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    レイモンド視点

 あれがシュガー男爵令嬢か。
 入学試験ではクラウディアを差し置いてトップ。先日のパーティーではカイル皇太子のエスコートを受け会場をざわつかせたとか。
 どんなしたたかな娘かと思えば、なんと純真可憐な少女のような令嬢ではないか。
 シャーベットで喜んだのは良いが二階まで聞こえるような声を上げるとは、はしたない。
しかし、クラウディアにしてみれば面白く無い相手ではないのか?なぜ我が家に招待したのだろう?
 考えているとクラウディアが来た。
「お兄様、シャーベットをありがとうございました。リリアンが大変喜んでいましたわ。」
「ああ、帰ったか?」
 顔がにやついていないだろうか。
「はい。それで、お兄様に折り入ってお願いがあって参りましたの。」
「なんだ?」
「学期末に行われる学園主宰のパーティーにリリアンをエスコートしていただきたいの。
 リリアンの義父は領地にいるし、春から首都に来たリリアンには頼れる方がおりませんの。」
 学園では社交性も学ぶ為、各学期末にはパーティーが行われる。参加は強制では無いが貴族ならば学ぶべきだ。
「この私に男爵令嬢ごときをエスコートしろと?
パートナーがいなければまたお前の婚約者がエスコートしかね無いからか?」
 兄を当て馬にする気か?
 これまでのクラウディアなら他の令嬢が皇太子にちょっかいを出しても平然と構えていたのに。
 そこまで気の抜けない相手なのか?
「いえ、お兄様がお嫌でしたらわたくしからカイル殿下にお願いするつもりですわ。
 リリアンは今、意に添わぬ婚約を迫られておりますの。立場の弱い彼女には断りきれませんわ。
 有力貴族が彼女をエスコートすれば牽制になると思いまして。」
「なぜそこまで令嬢を気にかける?
 お前からしたらあれは邪魔者では無いのか?」
「お兄様もおわかりでしょう?
 彼女はとても可愛らしくて気立ても良い娘なのです。
 カイル殿下が好意を寄せるのも当然ですわ。
 皇帝となるカイル殿下はいずれ側妃を娶るのは必須。ならば、わたくしの仕事も手伝える有能な者が良いでしょう。更には身分が低くわたくしに逆らわない者。リリアンはもってこいだとは思いませんこと?」
 なるほど、さすがは我が妹。抜け目が無い。
 だが、それではあの娘が哀れではないか?
 いや、私が男爵令嬢ごときを気にやむ必要はないが。
 クラウディアは完璧な令嬢だ。
 皇后の座に着いてもしっかりと役目をつとめるだろう。
 だが、これの下に就いた者は幸せと言えるだろうか?
 一生虐げられ、激務に耐え、寵愛も遠慮せねばならないだろう。
 悲しいかなクラウディアが鞭を手にする姿は安易に想像できてしまう。
 
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