上 下
2 / 71

2

しおりを挟む
「おきろ。」
「嫌だ、やっと楽になったのに。」
 本当に起きたくなかった。
 身体中の痛みは無く、フワフワとした雲の上で寝てるみたいに気持ちいい。
 もう何も考えるのも嫌だったし、思い出すのも嫌だった。
 そんなあたしに話しかけるのは白い服を着た、なんか全体にモヤッとした感じの人。
「…お願いします、起きて下さい。」
「もー、何?神様かなんか?」
「そのとおりです。」
「ふーん、あんたの為に祈れって言われてたけど、あたしはもう祈らないから。祈って何になるんだっての。つか、死んじゃったから祈れないけどね。へっへーんだ。」
「あなた方聖女に祈ってもらわないと、私は存在できないのです。中でもあなたはとても強い神聖力を持っていたのに。」
「なら加護とかなんかで守ってくれたら良かったじゃない。」
「人間界には干渉できないのです。」
「ほんと神様なんかなんの役にもたたないよね。」
「…もう一度、最初からやり直すチャンスを差し上げましょう。」
「産まれ直すってこと?
 それにあたってのスペシャル特典は?
 やり直せって言うんなら今度は成功者にならなきゃ意味ないじゃない。
 また同じ事の繰り返しであんな最後じゃ報われないわ。
 あんた、あたしがどんだけ痛かったかわかる?
 処女でケツまで犯されてさ、首絞めながら射精ってどんだけあいつら変態よ?
 あいつら全員見つけ出してケツから腕ぶちこんで奥歯ガタガタ言わせたらんと、気がすまないんだけど?」
「えーと…お前、聖女で合ってる?」
「知らんがな、あんたが聖女の証っての背中に付けたんでしょ?」
「まあ特典って言うか、ヴァイオレットがなぜ優位に事を進められたかは教えてやれるし、同じ条件でスタートさせてやることも出来る。
 ヴァイオレットはこの世界の筋書きを知っていたんだ。
 最近、悪役令嬢がヒロイン気取ってザマァっての?そういうのでご満悦してるパターンが多くてな、お前みたいに正規のヒロインがひねくれるんだよな。
 だからお前にも筋書きを、」
「ちょっと待て、自慢じゃないがあたしは頭が悪いんだよ。
 筋書き教えられたって思い出せなきゃ意味ないじゃん。」
「あー…そうだったな。
 仕方ない、記憶を引き出す能力を授けよう。
 見た事、聞いた事は全て思いだす事ができる。」
「ありがとう。
 それならお礼に毎日祈るわ。」
「それなら神聖力をアップしておこう。
 お前の祈りが強ければ私の力も強まるからな。」
「なんかやる気でてきたわ。」
「ではそういう事でお願いします。」
 そっかーやり直しできるんだ。
 またエディに会えるんだ。
 今度はちゃんとエディが幸せになれるよう頑張ろうっ!
しおりを挟む

処理中です...