不遇王子は、何故かラスボス達に溺愛される。

神島 すけあ

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間話 陰の欠片

間話 人の恋路は… アスside

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皆で無事に王宮に帰れたけれど、バルハルト公とジェン公は早々に騎士団と魔術師団を動かすと言ってそれぞれ動き出していた。
街の騒ぎの鎮静化するのだという。
操られていた人たちは、糸の切れた操り人形のようにぱたりと倒れてしまったらしい。
騒ぎに今騒いでいるのは便乗した人たち。
一部の人たちだから、騎士団で十分だろう。
バルハルト公はそちらの指揮に行った。
ジェン公は倒れた人たちを助けるために魔術師たちを動かしている。
ラスティ達も薬などの準備で忙しくしている。
陛下は、他国の動向を確認するため辺境の領主たちと連絡を取りつつ国内の貴族たちの動向の確認。

皆が忙しそうにしている中。
僕は、地下に降りていた。
エレムルスとライラックの知恵を借りるためだ。

「というわけなの」

僕が陛下を煽った顛末を彼らに話すとエレムルスとライラックは微妙な顔をした。

「主よ…一つ言うが…人の恋路は放っておくものだ。」

エレムルスは困惑したように言う。
ライラックはあらあらと笑いながら少し考えてため息をつく。

「ねぇ、主様、貴方はこれから世界どうするつもり?」

僕は首をかしげる。

「地上の支配権も主様は得たのでしょう?いまのまま進めるの?それとも…かつての地下のようにするのかしら?」

ライラックは自分を指さす。
僕は、ライラックの言葉に眉をよせる。
地上の性別は単一だが、地下の性別は多様だった。
今は地下の住人は妖精たちと竜族が隠れるように暮らしている。
その性別は、女性、男性、両性などなど。
地下の住人は、人の姿を持つ者もいればエムレスのように知性のある人外の姿を持つ者もいる。
地上から見れば異形の世界と思われているのはその所為だろう。
魔物と地下の住人は微妙に違うのだが、地上の人間には同じものと思われている。
妖精たちや竜族たちはそもそも人族と交流を持つ必要がなかったため、お互い気にもしていなかったことだろう。

「うーん…」

陽の欠片の性質だとは思う。
地上を単一化したのは。
そもそも自分を神格化してしまっているのも陽の欠片の顕示欲だろう。
僕自身は、自分を神にする気もない。
陽の欠片の大半を天に返した今、力が残っている欠片は僕のみになる。
欠片の魂が4つもあるこの世界で、一番力の無い僕がこの世界を支えねばならない。
といっても破滅の運命を回避は出来たと思う。
だから、支えるといってもすることは殆ど無いだろう。
傷ついた世界を回復するために、アスの生の間は世界を支えるために活動はするだろうけど。
ここまで育った世界だ。
陽の欠片の妙な妨害が無くなった今、欠片の力がなくとも勝手に生きるだろうと思う。
同じ欠片の責任として、このアスの命のある間はケアをするつもりだけれど。
アスの命はたぶん、人のモノとは違うので魔力が尽きるか尽きないかできまる。
短命になるか長く生きるかは、魔力をどうするかということだけだ。
アスとして世界をどうこうする気はない。
ライラックの言いたいことはわかるが、すでにこの世界の命運は世界自身のものだ。
その世界の上の生命も、その世界の生きる流れに沿うようになるだろう。

「…ライラックは地上の森に暮らしたいと思っている?」

ライラックは少しためらった後、頷いた。

「地下が居心地の良いという子達もいるし…地上の空を飛びたいという子もいる…」

僕は頷く。

「…僕は…君たちを加護するためだけの存在ではなくなった。だから…地上に出て君たちが例えば鳥族の餌食になったとしても助けることは出来ないかもしれないよ。」

ライラックたち、羽のある妖精は鳥に虫と間違えられて食べられるかもしれない。
虫を食べる虫に食べられる可能性もある。
地上の食物連鎖に彼らも地上に出たら組み込まれるだろう。

「ダメという事かしら?」

僕は首を横に振る。

「冷たい言い方になるけれど…僕は君たちのこれからの生き方に何か道を示すことはできない。けれど、君たちが選ぶ道を祝福する。」

ライラックは、頷いた。

「地下でも私たちは隠れて住むような弱い種族よ。けれども代わりに魔力が豊富だわ。その魔力を得るために私たちを襲う者も多いでしょうね。でも…魔力での反撃も可能。大丈夫よ。優しい主様。貴方が私たちを守りたいけれど、守れなくなったという貴方の立場が変わったことくらい理解しているし、守ってほしいと思っているわけでもない。貴方が、私たちが地上に行っても問題ないなら私たちは自分たちで選択するわ。」

ライラックはそう微笑む。

僕は、頷く。
世界は緩やかに変わるだろう。
僕の、欠片としての役目も、もう終わる。

あとは…めでたしめでたしという結末だけだ。
もちろん世界は続くので、一区切りをつけたいだけなのだけれど。

僕の目指すめでたし、めでたし…は陛下とラスティが幸せに暮らしました…という結果だ。
あの二人を幸せにするという目標を立てたわけだから、どうしたらいいのか。

僕はライラックが複雑そうな表情をしているのに首を傾げた。

「ねぇ…主様、人の恋路も世界と一緒よ。くっつくときは放置しておけばいいの。どうしてもというなら…ラスティ様の背中だけ押せばいいわ。この場合は。あのヘタレ陛下は、好意を持っている子に押されたら簡単に落ちるわよ。」

僕は、そうかと頷く。
ライラックは、複雑そうな表情でため息をついた。

「…どちらかというと…心配なのは主様なのだけど……」

そうだなと、エレムルスにも大きくうなずかれた。

「よいか…主…騎士王子に気を付けるのだ…油断していると…食われるぞ?」

僕は、はて?と首をかしげたのだった。

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