不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

128 災厄の足音

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何事も無く2カ月があっさりと過ぎ去った。
その間に僕は薬の強化を図っていた。
完成度は高くなっていたのもあるけれど、どうにも進まなかった。
色々な人にアドバイスを貰って少しずつ改善は出来たと思う。
けれどもまだまだなのだ。
たぶん…僕のやる気の低下もある。
頑張っても頑張っても追ってくる焦燥感。
それに少し…いや…かなり疲れている。
何でかなんて…分からない。
いや…分かっているけれど目を背けている。
やっぱり怖くてどこかあきらめた方が楽なのではと思っている自分が居るからだ。

「はぁ…だめだなぁ…」

学園には、最近はテストのみ受けに行っている状況だった。
日に日に近づいてきている気がする。
いつというのはわからないけれど。
なんとなく、もうすぐ危険だという感じがしていた。
あまり奥の間から出たくない気分はやはりあって、王宮の執務室と奥の間の研究室に引きこもっている時が多くなってた。
ダメだと思うのだけれど。
思うけれども足踏みしている。

そんな僕を呆れつつもいつも『俺』は頑張っている。
毎日魔石を作る練習のために外に出ているようになった。
というか結構な頻度で『俺』が外に出ている。
僕が引きこもろうとするのを阻止するためだろう。
今日も執務室で執務をした後、町まで買い物をしてから研究所で、魔石を作っている。

『うぬぅ…』

唸りながら頑張ってはいるのだがうまく行かない。
何故か彼がつくる魔石はプルプルのままだ。
他の魔法は信じられないくらい使えるのにだ。
相性が悪いのかもしれない。
魔法の中でもそういうものはあるらしい。
属性のようなものだ。
とはいっても『俺』はプルプル魔石を諦めているようでその魔石の活用法を考えているらしい。

前向きだ。

最近は、魔石に登録した成分の物質を登録した魔石間で転送するという実験を行っていた。
かなりの距離も転送できる。
形がわかるプルプル魔石を平たくしてその上に登録した物質を置くと、もう片方の、魔石の上に転送される。
大きいものは無理だが小さなものは転送できるという。

『何かに使えるかなぁと思って』

そういって笑う彼は、失敗作っでも何かに使えないかと色々考えている。
僕は、それをぼんやりと眺めている。

『なぁ…大丈夫か?』

心配されてしまって僕は、大丈夫だとよ頷く。
『俺』はため息をつくと少し考えている。

『まぁ…そうだな…リオンに聞いているのはどうだ?』

僕は彼の言葉に首をかしげる。

『…嫌な予感がしないかとかだけでも聞いてみるのはどうだ?』

つまり、いつ頃何か起きるのか聞けという事なのだろう。
リオンが本当にそれを予知できるかなんてわからない。
たぶん、わからない方が確率は高い。
でも…と『俺』は言う。

『…友人に会いにいく理由には…なるだろう?皆心配しているらしいぞ。』

陛下の言葉を思い出す。
最近様子がおかしい僕をジークハルト達が心配していると。
もちろん陛下も心配してくれているのだ。

『明日…会いに行くと使い魔でも送っておけよ。』

そういって『俺』は作業に没頭し始めた。
僕は、その手元を眺めながらどうしようかと悩む。

でも…確かにここでうずくまっているよりは、無駄でも…友人に会いに行った方がいいかと思う。
しばらく僕も集中してリオンに何を書こうか考える。
『俺』が何か色々やっているみたいだが一旦、僕はそれを遮断して、使い魔を構築する呪文を考えていた。
伝言用の使い魔は少し構築するときに文章を工夫して文章を組み込むので魔法構造が変わるのだ。
気にしない人は気にしないが、きちんと構造が作られている方がきれいに作れる。
使い魔も、、文章も。
明日…リオンは大丈夫かなと考えていると『俺』が、今日の作業は終わったからと言って失敗作の魔石を入れた瓶を棚に並べていく。
僕は彼と交代すると考えていた構造で使い魔を作る。

中々に満足の行く使い魔が出来たと思う。
僕は満足満足と言いながら空に使い魔を放った。

青い空に金の蝶が飛んでいく。
窓際に止まっていた最近出番のないディーが蝶を眺めて小さく鳴いた。

のんびりとした光景。
けれどもまるで嵐の前の静けさの様。

そう…どんなにのんびりとした光景でも…僕にとっての嵐は何時起こっても不思議ではない。

僕はぼんやりと蝶を見上げる。
嫌な予感がする。

災厄はすぐ近くになるように感じる。
優しい風に僕の体が震えた。
災厄の足音が聞こえた気がしたのだ。


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