戦鬼は無理なので

あさいゆめ

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 戴冠式が華々しく行われた。
 通常は即位式を城で皇族と上位貴族のみで行い、光聖神教の大神殿で戴冠式が行われていた。
 今回は前皇帝が国教を廃止した為、共に城で行われた。
 多くの場合、皇帝の崩御もしくは政務を行えない場合に次の皇帝が即位する。
 だが今回は前皇帝みずから即位式を執り行った。
 戴冠式は民衆からも見える城の正面のバルコニーで行われた。
 新皇帝自ら冠を戴き、両側からうら若い聖女達が祝福のシャワーを浴びせる。同時に子供達が花吹雪を散らし魔法使いがその花を城の前の広場いっぱいに振りまいた。空には白い鳥が羽ばたき彩雲が広がる。
 その後一般には非公開だった後宮を平民に開放し、食事をふるまった。
 後宮は廃止され住まうものがいないこの邸は取り壊される事となる。その後、跡地には平民も利用できるような皇立図書館を建設予定だ。
 マティアス殿下は開かれた皇室を目指しているようだ。
 セレモニーが終われば貴族達は城の中で行われるパーティーに参加する。
 といっても国外からの貴賓も多い。
 城は招待を受けた上位貴族のみだ。
 その他は点在する離宮へ向かう。
 マティアス殿下は婚約者であるリタ様とそろいの濃紺の生地に金糸をふんだんに使った煌びやかな衣装。
 とても似合いの二人だ。
 このパーティーは婚約者を各国の大使に紹介もかねているのだろう。
 リタ様は外国語が堪能らしく大使らとも楽しそうに談笑されている。
 私はといえば今日も黒い衣装で会場の隅で壁の花…でもないか。壁そのもののようにひっそりたたずんでいた。
 今日は殿下も忙しいから挨拶もいいだろう。
 王冠を戴いた殿下の姿も見れたし。
 もういいだろう。
 この感情はきっとアレクシオンのものだから。
 次の日、私は首都を離れ領地へと向かった。
 テリオス君は当然のように付いてきた。
 後はエミリンとマイア、御者のベンジャミンこの五人のメンバーだ。
 執事のウォルシュだけに伝えひっそり旅立つつもりだったが荷物が多く、一番大きな馬車を使うしかなく盛大なお見送りになってしまった。
 幸いサンディはパーティーからの帰りが遅くなりまだ寝ていたので引き留められる事はなかったが。
 さあ、新しい門出だ。
 きっと楽しい事がある。
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