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8 『仕事だから』の書
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口笛を吹きながら帰社する部下の千手を見掛け、調査院07支部の支部長は手招きした。
「千手~お疲れさん。随分とご機嫌じゃないの」
「お陰様でねぇ。もしかして支部長は不機嫌?あ、そか、あの日?…てかさ、いきなし殴るかなぁ!?ふつー」
「デリカシーの無い子は嫌いよ。ほら、来客よ。接客なさい」
珈琲を3つ用意しながらテーブルに誘う。
そこには判定士の女性がちょこんと座って資料をめくっていた。こちらに気付き、軽く会釈を返す。
緩く編んだ三つ編みがフワッと柔らかさを出すが本人の内面とは似合っていない。
「千手クン先日はどうもね♡」
「ども。あー先日って、送ってきた自白文を『召喚後の憂鬱』で片付けた召喚士様のことっすよね…弥勒(ミロク)ちゃん」
「そそ。でもって単刀直入に話すと、その召喚士クンを『幽閉監禁』するように仕向けたいよね~てことで誘いに来た♡」
は?何言ってんだ?
千手が呆気に取られていると、弥勒は「胡散臭いんだよ♡」一言添えながらバサっと資料を広げた。
「千手クンの調査を見ると、召喚士・加護の潜在能力『魔力・知力・賢さ・器用スキル』は人智を超えた異常値だった。それに加えて生い立ち!
『転生者』で優秀なのにも関わらず、世界に適応出来なかったとして世界基準から外され"勇者候補"も剥奪。
恐らくね、加護を召喚した召喚士は彼の前世を知っている。でもそれは黙秘。言えない何かがあったのだわ。
怪し過ぎるのに、他世界に追放されないし、剥奪者の就職先"奴隷"となって働いてもいないし何事もないように現在は世界が認める召喚士として"勇者候補"の育成をしてる。理解できないの。私の判定基準は黒なのにね、加護は」
千手は「あー、まー、そーよねー」流し聞きしながら資料をまとめて返す。
あの召喚士様は『あんたが世界にとって危険因子だから幽閉監禁しますよ』と話したら『わかった』と一言で了承しかねない。
させたくねぇのよ、そういう人だから。
「証拠の捏造はダメっす、弥勒ちゃん。だよねぇ支部長?」
豊満な胸を揺らし、支部長は別の資料を取り出す。今日の獲物となった"魔物の目玉"の分析結果だった。
「弥勒様の判断を黒にしたコレね、魔物でも下級の拾い物だったわよ。そう考えると使役された魔物かも。
深く考えたくないけれど"魔王候補"じゃないのか、と思える人智を超えた能力がある加護に接触を試みてる魔物が別にいるとか、ね?
証拠がないし調査も足りないから、たまたま加護の居る場所に居たってだけの小物だった可能性も否定できないけれど。
千手の言う通り、未調査からの証拠捏造はダメ!というより嫌い。仕向けないで欲しいわ、弥勒様」
「うわー多数決なんて酷い!もし加護を放置して世界が壊れたらどうするの?千手や支部長の無責任と命だけじゃ、どうしようもできない大事なんだよ♡」
口を尖らせながら弥勒は資料を抱えて席を立った。もう話は終わりということだ。
彼女の姿がオフィスから消えると、支部長は千手に寄り掛かる。
「世界がやばくなったら"勇者"が救ってくれるんだから大事には至らないと思わない?」
「ん~。そこまで至りたくないっつーか」
「そうよね。じゃ、これで仕事はお終い。千手のフォローもしてあげたんだから、お礼の一つくらいしなさいよ。疲れたから久しぶりに一緒に飲んで…寝たいわ」
艶めいた唇と豊満な胸は魅惑たっぷりに千手に迫る。千手はポリポリと頭を掻きながら溜息を吐いた。
「抱きたい男に抱かれたい心境なんす~オレ。浮気はちょっと避けたいっすね」
「つまらない男ね。外れない首輪でも見つけて意中の人を好きにしたら?」
支部長は潔く3つのカップを手に取ると給湯室に向かった。
「千手~お疲れさん。随分とご機嫌じゃないの」
「お陰様でねぇ。もしかして支部長は不機嫌?あ、そか、あの日?…てかさ、いきなし殴るかなぁ!?ふつー」
「デリカシーの無い子は嫌いよ。ほら、来客よ。接客なさい」
珈琲を3つ用意しながらテーブルに誘う。
そこには判定士の女性がちょこんと座って資料をめくっていた。こちらに気付き、軽く会釈を返す。
緩く編んだ三つ編みがフワッと柔らかさを出すが本人の内面とは似合っていない。
「千手クン先日はどうもね♡」
「ども。あー先日って、送ってきた自白文を『召喚後の憂鬱』で片付けた召喚士様のことっすよね…弥勒(ミロク)ちゃん」
「そそ。でもって単刀直入に話すと、その召喚士クンを『幽閉監禁』するように仕向けたいよね~てことで誘いに来た♡」
は?何言ってんだ?
千手が呆気に取られていると、弥勒は「胡散臭いんだよ♡」一言添えながらバサっと資料を広げた。
「千手クンの調査を見ると、召喚士・加護の潜在能力『魔力・知力・賢さ・器用スキル』は人智を超えた異常値だった。それに加えて生い立ち!
『転生者』で優秀なのにも関わらず、世界に適応出来なかったとして世界基準から外され"勇者候補"も剥奪。
恐らくね、加護を召喚した召喚士は彼の前世を知っている。でもそれは黙秘。言えない何かがあったのだわ。
怪し過ぎるのに、他世界に追放されないし、剥奪者の就職先"奴隷"となって働いてもいないし何事もないように現在は世界が認める召喚士として"勇者候補"の育成をしてる。理解できないの。私の判定基準は黒なのにね、加護は」
千手は「あー、まー、そーよねー」流し聞きしながら資料をまとめて返す。
あの召喚士様は『あんたが世界にとって危険因子だから幽閉監禁しますよ』と話したら『わかった』と一言で了承しかねない。
させたくねぇのよ、そういう人だから。
「証拠の捏造はダメっす、弥勒ちゃん。だよねぇ支部長?」
豊満な胸を揺らし、支部長は別の資料を取り出す。今日の獲物となった"魔物の目玉"の分析結果だった。
「弥勒様の判断を黒にしたコレね、魔物でも下級の拾い物だったわよ。そう考えると使役された魔物かも。
深く考えたくないけれど"魔王候補"じゃないのか、と思える人智を超えた能力がある加護に接触を試みてる魔物が別にいるとか、ね?
証拠がないし調査も足りないから、たまたま加護の居る場所に居たってだけの小物だった可能性も否定できないけれど。
千手の言う通り、未調査からの証拠捏造はダメ!というより嫌い。仕向けないで欲しいわ、弥勒様」
「うわー多数決なんて酷い!もし加護を放置して世界が壊れたらどうするの?千手や支部長の無責任と命だけじゃ、どうしようもできない大事なんだよ♡」
口を尖らせながら弥勒は資料を抱えて席を立った。もう話は終わりということだ。
彼女の姿がオフィスから消えると、支部長は千手に寄り掛かる。
「世界がやばくなったら"勇者"が救ってくれるんだから大事には至らないと思わない?」
「ん~。そこまで至りたくないっつーか」
「そうよね。じゃ、これで仕事はお終い。千手のフォローもしてあげたんだから、お礼の一つくらいしなさいよ。疲れたから久しぶりに一緒に飲んで…寝たいわ」
艶めいた唇と豊満な胸は魅惑たっぷりに千手に迫る。千手はポリポリと頭を掻きながら溜息を吐いた。
「抱きたい男に抱かれたい心境なんす~オレ。浮気はちょっと避けたいっすね」
「つまらない男ね。外れない首輪でも見つけて意中の人を好きにしたら?」
支部長は潔く3つのカップを手に取ると給湯室に向かった。
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