14 / 63
14 天使降臨 神官長メセテア・ホルセ・エナ・フィオーネ視点
しおりを挟む
ああ、もう嫌だ、疲れた。
いつまで繰り返せばいいんだよ。クソ、治癒師を使い捨ての魔石程度にしか思っちゃいない。
見ろよ、この王様一人に死屍累々の治癒師達を。
もうだめだ…魔力切れる…。
「大丈夫ですか?」
優しく肩に置かれた小さな手から暖かい魔力が流れ込む。
天使?背中に見えたのは羽ではなくてリボンだったか。
「代わります。」
ベッドに横たわる小さな王の布団をバサッとひっぺがす。おいおい、不敬だぞ。
回りがざわつくが、そんなことは無視してベッドに上がり両手をかざす。
なんという神聖力!辺りが光に包まれる。ちょ…ちょっとだだ漏れなんですけど!背後で干からびてた治癒師達まで起き上がりはじめた。その中の一人がつぶやく。
「ああ…聖女様。」
普通の人々には見えないが我々神殿に使える神官には治癒魔法や回復などは神聖力という特別な光となって見える。
だがこの強い光はなんだ?これは何の修行もしていない普通の人の目にも見えるのではないか?
「聖女様…。」
口々に呟き、祈りを捧げ出す。
本来なら帝国の大神官が認めていない者を我々神官が軽々しく「聖女」などと口にしてはいけないのだが、祈らずにはいられなかったのだろう。
疲弊しきった彼らの目にこの光景はあまりにも神々しい。
プラチナの髪に赤い瞳の小さな王様が痩せた身体を起こす。回復してもやはり生気は感じられない。
自分の傍らに立つ少女と祈る神官達を不思議そうに眺め、
「君は?」
少女は答えずにベッドをおりドアの方へ向かう。
そこにはレオがいた。ああ、彼女が彼を治したという少女か。
「お待ちなさい!」
王太后付きの侍女が叫ぶようにきつい口調で呼び止める。
現在この部屋には、王様とその実母である王太后様、侍女が五人に私と神官達が五人、王宮専属侍医、後から来たレオとステファン、そして少女がいる。
この王太后付き侍女は王太后の姉かなんからしいけどいつも偉そうだ。
「そなた、王宮専属治癒師として召し抱えてやろう。しかと、努めるように。」
「え?嫌だけど?」
ぷっ、言っちゃったよ。思わず吹き出してしまったじゃないか。
こんな逸材逃すわけにはいかない。
「お待ち下さい。この者は類い稀な才を持っております。聖女候補として神殿にて預りといたしたくぞんじます。」
「は?この人何勝手に言ってんの?」
うん、そうだよねー。何この子かわいい!笑える!レオ、なんとか言え。
「これはリノス男爵家令嬢、レティシアと申しますが、私が後見をしております。話しがあれば私を通していただきたい。」
王太后の侍女が青筋を立てて喚くように、
「なんという無礼な!わきまえなさい!」
病み上がりの王様の前であんたの方が無礼じゃないか?
それにしても、相変わらず王太后様は一言も発せず口元を扇子で隠したままだ。自分の子供を助けるためにこれだけの人が集まっているってのに、礼の一つも無しかよ。
そんな侍女の事は無視してレオが王様に近づき、
「陛下にご挨拶いたします。ご気分はいかがですか?」
「うん、凄く楽です、叔父上。この子が助けてくれたの?」
「そうですね。でも、ここにいる皆が陛下のために尽くしました。まずは礼を。」
「うん、皆に礼を言う。世話になった。」
レオってこんなちゃんとした人じゃなかったのに苦労してんだな。
レオと俺は魔王討伐のパーティーで一緒だった。
他のパーティーメンバーはタンクの役のおっさん騎士二人とよくわからないメィリィと年老いた魔法使いのシンディと雑用係りにステファン。
「なあ、テア。」
テアとは俺の愛称だ。名前が長いからと、レオがつけてくれた。
メセテア・ホルセ・エナ・フィオーネ神官、これが俺の名前だ。
「このパーティーには何か足りないと思わないか?」
「バランスはいいと思うが。」
「トキメキだよ!トキメキ要素が足りないんだよ。ビキニアーマーの(巨乳)女戦士とか、可憐な(巨乳)聖女とかさー。」
「お前何言ってんの?最低だな、女性メンバーに対して失礼だろうが。」
「メィリィはいいんだよ。あのままでカッコいいんだから。」
メィリィ何照れてんの?
「シンディさんだっているだろうが。」
「やだ、お前シンディの事そんな目で…。」
なんでそうなる。
「ばあちゃん。気を付けてね!あいつ変態だよ。」
シンディの肩に手を置き耳打ちする。
「だいたいシンディさんなんで老婆の姿なんです?いつもは若作りじゃないですか!」
シンディは年齢不詳だが、いつもは三十代くらいの妖艶な美女の姿なのに。
「だってこっちのほうがレオが優しいんじゃもん。」
じゃもんじゃねーよ。
この見た目に反して残念な中身の勇者は王族とは思えないような気さくさで身分の隔たりなく誰とでもすぐに親しくなる。
初顔合わせで、なぜ王子自ら魔王討伐に行くのかと聞いたら「生まれた時から決まっていたから」なのだと。
宿命を背負って生きてるとでも言うのか?
「なあ、テア~ほんとに勇者って死んでも生き返れないの?」
「何またバカなこと言ってるんですか。」
「えー神殿って勇者が生き返るとこじゃないの?」
「神に祈りを捧げる場所です。」
「まじかー死にたくねー。」
こんな調子だからいつの間にかこいつに敬語を使うのは止めた。
おまけに口調までうつってしまって普段の言葉使いがすっかり悪くなってしまったじゃないか。
いつまで繰り返せばいいんだよ。クソ、治癒師を使い捨ての魔石程度にしか思っちゃいない。
見ろよ、この王様一人に死屍累々の治癒師達を。
もうだめだ…魔力切れる…。
「大丈夫ですか?」
優しく肩に置かれた小さな手から暖かい魔力が流れ込む。
天使?背中に見えたのは羽ではなくてリボンだったか。
「代わります。」
ベッドに横たわる小さな王の布団をバサッとひっぺがす。おいおい、不敬だぞ。
回りがざわつくが、そんなことは無視してベッドに上がり両手をかざす。
なんという神聖力!辺りが光に包まれる。ちょ…ちょっとだだ漏れなんですけど!背後で干からびてた治癒師達まで起き上がりはじめた。その中の一人がつぶやく。
「ああ…聖女様。」
普通の人々には見えないが我々神殿に使える神官には治癒魔法や回復などは神聖力という特別な光となって見える。
だがこの強い光はなんだ?これは何の修行もしていない普通の人の目にも見えるのではないか?
「聖女様…。」
口々に呟き、祈りを捧げ出す。
本来なら帝国の大神官が認めていない者を我々神官が軽々しく「聖女」などと口にしてはいけないのだが、祈らずにはいられなかったのだろう。
疲弊しきった彼らの目にこの光景はあまりにも神々しい。
プラチナの髪に赤い瞳の小さな王様が痩せた身体を起こす。回復してもやはり生気は感じられない。
自分の傍らに立つ少女と祈る神官達を不思議そうに眺め、
「君は?」
少女は答えずにベッドをおりドアの方へ向かう。
そこにはレオがいた。ああ、彼女が彼を治したという少女か。
「お待ちなさい!」
王太后付きの侍女が叫ぶようにきつい口調で呼び止める。
現在この部屋には、王様とその実母である王太后様、侍女が五人に私と神官達が五人、王宮専属侍医、後から来たレオとステファン、そして少女がいる。
この王太后付き侍女は王太后の姉かなんからしいけどいつも偉そうだ。
「そなた、王宮専属治癒師として召し抱えてやろう。しかと、努めるように。」
「え?嫌だけど?」
ぷっ、言っちゃったよ。思わず吹き出してしまったじゃないか。
こんな逸材逃すわけにはいかない。
「お待ち下さい。この者は類い稀な才を持っております。聖女候補として神殿にて預りといたしたくぞんじます。」
「は?この人何勝手に言ってんの?」
うん、そうだよねー。何この子かわいい!笑える!レオ、なんとか言え。
「これはリノス男爵家令嬢、レティシアと申しますが、私が後見をしております。話しがあれば私を通していただきたい。」
王太后の侍女が青筋を立てて喚くように、
「なんという無礼な!わきまえなさい!」
病み上がりの王様の前であんたの方が無礼じゃないか?
それにしても、相変わらず王太后様は一言も発せず口元を扇子で隠したままだ。自分の子供を助けるためにこれだけの人が集まっているってのに、礼の一つも無しかよ。
そんな侍女の事は無視してレオが王様に近づき、
「陛下にご挨拶いたします。ご気分はいかがですか?」
「うん、凄く楽です、叔父上。この子が助けてくれたの?」
「そうですね。でも、ここにいる皆が陛下のために尽くしました。まずは礼を。」
「うん、皆に礼を言う。世話になった。」
レオってこんなちゃんとした人じゃなかったのに苦労してんだな。
レオと俺は魔王討伐のパーティーで一緒だった。
他のパーティーメンバーはタンクの役のおっさん騎士二人とよくわからないメィリィと年老いた魔法使いのシンディと雑用係りにステファン。
「なあ、テア。」
テアとは俺の愛称だ。名前が長いからと、レオがつけてくれた。
メセテア・ホルセ・エナ・フィオーネ神官、これが俺の名前だ。
「このパーティーには何か足りないと思わないか?」
「バランスはいいと思うが。」
「トキメキだよ!トキメキ要素が足りないんだよ。ビキニアーマーの(巨乳)女戦士とか、可憐な(巨乳)聖女とかさー。」
「お前何言ってんの?最低だな、女性メンバーに対して失礼だろうが。」
「メィリィはいいんだよ。あのままでカッコいいんだから。」
メィリィ何照れてんの?
「シンディさんだっているだろうが。」
「やだ、お前シンディの事そんな目で…。」
なんでそうなる。
「ばあちゃん。気を付けてね!あいつ変態だよ。」
シンディの肩に手を置き耳打ちする。
「だいたいシンディさんなんで老婆の姿なんです?いつもは若作りじゃないですか!」
シンディは年齢不詳だが、いつもは三十代くらいの妖艶な美女の姿なのに。
「だってこっちのほうがレオが優しいんじゃもん。」
じゃもんじゃねーよ。
この見た目に反して残念な中身の勇者は王族とは思えないような気さくさで身分の隔たりなく誰とでもすぐに親しくなる。
初顔合わせで、なぜ王子自ら魔王討伐に行くのかと聞いたら「生まれた時から決まっていたから」なのだと。
宿命を背負って生きてるとでも言うのか?
「なあ、テア~ほんとに勇者って死んでも生き返れないの?」
「何またバカなこと言ってるんですか。」
「えー神殿って勇者が生き返るとこじゃないの?」
「神に祈りを捧げる場所です。」
「まじかー死にたくねー。」
こんな調子だからいつの間にかこいつに敬語を使うのは止めた。
おまけに口調までうつってしまって普段の言葉使いがすっかり悪くなってしまったじゃないか。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
321
1 / 3
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる