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裕美と浩美③
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『姫小路裕美、大嫌い同盟』と井上浩美が勝手に思っている2人の事を思い出すと、少し胸のつかえは取れたが、教室に戻る気にはなれなかった。
クラスメイト達の哀れんだ様な蔑んだ様な目線も、姫小路裕美の井上浩美の事をなんとも思ってない態度も、ウンザリだった。
保健室に行こうかと思っていたが、もうすぐHRだった事を思い出し、職員室近くの保健室でバッタリ担任や他の先生に会う可能性を考えて、職員室から離れている図書室に向かう事にした。
南側にある教室や職員室とは逆に、理科室や音楽室、美術室などの教科別教室は北側の校舎にあった。
その北側の校舎の1階に図書室がある。
井上浩美は、職員室から上がって来る先生達に会わないように、2階の渡り廊下を使って図書室に向かった。
途中、美術室の前で何か聞こえたような気がしたが、美術の先生に会っては堪らないと、足早に通り過ぎた。
図書室は鍵こそ開いていたが、電気が点いておらず、人の気配もしなかった。
井上浩美は中に入ると鍵をかけ、電気も点けずに大判の本が置いてある奥の方に向かった。
奥の方ならばすぐに見つからず、活字嫌いな井上浩美でも読める、絵や写真でほぼ構成されている絵画集や植物図鑑があったからだ。
以前ならば、たまたま目に留まったミュシャの画集が気に入って、よく見ていたのだが、
姫小路裕美が好きな作家だと知ってから苦手になった。
なので最近は専ら植物図鑑を眺めている。
草花を見ているだけでも癒されるのだが、写真から匂いを感じるような気がして不思議な感覚がするのだ。
今日に限っては、写真の草花が揺れている様な感じもする。
ーーー疲れてる?
空気を入れ替えようと窓を開けに立ち上がった井上浩美は、ふと違和感を感じてテーブルに広げていた植物図鑑に目を落とした。
先程は写真が動いているかの様に思ったのだが、そうではなく、写真の周りの草花の名前や注約の文字が、ゆっくりと消えたり現れたり動いたりして、文章になっているのだ。
それはまるで、井上浩美に話しかけている様だった。
ゴクリと唾を飲み込むと、井上浩美は植物図鑑を凝視した。
『こんにちは。
あの気づいてます?
気づいていたら、話しかけて下さい。』
『気づいてますよね?
ジッと見てるの知ってますよー。』
ギョッとして周りを見回すも、誰もいない。
耳を澄ましてもカナカナ蝉の声と遠くから授業の音が聞こえるだけだ。
たぶん体育の授業の音だろう。
心臓の音が一番大きかった。
「・・・だ、誰・・・?」
喉が乾いて、掠れたような声が出たが、蝉の鳴き声に掻き消されるくらい小さな声だった。
いつもなら、誰にも聞き取ってもらえない。
『そちらの世界の住人じゃないんです。
今、人を探してまして。
手伝ってもらえます?』
心臓の音と唾を飲み込む音だけが、コレが現実なのだと感じさせた。
クラスメイト達の哀れんだ様な蔑んだ様な目線も、姫小路裕美の井上浩美の事をなんとも思ってない態度も、ウンザリだった。
保健室に行こうかと思っていたが、もうすぐHRだった事を思い出し、職員室近くの保健室でバッタリ担任や他の先生に会う可能性を考えて、職員室から離れている図書室に向かう事にした。
南側にある教室や職員室とは逆に、理科室や音楽室、美術室などの教科別教室は北側の校舎にあった。
その北側の校舎の1階に図書室がある。
井上浩美は、職員室から上がって来る先生達に会わないように、2階の渡り廊下を使って図書室に向かった。
途中、美術室の前で何か聞こえたような気がしたが、美術の先生に会っては堪らないと、足早に通り過ぎた。
図書室は鍵こそ開いていたが、電気が点いておらず、人の気配もしなかった。
井上浩美は中に入ると鍵をかけ、電気も点けずに大判の本が置いてある奥の方に向かった。
奥の方ならばすぐに見つからず、活字嫌いな井上浩美でも読める、絵や写真でほぼ構成されている絵画集や植物図鑑があったからだ。
以前ならば、たまたま目に留まったミュシャの画集が気に入って、よく見ていたのだが、
姫小路裕美が好きな作家だと知ってから苦手になった。
なので最近は専ら植物図鑑を眺めている。
草花を見ているだけでも癒されるのだが、写真から匂いを感じるような気がして不思議な感覚がするのだ。
今日に限っては、写真の草花が揺れている様な感じもする。
ーーー疲れてる?
空気を入れ替えようと窓を開けに立ち上がった井上浩美は、ふと違和感を感じてテーブルに広げていた植物図鑑に目を落とした。
先程は写真が動いているかの様に思ったのだが、そうではなく、写真の周りの草花の名前や注約の文字が、ゆっくりと消えたり現れたり動いたりして、文章になっているのだ。
それはまるで、井上浩美に話しかけている様だった。
ゴクリと唾を飲み込むと、井上浩美は植物図鑑を凝視した。
『こんにちは。
あの気づいてます?
気づいていたら、話しかけて下さい。』
『気づいてますよね?
ジッと見てるの知ってますよー。』
ギョッとして周りを見回すも、誰もいない。
耳を澄ましてもカナカナ蝉の声と遠くから授業の音が聞こえるだけだ。
たぶん体育の授業の音だろう。
心臓の音が一番大きかった。
「・・・だ、誰・・・?」
喉が乾いて、掠れたような声が出たが、蝉の鳴き声に掻き消されるくらい小さな声だった。
いつもなら、誰にも聞き取ってもらえない。
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心臓の音と唾を飲み込む音だけが、コレが現実なのだと感じさせた。
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