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裕美と浩美①
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「姫小路さん、今日もあの子の事お願いできるかしら」
中学に入ってから私は毎日のように、先生にある生徒の世話を頼まれるようになった。
本当は、あんな陰気で不気味で、何を考えているのかわからない無表情な人とは関わり合いになりたくないのだが、世間体というものがある。
私は皆の理想の良い人でなければならないのだ。
「はい。もちろんです。井上さんがクラスメイトと仲良くなれるように頑張りますね。」
心にも思っていない言葉を嘘の笑顔で隠しながら、今日も優等生を演じる。
そう。
私は、井上浩美が好きではない。
私が井上さんを知ったのは、小学6年生の時だ。
それまでにも同じクラスになった事があったのかもしれないが、私は学年全ての人と友達になっていると言っても過言ではないくらい、広く周りと接しているので、おとなしい井上さんが印象に残っていなかった。
井上さん自体、私を避けていたのかもしれない。
なにしろ、私とは全く逆なんじゃないかという人なのだ。
顔は私と同じ大きな目で整っている筈なのだが、陰気な雰囲気とたまにする不気味な笑み、人をジトッと舐め回すように見る所や、目が合うと顔を隠すかのようにうつむいて髪の毛で覆ってしまうため、気味が悪い印象になってしまうのだ。
声は聞こえないくらい小さく、何を喋っているのかわからないので、こちらが察してやらなけれなならない。
おかげで彼女は友人らしい友人がいないのだ。
本は好きらしいが、オカルトっぽいマンガばかりで、それが更に話しかけ辛くさせており、孤立を煽っている。
勉強も運動も、全くといって出来ず、音痴で絵や工作も得意ではない。
こんなにも何も出来ないのに努力をしている形跡が見えない事が、私を苛立たせていた。
そう。
私は、井上浩美が好きではない。
だが、嫌いではないのだ。
幼い頃から、苦手な人でも好きになるように躾けられたので、別に直接嫌がらせをされた訳ではないから、嫌いなわけではないのだ。
『好き』の反対が、『無関心』であると言うように、彼女を見るとイラッとするだけで、私は彼女に関心を持てないのだろう。
彼女にしてみれば、大変失礼ではあるが。
「おはよう、井上さん。今から朝学習のプリントを配るから、少し手伝ってもらっても良い?」
「ぅ・・・あ。ぃ・・・。」
「もうすぐチャイムが鳴るし、やる事があるなら別にいいんだけど。」
「・・・。」
うつむき、髪で顔を隠したまま、固まってしまった彼女を見て、私はイライラが募りながらも笑顔を崩さなかった。
何も喋らず、遂には廊下に飛び出て行った彼女を、クラスメイトは呆れた顔で見ていた。
「姫ちゃんも、毎日大変だね。あんなののお守りを担任に押し付けられて。」
近くにいた男子が、私の持っていたプリントを奪いながら、同情するように言った。
「そんな事ないよ。皆が皆、楽しく過ごせれば良いなと思っているだけ。・・・手伝ってくれて、ありがとう。」
困ったようにそう言えば、周りの女子も男子も口々に言い出した。
「いくら姫ちゃんがお人好しでも、あんな子に世話を焼いてやる必要ないって。」
「そうそう。姫ちゃんが、挨拶は皆にしましょうって言うから、井上さんにも挨拶してるけど、返ってきたためしないし。」
「井上さん、こんなに姫ちゃんが優しくしてくれてるのに、影で姫ちゃんの事睨んでるし。」
私は井上さんが好きではないのだから、井上さんにその気持ちが伝わっている事も考えられる。
「私、嫌われているのかもね?」
冗談ぽく明るく言ったつもりが、しばらくしてチャイムが鳴るまで、クラスメイトを騒然とさせてしまった。
彼女がイジメに会わないように、フォローはしたつもりだが、自分でも友好的になれるよう頑張って欲しいものだ。
今日はもう彼女に話しかけたのだから、先生から頼まれたノルマは、達成したはず。
用があるわけでもないのに、1日1回以上関心のない人に話しかけほど、私は優しくも、お人好しでもないのだ。
中学に入ってから私は毎日のように、先生にある生徒の世話を頼まれるようになった。
本当は、あんな陰気で不気味で、何を考えているのかわからない無表情な人とは関わり合いになりたくないのだが、世間体というものがある。
私は皆の理想の良い人でなければならないのだ。
「はい。もちろんです。井上さんがクラスメイトと仲良くなれるように頑張りますね。」
心にも思っていない言葉を嘘の笑顔で隠しながら、今日も優等生を演じる。
そう。
私は、井上浩美が好きではない。
私が井上さんを知ったのは、小学6年生の時だ。
それまでにも同じクラスになった事があったのかもしれないが、私は学年全ての人と友達になっていると言っても過言ではないくらい、広く周りと接しているので、おとなしい井上さんが印象に残っていなかった。
井上さん自体、私を避けていたのかもしれない。
なにしろ、私とは全く逆なんじゃないかという人なのだ。
顔は私と同じ大きな目で整っている筈なのだが、陰気な雰囲気とたまにする不気味な笑み、人をジトッと舐め回すように見る所や、目が合うと顔を隠すかのようにうつむいて髪の毛で覆ってしまうため、気味が悪い印象になってしまうのだ。
声は聞こえないくらい小さく、何を喋っているのかわからないので、こちらが察してやらなけれなならない。
おかげで彼女は友人らしい友人がいないのだ。
本は好きらしいが、オカルトっぽいマンガばかりで、それが更に話しかけ辛くさせており、孤立を煽っている。
勉強も運動も、全くといって出来ず、音痴で絵や工作も得意ではない。
こんなにも何も出来ないのに努力をしている形跡が見えない事が、私を苛立たせていた。
そう。
私は、井上浩美が好きではない。
だが、嫌いではないのだ。
幼い頃から、苦手な人でも好きになるように躾けられたので、別に直接嫌がらせをされた訳ではないから、嫌いなわけではないのだ。
『好き』の反対が、『無関心』であると言うように、彼女を見るとイラッとするだけで、私は彼女に関心を持てないのだろう。
彼女にしてみれば、大変失礼ではあるが。
「おはよう、井上さん。今から朝学習のプリントを配るから、少し手伝ってもらっても良い?」
「ぅ・・・あ。ぃ・・・。」
「もうすぐチャイムが鳴るし、やる事があるなら別にいいんだけど。」
「・・・。」
うつむき、髪で顔を隠したまま、固まってしまった彼女を見て、私はイライラが募りながらも笑顔を崩さなかった。
何も喋らず、遂には廊下に飛び出て行った彼女を、クラスメイトは呆れた顔で見ていた。
「姫ちゃんも、毎日大変だね。あんなののお守りを担任に押し付けられて。」
近くにいた男子が、私の持っていたプリントを奪いながら、同情するように言った。
「そんな事ないよ。皆が皆、楽しく過ごせれば良いなと思っているだけ。・・・手伝ってくれて、ありがとう。」
困ったようにそう言えば、周りの女子も男子も口々に言い出した。
「いくら姫ちゃんがお人好しでも、あんな子に世話を焼いてやる必要ないって。」
「そうそう。姫ちゃんが、挨拶は皆にしましょうって言うから、井上さんにも挨拶してるけど、返ってきたためしないし。」
「井上さん、こんなに姫ちゃんが優しくしてくれてるのに、影で姫ちゃんの事睨んでるし。」
私は井上さんが好きではないのだから、井上さんにその気持ちが伝わっている事も考えられる。
「私、嫌われているのかもね?」
冗談ぽく明るく言ったつもりが、しばらくしてチャイムが鳴るまで、クラスメイトを騒然とさせてしまった。
彼女がイジメに会わないように、フォローはしたつもりだが、自分でも友好的になれるよう頑張って欲しいものだ。
今日はもう彼女に話しかけたのだから、先生から頼まれたノルマは、達成したはず。
用があるわけでもないのに、1日1回以上関心のない人に話しかけほど、私は優しくも、お人好しでもないのだ。
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