戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 長かった魔族との戦が終わった。
 聖女であるわたくしの隣には常に共に戦かい、守ってくれた男性がいた。
 この勝利を称える凱旋パレードでもそれは変わらず、隣で優しく微笑みわたくしを見つめる。
「セレスティーナ…その…落ち着いたら俺の故郷へ来ないか?何も無い所だが、美しい湖と森に囲まれた静かな城で戦とは関わり無い暮らしをしないか?」
 無骨な彼が頬を染め照れ臭そうに言った。
 聖女とはいえ、平民出のわたくしが公爵である彼、アレクシオン・テス・セナ・アンカレナ様とは不釣り合いだわ。
 そんなことはわかっている。
 でもわたくしの心はもう決まっていた。
 こみ上げる感情が涙となって溢れ出る。
 そんなわたくしだけを優しく見つめる銀の瞳。
 その瞳にいつまでもわたくしを映して欲しい。
 ああ、この幸せが続く事を願い、あなたとこの国の為に祈りましょう。
  
   聖女セレスティーナの祝福を





 はぁ…お気に入りのネット小説が完結した。
 素人作家さんの投稿作品だからか、かなりのご都合主義な小説だったけど、やっぱヒロインは強くてカッコいいヒーローに守られて最後はハッピーエンドって話は安心して読めるわ。
 って、のんびりしてる場合じゃないのよね。
 明日は念願だった私のお店のオープン。
 小さい頃からカワイイ物が大好きだった。
 まわりの子からは似合わないとか流行りじゃないのに変だとか散々バカにされたけど、それでも好きな物にだけ囲まれて生きていきたいと願って学生時代からコツコツお金を貯めてやっとオープンにまでこぎつけた。
 私のカフェ兼手作り雑貨販売のお店。
 正直、お茶の味の違いなんかまだわかんないけど、入れ方はめちゃめちゃ勉強したから大丈夫!
 昔はちょっと変わった好みって言われたけど、今じゃインスタとかで個性的っていわれて一部のファンもいる。
 手作りのぬいぐるみや小物に囲まれた私のお城。実際、ネットでの個人販売でもかなりの売上を得てるし。
 私がカワイイって思う物を他の人もカワイイって共感してくれるのが何より嬉しい。
 山あいにある開発中の別荘地のはずれに建てたけど、一昨日からずっと雨。お客さんは来てくれるかな?
 それに昨日から時々聞こえる音…何の音かな?
 不安になって窓の外に目を向けた時だった、ものすごい轟音と共に目の前に大量の土砂が!瞬時に悟った。

 死んだな。

 神様、いるんならあんまりじゃない?
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