不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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第六章 運命の一年間

192 突入

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準備は簡単に終わる。
時間もなかったし、僕とマールの準備は軽い剣と大量の魔石だ。
魔石は、アクセサリーとしてつけたり予備はポケットにいれたり。
僕らが準備している間に妖精たちが祝福と言う名の強化魔法をかけ続けてくれた。
どうやらこの魔法は数日持つようだ。
教会の地図を子供程度の大きさの妖精が渡してくれた。
少し古いモノらしいけれど、妖精たちが言うにはそこまで変わってないという。
ノルンとマールがその地図を確認して、使えると頷いた。
僕らは講堂に転移したらそこにある地下への扉から地下に入ることにした。
竜とアスの感覚では、陽の欠片とリオン達は地下室にいるようだ。

「…罠かな。」

僕の言葉に罠だろうねとアスは頷く。
竜と妖精が教会の近くの地下に妖精たちを待機させるという。
何かあったら彼らも加勢してくれるというがどうするつもりだろう。

「罠に負けないくらい強化するよ。」

そう言って妖精たちが集まってくる。

「つよくなぁれ~。」

そういいながら僕らは光の粒子を振りかけられた。
どのくらいかけられたかわからないくらい妖精たちは入れ替わり僕らの周りに光る粒子をかけ続けていた。
この光る粒子が彼らの祝福で、僕らの言う強化魔法らしい。
副作用としてあとで筋肉痛になるらしい。

後のことは後で考える。

想像はつくけど今は考えない。
ノルンのほうにも大量にかけてきたと妖精たちは可愛らしく笑っている。

「一人目が来たよ。」

陛下が戦闘に入ったようだ。
一人目の人が転移されてきたらしい。
妖精たちが一斉に通路の方へ行く。
陽気で無邪気な妖精たちの様子にその一人目の人はとんでもない目に合うのではと少し不安になる。
まぁ…命は取られないだろうから大丈夫だろう。

「陛下達は教会の近くまで行っているね。陛下の方に敵の戦力が動いているみたいだ。」

アスの言葉に時間が本当に無いなと頷く。
陛下は強い。
生かしたまま倒すという事で多少は手間取るかもしれないけれど。
そこまで時間は無いだろう。
アスは、ジークハルトと何か話していた。
ジークハルトは陛下より教会につくのは遅いだろう。

「ジークハルトが追いついたときに、決着がついていなかったらすごいピンチってことだね。」

そう、アスは笑った。
何かあった時の最後の一手。
そう言う立場になるだろうとアスは言う。
責任重大だとジークハルトは薄く笑う。
大量にアスに魔力を奪われたあとなので全力は出せないだろうと苦笑していた。

「転移したら…僕が教会の講堂の中の人たちを一気に昏倒させるね。たぶんそれでジークハルトにもらった魔力はおわっちゃうので…あとは…ラス…こほん…父上頑張って。」

わざわざ言い換えなくとも、と思いながらも頷く。
マールは少し考えてから、アスにいくつかの魔石を渡している。
魔力を補充できるものだ。
そこまで多くないが何かあった時にアスが逃げることのできるくらいの魔力にはなるだろう。

「…逃げ道を用意していないのは感心しない。」

マールはそういってアスの頬をむにむにとつねっている。
アスは、ごめんなさいと言いながらも少し楽しそうだ。
僕は、なんとなくマールの隣に立つをマールと同じようにアスの頬をむにっとつねる。

「なんで???」

困惑するアスには悪いが。

「…触り心地いいな…」

マールもですよねと頷く。
アスが本気で嫌がるまで二人でアスの頬を堪能していたら時間が無いと怒られた。
ノルンが呆れつつもロイスから離れてアスの傍にくる。

「もう!!!いくよぉ!!!」

半分怒ったようなアスの声と共に視界がゆがむ。
僕とマール、ノルンは次の瞬間には教会の講堂の真ん中に居た。

「!!!なんだと!!!こんなところに転移してくるとは!!」

わらわらと神官と神官騎士が集まろうとしている。
僕はアスを見た。

「はいはい~いきまーす。」

アスはそういうと手のひらに光を集めた。

「えーっと…うーんと…まぁいいか…どっかーん!!!」

アスは何か悩んでいたがそういうと光を破裂させた。
たぶん…技の名前とか考えていなかったという奴だろう。
講堂が光に満ちて収まった時には、周りにいた神官と神官騎士は倒れ伏している。
がたんと音がして扉が開く。
アスは、その扉に向かって光を飛ばす。
そして扉からなだれこんできた神官騎士たちも吹き飛ばす。
数度それを繰り返すとアスは、ぽてりと座り込んだ。

「あ~う…ここまーっでか~な?」

力尽きた、ということだろう。
へにゃへにゃになってしまったアスを僕は抱える。
思った以上にアスは軽かった。
アスを教会の机の上に座らせて体がおかしなところはないか確認する。
マールはアスに持たせていた魔石を発動させる。
ノルンはその間に地下へ行く扉を見つけて、僕達に手招きした。

「アス…」

ここに本当において行っていいのだろうか。
僕は一瞬悩む。
が外の少し離れたところから怒号が聞こえた。

「陛下…すぐそばまできているね…」

僕の言葉にマールは頷いた。
ノルンがアスに防護魔法をかける。

「アス…ここで待っていてくださいね。すぐに帰ってきますから。」

ノルンの言葉にアスは嬉しそうに頷いた。

「まってるんだよ。」

僕らは、手を振るアスを置いて地下の階段を駆け下りたのだった。

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