戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 この世界で目覚めてから20日たった。
 傷もすっかりふさがり、毒の後遺症も薄れて庭を散歩できるまでに回復した。
 歩いてみて改めて…公爵邸広っ!なんのテーマパークよ?しかもここは帝国首都の別邸で領地の本邸はもっと広いんだって?んで別邸はここの他に4つあるらしい。
 どんだけ金持ちよ?
 ちょっとにやけるわー。
「シオン様!」
 あ、テリオス君だ。
 テリオス君や執事のウォルシュさんにもシオンって呼んでもらうことにした。
 何となく以前のアレクシオンとは違うと認識しやすい気がするから。
「お一人で出歩かないでください。また迷子になりますよ!」
 うん、実は迷ってた。
「だ、大丈夫だよ。まったく過保護なんだから。」
 助かったけど。
「あっ、そうだ。私魔法使えたよ!」
 実は一人でこっそり実演してみてた。
 だって誰かに見られるの恥ずかしいじゃない。
 出来る気満開でカッコいいポーズ決めて何も起こらなかったら。中2かよって。
「見て見て~。」
 両手を広げ風が起こるイメージしてみる。
 満開で散りぎわをむかえようとしていた薔薇の花びらが宙に舞い、ゆっくりと円を描くように二人を囲む。うーん、花吹雪と乱れたプラチナブロンドの美青年。美しい。
「これは…なんて…。」
 ふふん。どーよ?
「魔法の無駄使い…。」
 え?
 ぽとぽとと地面に落ちる花びら達…。
「あっ、いえ、素晴らしいです。」
「…慰めなくていいです。」
 きっとこんなのたいしたこと無かったんだ。
 帰ろう。
「待って下さい。」
 腕を捕まれ引き止められる。
「そっちは裏門です。邸は反対側です。」
 ふんだ。
「あの、本当に美しくて素晴らしかったです。
 あんなふうに風魔法を使うのは見たことありませんでしたから。
 他の魔法と違って風は攻撃や破壊にしか使えないと思っていましたから。」
 なるほどね。
 アレクシオンに限らず大剣を扱うには風属性の強い魔法が必要らしい。
 テリオス君は長剣を使う。
 侯爵家の三男の生まれで騎士の位を持つ。
 幼少期より剣と武術を嗜み、天才剣士と呼ばれている。
 先の戦でも貢献したのだからもっといい職に就いて出世したほうがいいと言っているのだけど、私の従者にしてほしいとここにいる。
 世話になったからだと思うけど、それは私にではなく、アレクシオンにだ。
 こんな私じゃこの先不安しかないのに。
 いつか元のアレクシオンに戻るかもしれないから?そうしたら私はどうなるのだろう。
 男のまま生きるのも辛いけど、死ぬのも嫌だな…。
 
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