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   リリアン視点

 クラウディア様のお兄様から呼び出しのお手紙をいただいた。
 なんでお兄様から?
 疑問に思ったけどシャーベットが目の前にちらついて操られるように侯爵邸へ。
 クラウディア様も一緒に待ち受けておられ、客間に通された。
 さすがは大富豪の客間。
 上品な造りにきらびやかな調度品。ぶつかったり傷つけたりしないように気をつけなきゃ。
 挨拶を済ませるとレイモンド様が、
「学期末のパーティーにパートナーが居ないそうだね。良かったら私にエスコートさせてもらえないだろうか?」
 へ?なんで?
「あの、そのパーティーは強制では無いから不参加にしようと…。」
 そのつもりであの従兄の誘いも断ってきた。
「そう言わないでお兄様と行ったほうがいいわ。そのほうがあの従兄も諦めてくれると思うの。
 それに、またカイル殿下があなたを誘ったりしたら…。」
 そうか。そうなったらクラウディア様の立場が無い。
 でも困った。
「あの…恥ずかしいのですが、パーティーに行く為のドレスが無いのです。
 先日着ていたのはちょっと…あの…小さくなってたみたいで破れてしまって。」
 胸がきついと思っていたけど帰り道で脇が破れた。
 クラウディア様は思い出して、
「そう言えば丈が少し短いと思っていたのよね。デザインもリリアンには似合ってたけど子供っぽかったし。」
「三年前のだから着れなくなってもしょうがないのだけど、おばあ様には言えなくて。
 家はそんなに裕福じゃないのにおばあ様は私の為に無理して首都に引っ越してくれたから。」
「ドレスくらい私がプレゼントするが?」
 レイモンド様が申し出る。
「そっ、そんなつもりで言ったんじゃないんです。そんな事してもらう筋合いも無いし、私にはレイモンド様は分不相応で勿体無さすぎです。」
「我が家はドレス一着くらいプレゼントしたってなんとも無いのよ。そうだお兄様が嫌ならわたくしにプレゼントさせて!
 そうと決まれば急がなくちゃ!
 今からブティックに行くわよ!さあっ!」
 何もまだ決まって無いけど無理やり馬車におしこまれた。
「ちょっと!クラウディア様。なんでレイモンド様が?クラウディア様が頼んでくれたんだろうけど、また会場がざわつくよ?」
「リリアンのタイプじゃないのはわかるけど、ちょうどいい相手があれしか見当たらなかったのよ。」
 あれ呼ばわりはちょっと気の毒だ。
 最初はずっと年上だと思ったけど(30代だと思った)、前世の年で考えれば21歳は年下だ。
 良く見たら整った顔立ちでまじめそうなエリートだし。
 だけど侯爵家だよ?本気で付き合う訳がない。
「…今回だけの偽装彼氏なんだよね。」
 
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