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「皆に公表しなければならない事実がある!」
 ストラディア国王が右手を挙げ真実の告白をするという意思表示をした。
「ここにいる二人の王子は、私の子では無い。」
 騒然となる会場。
「静かに!」
 アンジェリカの父、アローズ公爵が声をあげた。
「陛下、公の場で陛下自ら話される事ではございません。」
「いや、全ての責任は私にある。王子達のせいではないからだ。」
 レナードが、
「父上、どういう事です。私はともかく、ミシェルは父上の子ではないですか!」
 やはりレナードは知っていたのか。
 知ってしまったから自分が排除される事を望んだのだ。
「私は子が成せない体だったと判明した。」
 僕が帝国から医師を呼び寄せ診察させた。
 ストラディアではまだ科学的医療は発達していないから不妊の診断は出来なかった。
 また会場がざわつく。
「レナード、お前の母はクレッセン子爵の妻になるはずだった。クレッセン子爵の子を身籠っている事を確認した上で側妃に迎え入れた。
 つまり、私に子が出来ないかもしれないと、その時からわかっていたのだ。
 そしてお前を私の子と偽って育てることにしたのだ。」
 それを聞いてレナードは、
「やはり、そうでしたか。
 私は、自分の産まれた日と母が側妃として上がった日が合わないと気がつき、調べたのです。母がクレッセン子爵と懇意に付き合っていた事を。」
「お前の母にはすまない事をした。
 好いた男と別れ離れにさせた上に、ミシェルが産まれた事によって、お前を第一王子と偽って育てるという重荷に耐えられなかったのだろう。あんな事になってしまって。」
「今更どうしようもない事です。
 陛下が母を大切にしてくださっていたことは存じておりますから。」
「いや、まだ隠している事があるのだ。
 その事を知らせていれば、あるいはこのような不幸はおこらなかったかもしれない。
 クレッセン子爵を。」
 隅のほうに控えていた子爵が前に歩み出る。
 あまりレナードとは似ていない。
 しかし、陛下とレナードはよく似ている。
 陛下は子爵の手を取り、
「エドガー…すまなかった。」
 エドガー・クレッセン子爵はただ首を横に振った。
「皆、聞くがいい。このエドガーは産まれてすぐに養子に出した私の子だ。
 つまり第一王子だ。」
 陛下は10代の頃、侍女に手を出し妊娠させてしまった。しかし、それは秘密裏に処理された。
 その後、21歳の時に大病を患いそれが原因で子供が出来ない体になってしまったのだ。
 つまりレナードは王孫という事になる。
「そんな…そんな、なら僕はどうなるんだ!」
 ミシェルが悲痛に叫ぶ。
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