海辺で拾った宇宙人

あさいゆめ

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 とりあえず首だけは怖いのでミニチュアの俺になってもらった。
 我ながらかわいくもなんともない。
 28歳の俺はごく普通のサラリーマン。
 地味めで彼女もいない。
 実家に着き、テーブルの上に乗せる。
 どこから来たのか聞いたところで宇宙に詳しくも無い俺にはわからないだろう。
「名前は?」
「-ΨΙιθεΦΠ」
「わかりません。」
「ペットだからおまえつけていい。」
「んー水?アクア?オウ?オウでいいか。」
「いい。おまえは?」
「斗真。」
「トーマ。」
「YOUは何しに地球へ?」
「いきるため。」
 片言で教えてくれたのは自分の星は高度な文明が発達したが、生きるために必要な水が少なくなってしまい、カプセルに入れられ他の星へ飛ばされるのだと。
 飛ばされる前にその星の事はある程度勉強して何になるかも決めてから。
「何になるつもりだったん?」
「カエル。」
 なるべく小さな物になって一人で目立たなく生きていくのだと。
「何年くらい生きるの?」
「わからない、なにかにつぶされたらすぐなくなるし、しずかにしてたらずっと。」
「孤独だな。」
「だからトーマといたい。」
 本当は誰にもみつからないように陸地に落ちてすぐにカエルになる予定だった。
 だけど何故か海に落ちてしまった。
 元の大きさは1㎝にも満たない核で水分で大きさを変えられるのだと。
 陸地にたどり着くには大きくなるしかなかった。
 それで身体に合わない海水を取り込んで死にそうになっていたのだと。
「トーマいなかったらしんだ。」
 なんとも不思議な生き物だけど危害を加えられる感じはしなかった。
 頭に直接話しかけられた時に感情も一緒に感じられたからだろう。
 俺は自分の部屋で寝たがオウは家の中が珍しいらしくうろうろしていた。
  
 次の朝。
 裸の男の腕の中で目覚めた。
「うっっわ!何?誰っ?」
 ってか、俺じゃね?
 俺も裸だし!
「トーマきのうとちがう?」
 股間を見比べる。
 朝だからな、うん。
「なんででかくなってんだ?」
「アメふったから。」
「なんで裸にされてんだ?」
「トーマとおなじ。」
 つまり隅々まで再現したってことだな。
 おい、何勃起させてんだよ?
「おなじ。」
「同じじゃねーよ!そんなんじゃ連れていけねーぞ。」
 ショックを受けた顔。表情も作れるのか。
「せめて違う人になれ。」
 部屋にあった雑誌をめくる。
 名前は知らないけれどハーフっぽいモデルが目についた。
 同居するならムサイ男よりきれいなほうがいい。
 まったく同じだと問題がおこるかも知れないから、少し変える。頭でイメージした感じがそのまま伝わるから便利。
 おお、理想のイケメン。
 …。
「もしかして女にもなれた?」
「なれた。」
「チェンジで。」
「せいこういしたい?」
「ばっ、なっ、スライム相手にそんな事っ!」
「どれにする?」
 漫画雑誌の表紙のグラビアを並べる。
「いいっ、そのままでけっこうです!」
 こいつ、きっと頭の中のエロいイメージも読みやがったな。
「お前、頭の中読むのやめれる?」
「できる。」
「じゃあ、今後いっさい読むの禁止な。」
「…わかった。」
 その間は気になるが。
 
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