初日から女子たちに囲まれ、学園中の話題の的に。 だが、社畜思考が抜けず**「これはマーケティング施策か?」**と疑うばかり。 そして、モテすぎて業務過多状態に陥る。 弁当争奪戦、放課後のデート攻勢…悠真の平穏は完全に崩壊。 そんな中、唯一冷静な男・藤崎颯斗の存在に救われる。 颯斗はやたらと落ち着いていて、悠真をさりげなくフォローする。 「お前といると、楽だ」 次第に悠真の中で、彼の存在が大きくなっていき――。 「お前、俺から逃げるな」 颯斗の言葉に、悠真の心は大きく揺れ動く。 転生×学園ラブコメ×じわじわ迫る恋。 これは、悠真が「本当に選ぶべきもの」を見つける物語。 続編『元社畜の俺、大学生になってまたモテすぎてるけど、今度は恋人がいるので無理です』 かつてブラック企業で心を擦り減らし、過労死した元社畜の男・藤堂悠真は、 転生した高校時代を経て、無事に大学生になった―― 恋人である藤崎颯斗と共に。 だが、大学という“自由すぎる”世界は、ふたりの関係を少しずつ揺らがせていく。 「付き合ってるけど、誰にも言っていない」 その選択が、予想以上のすれ違いを生んでいった。 モテ地獄の再来、空気を読み続ける日々、 そして自分で自分を苦しめていた“頑張る癖”。 甘えたくても甘えられない―― そんな悠真の隣で、颯斗はずっと静かに手を差し伸べ続ける。 過去に縛られていた悠真が、未来を見つめ直すまでの じれ甘・再構築・すれ違いと回復のキャンパス・ラブストーリー。 今度こそ、言葉にする。 「好きだよ」って、ちゃんと。

公爵家の末っ子に転生しました〜出来損ないなので潔く退場しようとしたらうっかり溺愛されてしまった件について〜

上総啓
BL
公爵家の末っ子に転生したシルビオ。 体が弱く生まれて早々ぶっ倒れ、家族は見事に過保護ルートへと突き進んでしまった。 両親はめちゃくちゃ溺愛してくるし、超強い兄様はブラコンに育ち弟絶対守るマンに……。 せっかくファンタジーの世界に転生したんだから魔法も使えたり?と思ったら、我が家に代々伝わる上位氷魔法が俺にだけ使えない? しかも俺に使える魔法は氷魔法じゃなく『神聖魔法』?というか『神聖魔法』を操れるのは神に選ばれた愛し子だけ……? どうせ余命幾ばくもない出来損ないなら仕方ない、お荷物の僕はさっさと今世からも退場しよう……と思ってたのに? 偶然騎士たちを神聖魔法で救って、何故か天使と呼ばれて崇められたり。終いには帝国最強の狂血皇子に溺愛されて囲われちゃったり……いやいやちょっと待て。魔王様、主神様、まさかアンタらも? ……ってあれ、なんかめちゃくちゃ囲われてない?? ――― 病弱ならどうせすぐ死ぬかー。ならちょっとばかし遊んでもいいよね?と自由にやってたら無駄に最強な奴らに溺愛されちゃってた受けの話。 ※別名義で連載していた作品になります。 (名義を統合しこちらに移動することになりました)

強制悪役劣等生、レベル99の超人達の激重愛に逃げられない

砂糖犬
BL
悪名高い乙女ゲームの悪役令息に生まれ変わった主人公。 自分の未来は自分で変えると強制力に抗う事に。 ただ平穏に暮らしたい、それだけだった。 とあるきっかけフラグのせいで、友情ルートは崩れ去っていく。 恋愛ルートを認めない弱々キャラにわからせ愛を仕掛ける攻略キャラクター達。 ヒロインは?悪役令嬢は?それどころではない。 落第が掛かっている大事な時に、主人公は及第点を取れるのか!? 最強の力を内に憑依する時、その力は目覚める。 12人の攻略キャラクター×強制力に苦しむ悪役劣等生

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】伴侶がいるので、溺愛ご遠慮いたします

  *  ゆるゆ
BL
3歳のノィユが、カビの生えてないご飯を求めて結ばれることになったのは、北の最果ての領主のおじいちゃん……え、おじいちゃん……!? しあわせの絶頂にいるのを知らない王子たちが、びっくりして憐れんで溺愛してくれそうなのですが、結構です! めちゃくちゃかっこよくて可愛い伴侶がいますので! ノィユとヴィルの動画を作ってみました!(笑)  インスタ @yuruyu0   Youtube @BL小説動画 です!  プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったらお話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです! ヴィル×ノィユのお話です。 本編完結しました! 『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく舞踏会編、完結しました! 時々おまけのお話を更新するかもです。 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

この世界は僕に甘すぎる 〜ちんまい僕(もふもふぬいぐるみ付き)が溺愛される物語〜

COCO
BL
「ミミルがいないの……?」 涙目でそうつぶやいた僕を見て、 騎士団も、魔法団も、王宮も──全員が本気を出した。 前世は政治家の家に生まれたけど、 愛されるどころか、身体目当ての大人ばかり。 最後はストーカーの担任に殺された。 でも今世では…… 「ルカは、僕らの宝物だよ」 目を覚ました僕は、 最強の父と美しい母に全力で愛されていた。 全員190cm超えの“男しかいない世界”で、 小柄で可愛い僕(とウサギのぬいぐるみ)は、今日も溺愛されてます。 魔法全属性持ち? 知識チート? でも一番すごいのは── 「ルカ様、可愛すぎて息ができません……!!」 これは、世界一ちんまい天使が、世界一愛されるお話。

処理中です...