海辺で拾った宇宙人

あさいゆめ

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 実家の海辺の村は夜になるとまるで人気がない。
 実家といってももう誰も住む人もいないのだけど、時々風を通しに帰ってくる。
 週末の仕事帰りにそのまま実家に向かう。
 車を走らせていると、
(あっ!火球!)
 これは近い。
 もしかしたら隕石拾えるかも!
 海に向かって急ぐ。
 浜辺に降りてみるが当然真っ暗で何も見えない。
 海に落ちちゃったかな。
 夜の海はなんだか怖い。
 帰ろう。
『…テ…タ…ケテ…。』
 …。
 なんか…聞こえてはいけない声を聞いてしまった?
『タスケテ…。』
 ひいぃぃぃっ!
 びちゃっ、びちゃっと海から何かが這い出てくる音。
 見ちゃいけない!
 見ちゃいけないのに!
 俺、ホラー映画で一番最初に殺られる奴やん!
 ぐぎぎぎっという音が聞こえるかのように首を後ろにまわす。
 あれ?
 何もいない。
 足に冷たい感触!
「ギャーーー!」
 何?
 何これ?
 スライム?
 どろどろとした正体不明のものが足にへばりついている。
『タスケテ、ミズ、イル、シヌ。』
 頭に直接話しかけているその声はとても必死で俺まで苦しくなる。
 バッグにあったミネラルウォーターをかけてあげようとしたら、シュッと触手みたいのが伸びてペットボトルを奪われた。
「あのー、もう行っていいかな?」
 関わりあいになっちゃいけないお方よね。
 うん、夢でもみた事に、
『タリナイ、シヌ。』
「ちょっと待ってて!」
 車に走った。
 実家はもう水道も止めてあるから水はいっぱい持ってきてた。
 2リットルボトルを2つ。
 それも取り上げられると上手にキャップを外して飲んだ(?)。
「じゃ、じゃあ今度こそ行くね。」
 と、言うとぐにゃぐにゃと形を変えて俺の顔になった。
「ギャーーー!」
「ありがとう。」
「ありがとうじゃないよ!怖いから!」
 砂浜の上に俺の首だけ。
 こんなん明日の朝に誰かが見つけたら大騒ぎだよ。
「あんた何者?」
「うちゅうじん。」
「侵略に来たん?」
「ちがう、いみん。」
「そんな話聞いたことないけど、外務省通してんの?」
「ナイショ。」
「じゃあ、達者でな。」
「おいていく?」
「うち、ペット禁止だから。」
「…。」
「じゃあな。」
「…。」
「…。」
「…クスン。」
「あーもー、あんたその顔だけはやめて!」
 どろっと、最初のスライムに戻った。
『イッショ、イク。』
 ああ、口が無いとしゃべれないのか。
 変なの拾っちゃったなー。
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