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 ヴァイオレットとその取り巻き達に囲まれてしまった。
「私…そんなつもりじゃないんです。」
 以前のあたしならにらみ返して蹴りの一つでも入れて逃げるんだけど、今はしとやかな令嬢だから。
「じゃあどういうおつもり?」
「目の見えない、卑しい母親が侯爵の同情で結婚してもらったんですってね。」
「あなたもあの方々に取り入る事が出来るとでも思っていらっしゃるんでしょう?」
 取り巻き達が口々に罵る。
 ひどい。あたしの事はいいけど、母さんの事まで。
 だけど、がまんしなきゃ。
 この人達はれっきとした令嬢なんだもん。
 あたしみたいなついこの間ラッキーで令嬢にしてもらった娘とは違うんだ。
「あの…ごめんなさい。すぐに立ち去りますから。」
「その必要は無い。」
「兄様。」
 兄様がいつの間にかすぐそこに立っていた。
「まっ、まあっ!サミュエル様っ!」
「サミュエル様。」
 さっきまで鬼の形相だった令嬢達が頬をそめる。
「僕の妹に何をしているのかな?」
「いっ、妹だなんて!ご迷惑していらっしゃるとお聞きいたしましたわ。」
「そうですわ、図々しく侯爵家に転がり込んだ連れ子だと。」
 そっか、世間ではそんなふうに見られていたんだ。
「誰がそんな事を?ヴァイオレット?」
「どうして私なんですのっ!?」
 初めて口を開いた。
「残念ながら僕は死ななかったよ。」
 他の令嬢が何の事?と囁く。
「そ、そのようですわね。」
「ブランシェール侯爵家が気に入らないからと言って、妹をいじめているのかと思ってね。」
「そうではありませんわ!はしたなく覗き見していらっしゃるから注意しておりましたのよ。」
「僕に用があったけど、他の人がいて恥ずかしかったんだよ。サラは奥ゆかしい娘だから。」
 兄様はあたし贔屓が激しい。
「サラ、おいで。」
 手を引いて後ろに庇う。
 令嬢達が逃げるように立ち去る。
 ヴァイオレットは、
「あの時は、悪かったわ。
 助からないって話だったから。
 だからって根に持たないで下さらない?エドウィン王子に変な事吹き込まないて下さいませ!」
 自業自得だよ。
「君のほうこそ、サラに何かしたら許さないよ?」
 兄様、好きっ!
 誰かに守ってもらえるなんて。こんなの経験ないからぽーってなっちゃうよ。
「兄様ぁ!」
「ああ、怖かったね。」
 頭をなでなでしてくれた。
「なんでこんな遠くから見てたの?」
「…見てないもん。(汗)」
「エドウィン王子を見ていたんだろう?」
「見てないっ!通りすがりだもん!急いでいるからもう行く!助けてくれてありがとう!バイバイっ!」
 あああああっ!ばれてるっ!兄様にはばれてるっ!
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