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    レナード視点

 翌朝、二人はずいぶんと遅くまで寝ておられるが、侍女達は怖がって様子を見に行く事もできない。
 ノックをしても返事がない。
 ドアを開けて様子を見るとアーサー殿下は体を少しおこし、眠っているジュリアスを見つめていた。
「おはようございます。
 お目覚めでしたか。返事がございませんでしたので心配になり失礼いたしました。
 ジュリアスは大丈夫でしょうか?」
「ああ、もう目覚めてもよいはずだ。
 もう少し堪能していたかったのに。」
 確かに寝ているジュリアスは可愛らしいが、その姿を兄が身体を密着させて眺めているのは少し異常ではないだろうか?
 ジュリアスは話し声に気がついたようで、
「うぅ~ん…レナードぉ。」
 !
 アーサー殿下の胸に顔をうずめて抱きついた。
「もっとぉ…。」
 何を?
 殿下の顔が怖くて見れないのですが。
「貴様ら、まさか一緒に寝ていたわけではあるまいな?」
 違うとも言い難い。
「その…ジュリアス殿下は朝が苦手のご様子で何度か起こして差し上げておりましたので…。」
 ジュリアスはなにやらスンスンと匂いを嗅いでいるが、
「あれ?兄上?」
 目が覚めたようだ。
「おはよう、ジュリアス。」
 うわ…先ほどまでとはうって変わった笑顔。
「兄上ぇ~お会いしたかったです。」
 これは見ていてもいいものだろうか?
 帝国の部屋着は前を合わせて羽織り、腰を紐で結んだだけのものなので、アーサー殿下の胸ははだけているし、ジュリアスにいたっては両肩がずり落ちてほぼ裸だ。
 ジュリアスは俺に背を向けているので俺がいる事に気付いていないのか、アーサー殿下に抱きついて、
「兄上ぇ~ぎゅぅ~ってしてぇ~。」
「困った子だな。」
 アーサー殿下は意地の悪そうな笑みを浮かべ俺を見ながらジュリアスを抱きしめ、艶かしい白い背中をいやらしく撫でる。
「は…ぁん、くすぐったい。」
「かわいいな。
 だが血が足りないようだ、毎朝元気だったのに。」
「や…あっ、そこは触っちゃダメ…ん。」
 この兄弟はこれが日常なのか?
 いたたまらず声をかけた。
「あー…ジュリアス?」
 ビクッとなりゆっくりと振り向く。
「レナード…いつからそこに?」
「わりと前から。」
 アーサー殿下が笑だす。
「もうっ、兄上!」
 あんな事があったのに、いつの間にか朝の寝ぼけ声がアーサー殿下から自分の名前に代わっていた事に気づき、嬉しくなってしまった。
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