不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

147 希望 リオンside

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「陛下…俺が行きます。ロイス、トリスティ、脱出のフォローを!」

ジークハルトが自分の羽織っているマントに手をかけたが、ディオスが止める。

「ここは行かせることは出来ない。先ほども言っただろう?調査を任せると。ジークハルト…お前は次期国王として温存せねばなたない。同じことがロイスにもいえる。二人ともわかるね?」

ディオスの言葉にジークハルトは唇を噛みしめた。
ロイスは、困惑したようにバルハルトの顔を見る。
バルハルトが、やれやれと肩をすくめた。

「相当強力な魔物がいるだろう。俺とディオス行く。ジークハルトとロイスがいるから、俺らは無理ができるという事だ。何かあったら分かっているな?聖者リオン、お前が証人になれるだろう。ディオスと俺に何かあった時は、こいつらが国王と騎士団長になる。ディオスと俺の意思だ。」

リオンは少し戸惑ったが、ふぅと息を吐いた。
国王と騎士団長がいなくなるのは問題だろうと言いかけてやめた。
この二人が負ける魔物がこの世界にいるかと問われればリオンはいないと答える。
ディオス一人で行くというならば止めるが、フォローできるバルハルトが行くなら心配はない。
そうリオンは判断した。

「まぁ…そこに何がいても陛下が負けることはないでしょう。陛下は何があっても無事に帰ってくるという確証が僕にはある。だから、そのくらいの証人にはいくらでもなります。ただ…バルハルト公はお気をつけて…陛下の盾などになろうとしないでください。この下にいるのは…伝説級の魔物だと思います。」

だろうなとディオスは頷き、バルハルトはため息をついた。

「いやな情報をありがとう。聖者リオン」

そうつぶやくとバルハルトは好戦的な笑みを浮かべる。
ジークハルトが唇を噛みしめた。

「…陛下と…騎士団長にそのような場所にいかせるわけには…」

ロイスがバルハルトの太い腕をとる。
バルハルトはディオスを見ると彼は肩をすくめた。

「別にいいぞ?バルは留守番でも。」

ディオスは、面倒そうに羽織っていたマントと上着をぬぐ。
腕を軽く振ると、マントと上着をまとめてジークハルトに渡してついでのように王冠をジークハルトの頭にのせた。

「戴冠終了~」

バルハルトが流石にやめろと言いながら自分も同じように儀礼用のマントと上着を脱ぎ身軽になった。
ロイスにバルハルトはマントと上着を渡すと、騎士団長の証である勲章をロイスの手に置いた。
何もないと思われた空間からディオスは自分の剣を取り出し、バルハルトにも剣を渡す。
儀礼用の剣をディオスとバルハルトはそれぞれの後継者に渡すと取り出した剣を腰のベルトに無造作に固定した。

「陛下…こんなのは…嫌なのですが…きちんとした形で王位は譲ってほしいです。」

ジークハルトの言葉にディオスは笑う。

「なに…冗談だ。預かっておいてくれ。受け取りに帰ってくるさ…ここでお前にいかせるほど情けない大人になりたくないという俺の我がままだ。それに落ちたのは、俺の妻だからな。俺が助けに行くとは当然だろう?」

ひらひらと片手をあげて軽く振るとディオスは穴の下を眺めて少し考える。

「しかし…初冒険で最強クラスの魔物とか…運が悪いというか…良いというか…でもまぁ…あの子には良いこともあるだろうな。」

ふふとディオスは笑う。
バルハルトが首を傾げた。
ラスティが落ちたというのに取り乱していないディオスを不思議に思ったのだ。
ディオスは、ディーで見えているからなと苦笑した。

「ああ…そうだ……。」

ディオスは、少し間をあけて考えているようだった。

「バル…養子を迎えるつもりはあるか?」

バルハルトは、は?と首をかしげてから、穴をみた。

「伝説級なら良い核になるだろうなって思うんだよなぁ。」

ディオスの言葉に彼から事情は聴いていたバルハルトは、顔を引きつらせる。
自分のパートナーとディオスが相談していたことを思い出したのだ。
ラスティの中の別の人格の話を。
ディオスはラスティの望みをかなえたいとは思っていた。
そのことをジェンに相談していたのだ。
伝説級の魔物、この洞窟の魔石の大元の核が手に入れば使い魔の器など何にでもできるだろう。
使い魔ではなく、人の体に限りなく近い体も作れるはずだ。
そもそも、伝説級の魔物の核の力はすさまじい。
大陸一つ吹き飛ばすのも造作ないだろう。
それだけの力で使い魔を作ろうなどするのは常識外だが、とバルハルトは、思いながらディオスを見る。
結論は、こいつならやるかとそこで考えるのをやめた。
それから、少し考えて不服そうにこちらを見ているジークハルトを見る。

「いや…俺はいいが…たぶんお前が考えていることが…成ったとしたら…養子は…難しいかもしれん。」

ディオスは、おや?と首をかしげる。

「ラスティの時は、欲しい欲しいと言っていたのに?」

バルハルトは、ため息をつく。

「わかっているだろう。俺だってあれの親だ。あいつの愛情の種類くらいあいつ以上にわかるさ。例え、ラスティをあいつが嫁にしたって孫が見れない。あいつはラスティに手が出せない。大切にしすぎてな。けど…お前が考えていることが成ったら…可能性があると思う。だから…勝手な言い分だが…孫が見れるようにしてくれ。養子先は…そうだな…トリスティの件があるから宰相を脅せばいいだろう?実際はうちで面倒みてもいいが。」

ディオスは、眉を寄せた。

「子供か…まぁ…たぶん行けると思うが…そう簡単にいくか?頑固だろう?」

バルハルトは、頷く。

「あれの愛情は俺も引くほど強いからな。あれが子供の時は見誤っていたが…多少心配だが…たぶんそうなるとは思う。複雑ではあるんだが…なんであんなにややこしい奴になったのか…」

頭を悩ませるバルハルトを多少引きつった笑顔で慰めつつディオスはちらりとジークハルトを見る。

「はぁ…まぁ頑張るか。楽しみも増えそうだ。けど、引き取るのはうちだ。ラスティと引き離すつもりはないよ。そういうことだから、バルハルトも協力してくれ。ただ…ロイスも黙っていないだろう?」

バルハルトは、そうだなとジークハルトとロイスをみてにやりと笑う。

「万が一を考えて暗くなるな。お土産期待して待っていろ。最近鬱屈が溜まっていたからな。発散してくる。」

バルハルトは、普段は見せない好戦的な表情でそう言うと穴に飛び降りる。

「はぁ…まずいなぁ~私の出る幕あるのかなぁ~」

ディオスはそういうとジークハルトに向けて少し意地悪く笑ってから穴に飛び降りた。
その後ろ姿をリオンは半ば呆れて見つめていた。
不安そうなジークハルトに、リオンはため息をつつ促した。

「一旦、外に出て疲れて帰ってくるだろう皆さんを迎える準備をした方がいいと思いますよ。」

ジークハルトがリオンを睨む。
だが、リオンは呆れたようにジークハルトを見返した。

「信じないのですか?僕は信じますよ。陛下とバルハルトはお土産を持って多少ケガしても笑って帰ってくると。」

それから呆れたようにため息をつく。

「転んでも、ただは起きないのがラスティの怖いところだよなぁ…」
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