海辺で拾った宇宙人

あさいゆめ

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 実家には2、3カ月に一度風を通しにいく。
 オウを拾って2カ月たった。
 今までは仕事終わりにそのまま向かい、夜に着いていたが、オウがいるので休日の朝から向かう。
「デートだね。」
「実家に帰るだけだ。」
 海辺にある実家までは車で三時間。
 過疎化が進み、実家のまわりも空き家が目立つ。
 窓を開けて軽く掃除する。
 泊まらず帰ると滞在時間は1時間ほどだ。
 もう手離したほうが楽なのだろうけど、祖父母と両親の位牌がある仏壇があるのでそのままにしてある。
 線香をあげて手を合わせる。
 オウもわかっているのか知らないが手を合わせる。
 帰りに海によってみる。
 オウを拾った場所。
「お前の仲間は地球にいるのか?」
「いる。」
「会ったりしないのか?」
「しない。」
「本当にただ飛ばされるだけなんだな。」
「うん。」
「お前の種族って本当に知能高いの?」
「俺は低い。」
「え?」
「高いのはαだけ。飛ばされるのはβ。」
「じゃあ捨てられたのか?」
「違う。αはいずれ星とともに滅ぶのを選んだ。あと千数百年後。αが他の星へ行くことはその星を侵略することになるから。」
「優しくて悲しいな。」
「俺達は思念を読むから嘘がつけない。だから皆が優しくないと生存出来なかった。」
 辺りが薄暗くなるまでただ海を見ていた。
「帰るか。」
「うん。…トーマ。」
「なんだ?」
「帰る家があるっていいな。」
 あんなアパートでも帰る家か。
「いつか、歳をとったらまたあの家で暮らそうと思っているんだ。」
「トーマ、プロポーズする?」
「しない。」
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