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  レイモンド視点

 リリアンとの時間を大切にしたいのだが、相変わらずの忙しさだ。
 仕事は政務官を経て今は宰相補佐官をしている。父である宰相は親子とあって遠慮無く仕事を押し付ける。
 早く結婚して同じ家で暮らしたいのだが焦ってはいけない。
 最初からやり直したいと言った手前、恋人期間は必要だろう。
 パーティーに誘い、帰りにはリリアンのワインバーにより、少し酔ってから自宅に送る。
 相変わらず酔うと甘えてくる。
 馬車の中では肩にもたれ掛かり、舌足らずな声で誘惑する。
「もう帰っちゃう?」
「ああ。」
「ちょっとらけしゅぜいほうについてかたりあわない?」
 今そんな事を語り合っても明日には忘れているだろうに。
「よっぱらってるからきらい?」
 酔わせたのは私だ。
「好きだ。」
「あらしもすきー!」
 かわいい。
 正直まだ私達の間はまだぎくしゃくして会話も固い。
 だが、酔うと体をよせて話をしてくれる。
 しらふではまだ怖くて彼女の体に身体に触れられない、また拒絶されるのではないかと。
 もう子爵邸に着いてしまった。
 玄関まで送り、トゥーイに預けるのがこのところの定まりだ。
「ちょっとらけよっていこう?」
 指をからませ上目遣いでねだる。
「お嬢様、ご迷惑ですよ。」
 トゥーイがなだめる。
「…うん。」
 馬車に乗り込もうとしたとき後ろからぶつかるものが。
 リリアンだ。
「…どうした?」
 手をこまねく仕草をする。
 顔を近づけると、両手のひらでバチンと頬を掴み口づけされた。
「んふ~おやすみなさい。」
「…おやすみ。」
 抱きしめてキスをした。
「愛してる。」
「ん。」
 追いかけてきたトゥーイに預ける。
 今度は酔ってない時にちゃんとしよう。
 だがその続きはどうする?
 どうやら私はセックスが下手だったらしい。
 リリアンと出会う前までは何度か花売りの女達とも遊んだが、皆それなりに満足させていたはず。
 客の自尊心を壊さぬための気遣いだったのか?
 誰に相談すればよいのだ?
 また花売りの女を相手に…いや、駄目だ。
 そんな事をするのは裏切りだ。
 そうだ本を買おう。
 遅くまで開いているいかがわしい店に入った。
 念のため顔はフードを深くして隠すように。
 女を喜ばせる書物はあった。
 だがその他にも色々と購入してしまった。
 私はやはり変態なのだろうか。
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