戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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「父上が退位なさるおつもりらしい。」
 皇帝を辞めるってこと?まだ若いのに。
「この度の戦争の責任を取るという形だ。勝ってはいるが死傷者が大勢いることも事実。なんらかの形で責任をとらねば民は納得しないだろう。」
 でも、退位するほどの事ではないと思う。
 むしろ事後処理で誠意を見せるべきではないの?
「だが、真の目的は他にある。
 この度の戦争の責任は国だけではない。神殿にも責任をとらせる。
 皇帝が退位するなら大神官も同等の誠意を見せてもらわねばならない。
 だが大神官が自ら辞めることはしないだろう。」
 神官は一度神殿に所属するとほとんどは一生神殿で過ごす。
 なぜなら神殿を出る時は財産のすべてを没収されるから。
 大神官ともなればかなり私財を所有しているだろう。そのすべてを寄贈することなど出来るだろうか。
「どのような責任をとろうが、帝国は認めない。帝国が認めるのは国教の廃止だ。」
 じゃあ、絵画などでよく見る戴冠式に神官が王冠を頭に乗せるアレどうなるの?
「私は帝国始まって以来初めての神ではなく、国と民が認めた皇帝となる。そして自らの手で王冠を戴く事となるだろう。」
 そうすんなりいくだろうか?
 ガルディバノンがまだ小国の一つだったころから光聖神教を国教と定め宗教を政治に利用するなど密接な関係にあった。そういうのはよくあること。人心を動かすのに都合が良かったから。
 帝国と神殿は二人三脚で大きくなった。
 だが神殿は力を持ちすぎた。
 今回のジグリア攻めもおそらくジグリアの持つ魔石鉱山を私物化するため。鉱山で働く労働力も彼らを奴隷にすることで賄おうというのだろう。
「民の多くは光聖神教を信仰しているのでしょう?国教を廃止して支持を集めることは出来るの?」
「…難しい。その為には光魔法が人を惑わすという事実を知らしめるのが一番だろうが、証拠となるものはない。」
 救いなのは帝国は宗教の自由を認めているということ。
「代わりになる宗教を広めては?」
「それは私も考えた。だが、民は目先の事に惑わされやすい。光聖神教はわかりやすく奇跡をおこし人々を取り込んだ。それに敵うような宗教は…。」
 人々は長きに渡って洗脳を受けてきたようなものだから、盲目的に求めている。
 光の女神アルテミアのおこす奇跡を。
 だが、信じ求めてはいるが事実奇跡は信仰心の厚い者にしかおこらない。信仰心とはイコール寄付(お金)だから。
 もっと簡単で差別をしない神がいれば、光聖神教に疑念を抱きはじめるかも。
 たしか元の世界の歴史で農民達の間に爆発的に広まった宗教があったっけ、「南無阿弥陀仏」と唱えればどんな罪を犯しても極楽浄土に行けるなんて都合のいい仏教が。でもこの世界には仏教なんて無い。
「新しい解釈を作れば?例えばこう言っては失礼だけどもっとも地味な女神ジーノなんて打ってつけなんじゃないかな?」
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