不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

185 水の妖精

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陛下と話してからアスの所に戻るとジークハルトに支えられながら歩行の練習をしていた。
強化魔法はジークハルトが禁止したらしい。
手っ取り早い方法を見つけたと感じていたアスは、不満そうだが僕もそれに賛成した。
アスの場合は魔法を多く使えば、存在が危ぶまれるのだからジークハルトの言い分も仕方ないだろう。
が、僕から見てもジークハルトの過保護が増しているように思う。
マールはどこか安心したように苦笑している。
実の所、ジークハルトの将来に多少不安はあったのだ。
まぁ、ジークハルトはロイスといい感じに僕からは見えるのだけれど、いろいろあるのだろう。
2人とも一線を引いているようだった。
友人と言い張っている彼らに僕からは何もいう事はない。
とにかく、ジークハルトはどうやらアスが気に入ったらしいと感じる。
もともと、ジークハルトはか弱そうなものに弱い。
守りたくて仕方ないのだろう。
なら、陛下はと思うのだが、陛下は一見弱そうにみえ…ない。
ジークハルトのこのみの範囲がわからなくなった。
うぬぅ考えているとマールがため息をついた。

「陛下も言っていましたよね。この世界はおかしいのです。」

僕はそうだったねと頷く。
教会の神の所為らしく僕らの言動は多少操られている。
完全に操られているものもいるらしいけども。

「私たちの認識と言うか考え方の方向はどうやら教会にいる神が世界をあやつっているようだからねぇ。」

そう陛下が先ほど不快そうに言っていた。
僕としてはそうだろうかと思うけれど。
どうやら、僕の言動は結構おかしいらしい。
生来のモノだと思いたくないが。
陛下はアスが自分たちの傍に来た時から違和感を感じていたらしい。
色々忘れていたり行こうと思った方向とは別の動きになっていたりしていたように思うとのこと。
こうしようと思っていたのに突然やっていなかったり。
だと思っていた思考が突如消えたりするのだという。
意識はなかったが僕もそうだとアスの傍に居ると思い出すことがある。

「ジークハルトとロイスもそうだと?」

マールはそうかもしれませんと言う。

「あのお二人は…僕から見たら親友です。どちらかというと…ライバルともいえます。仲はいいですけど…恋愛感情は無いと思います。でもラスティ様は頑なに恋人のようだという。陛下も少しそう思っているように思えます。」

でもそのくらいの考えの違いは…人によってあること…と僕も気にしていませんでしたとマールは言う。

「リオンが王城に魔法陣を埋め込んでいたり、ラスティ様の中にアスのやどる器を作ったのも僕には違和感しかない
。陛下がそんな危険なことを許したのも疑問ですし…おそらくはアスが守ってくれなかったら…疑似人格の器に入り込んでいなかったら違う結果になっていたのではとすら感じます。」

そもそもそんなことを笑って受け入れているのもおかしいのですよとマールは眉を寄せた。
地下に居るとそんな考えになるという。
ならば、地下の…例えば竜に操られているのか。
竜は人の心も簡単に読むのだから。
そうマールは考えたらしいが、それも違和感があった。

「僕としては…ここに居る時の思考の方が僕らしく感じます。それに…竜は…エレムルスは…そんなことをしないと思いますし。」

全てを操られているわけではないだろうとマールは言う。
ただ、方向性が決められている。
選択肢を消えられているように感じると。

おそらくはゲームの世界の模倣。
この世界には、決められたストーリーがあってそれが陽の欠片のストーリーは破滅のものばかりだという事だ。

「アスは…魔石を残すことで抵抗したという事なのかな。」

アスは魔石に陰の欠片の記憶のバックアップを残していたらしい。
現状のまま戻ったら天の欠片に、陽の欠片のやってきたことが報告できるように。

ただ、アスは戻ってみて改めて周りの人たちの状態を見て、天の欠片の怖さを感じ取ったと言っていた。
アスがそのようなことをしなくとも…天の欠片は手を打っていた。
本来は星の欠片の目であったはずの僕の目はいつの間にか天の欠片の目になっていたようだ。

星の欠片は罰が下ったのだなという事をアスはノルンを見て感じたという。
その罰は、僕が考えているモノより重いらしい。
アスが言うにはノルンに星の欠片の一部を感じるのだという。

僕らが子供というアスたちの本体は、欠片なのだという。
昔は大きな一つだった。
けれど、その大きなものはいろいろな衝撃を受け、一つに保てなくなって砕け散った。
まさしく欠片になったのだという。
そしてその存在は砕ける可能性がある。
砕かれる可能性がある。
砕かれるという事は、最大の罪を犯した時だという。

アスは、聖者に滅ぼされた時にひとかけらを落としたっという。
たぶんその小さな欠片が僕だという。
そのために、僕の中に潜り込むという事が出来たのだと。
だが、自分から離れた僕はすでに別の存在で、神の力を持つほどの大きさではない。
僕が神の力を持っているのはそのためだろう。
王族は、エレムルスが王の欠片と呼んだ陛下の中にある欠片が影響して神力を持つ者が生まれるのだという。

「難し事はおいておいて…結局僕はどうしたらいいのだろう。」

教会との戦いにはついていきたい。
行かねばならないと思う。
けれど…役に立てないとも思う。

ため息をつく僕に、アスが首をかしげた。

「ちちうえ、こまってるな。」

僕が父上なんだねぇと思いながらアスを見るとアスは、少し考えて何か唱えた。
ふわりとライラックが現れた。

「なぁに?主様」

にっこりと笑う彼女をジークハルトは興味深そうに見ている。

「うふふ…地上には男性しかいないものね。めずらしい?しかたないわ。地上では、私たちは死んでしまうの。主が地上を納めらた…私たちも外に出れるかしら?」

彼女の問いにアスは目を細める。

「陽のルールがはなくなるから…。ライラック…きみにたたかってほしい。」

ライラックは首をかしげる。

「私は戦えないわよ。回復と…そうねぇ…水を多少あやつれるけど。」

アスは、頷く。

「それ…。」

ライラックは、少し考えて苦笑する。

「あらあらあら…怖いことを考えるのね。でも…可能よ。。」

僕は首をかしげる。
アスは、もどかし気に僕を見た。
ジークハルトが、考えていたがそうかと頷く。

「…場所は…教会の地下だと大まかな場所しかわからないが…行けるのか?」

ええと水の妖精は優雅に微笑む。

「教会の地下を泥水で満たして陽の灯りを閉ざすくらいは出来るわ。最悪…地下だけ地盤を緩めて地下室をうめることになってしまうけれど。あの子は物理攻撃を警戒しているみたいだけど。水のことは考えていないでしょう。地下のことはあまり分かっていなのだから。あるのよ。教会の地下には地下水脈が。」

うふふと水の妖精王は妖艶に笑った。
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