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入学③
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「お兄様、おはようございます。
殿下とご一緒だったのですか?」
まだ朝の9:30を過ぎたばかりだというのに、すでに疲れた様子のお兄様に声をかけると、お兄様は苦笑いをした。
「はは。不本意ながら、一緒だったよ。」
「何かあったのですか?」
「・・・まぁ、話は後にしようか。式が始まるから。」
「はい・・・。」
「まぁ、すぐに分かると思うけど。」
お兄様は、一度目を瞑って呼吸を整えてから、目を開け、壇上正面に顔を向けた。
私も、姿勢を正して前を向く。
壇上では、新たに椅子が追加されているところだった。
誰が来るのだろう?
入り口方面が騒つく。
後ろを振り向く訳にはいかないので、前を向いたままだが、幾人かの声で「王妃様」「王太后様」と聞こえる。
息子の入学式を祝いにいらっしゃったのか。
他にも保護者が参列しているのだから、おかしい事ではない筈だが、お立場がある訳で、本来ならいらっしゃらない。
殿下は、立場的にも年齢的にも、恥ずかしいのかもしれない。
壇上に上がる方々は、皆の騒つきの通りのお2人だった。
殿下や学園長、お父様などの来賓の方々が席を立つ。
私達も席を立って、男性は胸に右手を当て目元を伏せ、女性はスカートを持ち上げ片足を内側後ろに引いて膝を曲げた。
お2人が席についてから、私達は椅子に座った。
お2人の方を見ると、私の方に笑顔で目礼されたので、私も軽く会釈をした。
「えー、この度は王妃様、ならびに王太后様に御臨席を賜り、学園の入学式を執り行う事が出来ましたる事、なんと誉れ高く喜ばしい事にございます。」
いよいよ、式が始まった。
内心気が重いであろう学園長は、ハンカチで額の汗を拭いながら、挨拶を始めた。
暖房で寒くはないホール内だが、汗をかく程暑い訳ではない。
誉れ高いお2人の所為だ。
「皆様方は、この学園で見識を広め、交友を深め、自身を知って将来の自分の価値を高める為に、研鑽して頂きたいと思います。」
学園長の挨拶は、思っていたよりも遥かに短かった。
大抵の校長先生の話は、10分くらいから、長いと30分くらいかかったりするものだと思うのだが、王族が3人も列席している緊張感で、心臓が持たなかったのかもしれない。
新入生代表挨拶は、やはりジルベルト殿下だった。
無難にしっかりとしたスピーチだったが、後ろで王妃様と王太后様が小声で何か話していたり、クスクスと笑っているので、ジルベルト殿下の眉間には皺が浮かび、イライラしているのが丸わかりの表情だった。
間近で見たら、血管が浮いていたかもしれない。
お2人は終始ご機嫌で、学園長の胃が痛くなる表情と、ジルベルト殿下の怒りを耐え忍ぶ様な姿は、あまりにも対照的過ぎて、両者を比較して目を動かす事で、式が終わってしまった。
訳も分からないような状況で終わった式は、来賓の方々が退出する事で終わり、その後クラスへと案内される筈が、王妃様と王太后様がなかなか退出されない為、終わりを迎えられずにいた。
学園長をはじめ学園関係者、ならびに来賓の大臣各位、護衛の騎士達にお付きの次女達が、促すも席を立たず、皆困り顔でいる中、お父様とロードリン魔法大臣だけが涼しい顔をしていた。
こうなる事を予想していたのかもしれないし、自分達は保護者の立場だから残る予定だったので、関係ないと思っているのかもしれない。
「お祖母様も母上も、席を立って下さらないと、皆が困るではありませんか!」
「私達だとて、誰が一緒のクラスになるのか気になるではないか。」
「そんなの後で教えますよ。」
「何を言っているのです!
実際に見なければ、心配で堪らないわ!」
「別に母上に心配してもらわなくても、私はしっかりやりますよ!」
ジルベルト殿下は、過保護ぶりに呆れたように溜め息をついた。
すると、母親である王妃様に、溜め息を吐き返された。
「誰がお前の心配などするのですか!
お前には、ジェイクもアランもケヴィンも、そしてヤスヒトも居るではないですか!」
ーーーあれ?真也は?
「じゃあ、誰を心配していると言うのです?」
「ヒロミに決まっているでしょう!」
ーーーえ⁈私?
私は、そんなに頼り無く見えるのだろうか?
まだ至らない点があるだろうけれど、目立った失点は犯さない自信はあったのだが。
「ロクでもない、くだらない嫉妬に巻き込まれて、あの可愛いさが失われたら如何するのです!
私達が後ろに居るのだと、威嚇しておかなければ!」
ーーーは⁈
「そういう事ならば、仕方ありませんね。」
ーーーえ⁈
「ようやく理解したのですか。馬鹿息子。」
「はい。申し訳ありません、母上。」
ーーー何、コレ?
私は、お兄様の方を見た。
「・・・お兄様。」
「うん。父上の言う通りだったよ。
王族は、父上と同じで聖女崇拝が激しい上に、陛下も王妃様も王太后様もジルベルト殿下も、ヒロミの事が好きだから。」
お兄様は、全く表情を変えずに飄々と言う。
いや、おかしい。
おかしい事を言ってるって、お兄様も分かっている筈だ。
一貴族令嬢の為に王族が出張って来るって何なんだ⁈
忍び笑いが聞こえたので振り向くと、ロレッティーナ様が笑いを堪えていた。
康人は、「裕美が嫉妬されるなんて、日常茶飯事なのに」と小声で言って、首を傾げている。
真也ならたぶん、「裕美が可愛い?」と笑い転げている事だろう。
殿下とご一緒だったのですか?」
まだ朝の9:30を過ぎたばかりだというのに、すでに疲れた様子のお兄様に声をかけると、お兄様は苦笑いをした。
「はは。不本意ながら、一緒だったよ。」
「何かあったのですか?」
「・・・まぁ、話は後にしようか。式が始まるから。」
「はい・・・。」
「まぁ、すぐに分かると思うけど。」
お兄様は、一度目を瞑って呼吸を整えてから、目を開け、壇上正面に顔を向けた。
私も、姿勢を正して前を向く。
壇上では、新たに椅子が追加されているところだった。
誰が来るのだろう?
入り口方面が騒つく。
後ろを振り向く訳にはいかないので、前を向いたままだが、幾人かの声で「王妃様」「王太后様」と聞こえる。
息子の入学式を祝いにいらっしゃったのか。
他にも保護者が参列しているのだから、おかしい事ではない筈だが、お立場がある訳で、本来ならいらっしゃらない。
殿下は、立場的にも年齢的にも、恥ずかしいのかもしれない。
壇上に上がる方々は、皆の騒つきの通りのお2人だった。
殿下や学園長、お父様などの来賓の方々が席を立つ。
私達も席を立って、男性は胸に右手を当て目元を伏せ、女性はスカートを持ち上げ片足を内側後ろに引いて膝を曲げた。
お2人が席についてから、私達は椅子に座った。
お2人の方を見ると、私の方に笑顔で目礼されたので、私も軽く会釈をした。
「えー、この度は王妃様、ならびに王太后様に御臨席を賜り、学園の入学式を執り行う事が出来ましたる事、なんと誉れ高く喜ばしい事にございます。」
いよいよ、式が始まった。
内心気が重いであろう学園長は、ハンカチで額の汗を拭いながら、挨拶を始めた。
暖房で寒くはないホール内だが、汗をかく程暑い訳ではない。
誉れ高いお2人の所為だ。
「皆様方は、この学園で見識を広め、交友を深め、自身を知って将来の自分の価値を高める為に、研鑽して頂きたいと思います。」
学園長の挨拶は、思っていたよりも遥かに短かった。
大抵の校長先生の話は、10分くらいから、長いと30分くらいかかったりするものだと思うのだが、王族が3人も列席している緊張感で、心臓が持たなかったのかもしれない。
新入生代表挨拶は、やはりジルベルト殿下だった。
無難にしっかりとしたスピーチだったが、後ろで王妃様と王太后様が小声で何か話していたり、クスクスと笑っているので、ジルベルト殿下の眉間には皺が浮かび、イライラしているのが丸わかりの表情だった。
間近で見たら、血管が浮いていたかもしれない。
お2人は終始ご機嫌で、学園長の胃が痛くなる表情と、ジルベルト殿下の怒りを耐え忍ぶ様な姿は、あまりにも対照的過ぎて、両者を比較して目を動かす事で、式が終わってしまった。
訳も分からないような状況で終わった式は、来賓の方々が退出する事で終わり、その後クラスへと案内される筈が、王妃様と王太后様がなかなか退出されない為、終わりを迎えられずにいた。
学園長をはじめ学園関係者、ならびに来賓の大臣各位、護衛の騎士達にお付きの次女達が、促すも席を立たず、皆困り顔でいる中、お父様とロードリン魔法大臣だけが涼しい顔をしていた。
こうなる事を予想していたのかもしれないし、自分達は保護者の立場だから残る予定だったので、関係ないと思っているのかもしれない。
「お祖母様も母上も、席を立って下さらないと、皆が困るではありませんか!」
「私達だとて、誰が一緒のクラスになるのか気になるではないか。」
「そんなの後で教えますよ。」
「何を言っているのです!
実際に見なければ、心配で堪らないわ!」
「別に母上に心配してもらわなくても、私はしっかりやりますよ!」
ジルベルト殿下は、過保護ぶりに呆れたように溜め息をついた。
すると、母親である王妃様に、溜め息を吐き返された。
「誰がお前の心配などするのですか!
お前には、ジェイクもアランもケヴィンも、そしてヤスヒトも居るではないですか!」
ーーーあれ?真也は?
「じゃあ、誰を心配していると言うのです?」
「ヒロミに決まっているでしょう!」
ーーーえ⁈私?
私は、そんなに頼り無く見えるのだろうか?
まだ至らない点があるだろうけれど、目立った失点は犯さない自信はあったのだが。
「ロクでもない、くだらない嫉妬に巻き込まれて、あの可愛いさが失われたら如何するのです!
私達が後ろに居るのだと、威嚇しておかなければ!」
ーーーは⁈
「そういう事ならば、仕方ありませんね。」
ーーーえ⁈
「ようやく理解したのですか。馬鹿息子。」
「はい。申し訳ありません、母上。」
ーーー何、コレ?
私は、お兄様の方を見た。
「・・・お兄様。」
「うん。父上の言う通りだったよ。
王族は、父上と同じで聖女崇拝が激しい上に、陛下も王妃様も王太后様もジルベルト殿下も、ヒロミの事が好きだから。」
お兄様は、全く表情を変えずに飄々と言う。
いや、おかしい。
おかしい事を言ってるって、お兄様も分かっている筈だ。
一貴族令嬢の為に王族が出張って来るって何なんだ⁈
忍び笑いが聞こえたので振り向くと、ロレッティーナ様が笑いを堪えていた。
康人は、「裕美が嫉妬されるなんて、日常茶飯事なのに」と小声で言って、首を傾げている。
真也ならたぶん、「裕美が可愛い?」と笑い転げている事だろう。
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