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武器④
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ああ・・・。
負けて残念と、負けて安心と、両方の気持ちが混ざり合って、モヤモヤする。
どちらが比重が大きいかといえば、『負けて安心』の方が大きいのも、モヤモヤする理由の1つだ。
応援していなかった訳では無い。
でも、これでケガをする事がもう無いと思って、ホッとしている自分が、狡い人間の様な気がするだけだ。
しかし、ホッとしたのも束の間、試合が終わったというのに、ナッサウ男爵令息が尻もちをついているアンナの胸を足蹴にした。
アンナは後ろに倒れると咳込んだ。
周りも少し騒めく。
「平民風情が、貴族に歯向かうとは馬鹿なものだ!身の程を知れ!」
ナッサウ男爵令息は、そう怒鳴るとアンナの落としたソードブレイカーを拾い上げた。
「平民が、こんな物持ちやがって!レイピアなんて生意気なんだよ!」
そして、ソードブレイカーをアンナの持つレイピアに当てた。
ボキッという音と共に、レイピアが折れた。
折れた剣先が、カランと音を立てて転がった。
身体を起こしかけたアンナの顎を、ナッサウ男爵令息が蹴り上げる。
アンナが、後ろに倒れた。
ナッサウ男爵令息はさらに、ソードブレイカーをアンナに向けて、投げ捨てた。
私は、思わず目を伏せる。
「平民の分際で、私の剣を折ろうだなんて、図々しいんだよ!」
顔を蹴るなんて、女の子にやる事じゃない。
私が止める為に叫ぼうとすると、ハリエットが私の手を掴んだ。
ハリエットの方を見ると、目で「我慢して下さい」と訴えかけている。
「試合は終わりましたよ。さっさと下がりなさい!」
審判の先生が、注意をした。
「ケッ!」
足音荒く、ナッサウ男爵令息は鍛錬場を出て行った。
アンナが、ゆっくりと起き上がると、審判の先生が手を貸して、立ち上がらせた。
「ちゃんと、治療してもらいなさい。」
アンナは、先生の言葉に頷いた。
もしかしたら、顎が痛くて動かせないのかもしれない。
アンナが、鍛錬場から出ようと動き出すと、私は踵を返して、一階へと急いだ。
渡り廊下は相変わらず混雑していて、気持ちが急くが、思うように進めない。
やっとの事で渡り廊下を抜け、1階に着くと、控え室に向かった。
控え室でロレッティーナ様とシャロン様を見かけたので、アンナの事を聞いてみる。
2人共、見ていないと言う。
控え室横で治療をしているライト先生に聞いてみるも、来ていないという事だった。
鍛錬場の周りを見回ってみるも、人人人でなかなか見つけ出す事が出来ない。
寮に戻ったのかもと、踵を返すように鍛錬場から抜け出すと、本校舎の方へ向かう。
一個塀を挟んだだけで、喧騒が小さくなった。
「・・・赤に飼われた犬め!」
鍛錬場がある棟を抜け、回廊に出ると、急に怒鳴り声が聞こえた。
回廊に囲まれた庭に、男子生徒が植え込みの低木の纏りに向かって怒鳴っていた。
それは、先程アンナと闘っていたナッサウ男爵令息だった。
人の気配を感じたのか、ナッサウ男爵令息がこちらを見た。
ヴィンセントが、私の前に出た。
「おやおや、これは聖女の姪様。もう、観戦はお済みですか?」
ナッサウ男爵令息が、ニヤリと気味の悪い笑い方をしながら、こちらに歩いてくる。
ヴィンセントが警戒を強め、ハリエットが私を自身の後ろに隠した。
「別に何もしませんよ。
ベルローズ公爵は、余程色無しがお好きらしい。
では、失礼。赤に飼われた黒め!」
私達の側を通りながら、ナッサウ男爵令息はそう言って去って行く。
「貴様ー!何たる暴言を!」
ヴィンセントが剣に手をかけた。
「ヴィンセント!」
私は、止めようと声をかける。
ナッサウ男爵令息は、チラリとこちらを振り返ると、そのまま鍛錬場の方に歩いて行った。
「ヒロミ様、彼奴は公爵家を馬鹿にしました!切って捨ててもこちらに分があります!」
「私には、彼が何を言っているのかよく分からなかったわ。
失礼な事を言われているだろうとしか。
それに、今は私達しか居ないわ。私達に正当性があったとしても、証拠となる物が何も無いわ。」
私は、ヴィンセントを説得した。
ナッサウ男爵令息は、ベルローズ家や私に悪意がある様だが、文句を言われただけでは、相手を弾圧するには力不足だ。
「それに今、私は彼がさっきあの植え込みで何をしていたのかの方が、気になるのだけれど。」
負けて残念と、負けて安心と、両方の気持ちが混ざり合って、モヤモヤする。
どちらが比重が大きいかといえば、『負けて安心』の方が大きいのも、モヤモヤする理由の1つだ。
応援していなかった訳では無い。
でも、これでケガをする事がもう無いと思って、ホッとしている自分が、狡い人間の様な気がするだけだ。
しかし、ホッとしたのも束の間、試合が終わったというのに、ナッサウ男爵令息が尻もちをついているアンナの胸を足蹴にした。
アンナは後ろに倒れると咳込んだ。
周りも少し騒めく。
「平民風情が、貴族に歯向かうとは馬鹿なものだ!身の程を知れ!」
ナッサウ男爵令息は、そう怒鳴るとアンナの落としたソードブレイカーを拾い上げた。
「平民が、こんな物持ちやがって!レイピアなんて生意気なんだよ!」
そして、ソードブレイカーをアンナの持つレイピアに当てた。
ボキッという音と共に、レイピアが折れた。
折れた剣先が、カランと音を立てて転がった。
身体を起こしかけたアンナの顎を、ナッサウ男爵令息が蹴り上げる。
アンナが、後ろに倒れた。
ナッサウ男爵令息はさらに、ソードブレイカーをアンナに向けて、投げ捨てた。
私は、思わず目を伏せる。
「平民の分際で、私の剣を折ろうだなんて、図々しいんだよ!」
顔を蹴るなんて、女の子にやる事じゃない。
私が止める為に叫ぼうとすると、ハリエットが私の手を掴んだ。
ハリエットの方を見ると、目で「我慢して下さい」と訴えかけている。
「試合は終わりましたよ。さっさと下がりなさい!」
審判の先生が、注意をした。
「ケッ!」
足音荒く、ナッサウ男爵令息は鍛錬場を出て行った。
アンナが、ゆっくりと起き上がると、審判の先生が手を貸して、立ち上がらせた。
「ちゃんと、治療してもらいなさい。」
アンナは、先生の言葉に頷いた。
もしかしたら、顎が痛くて動かせないのかもしれない。
アンナが、鍛錬場から出ようと動き出すと、私は踵を返して、一階へと急いだ。
渡り廊下は相変わらず混雑していて、気持ちが急くが、思うように進めない。
やっとの事で渡り廊下を抜け、1階に着くと、控え室に向かった。
控え室でロレッティーナ様とシャロン様を見かけたので、アンナの事を聞いてみる。
2人共、見ていないと言う。
控え室横で治療をしているライト先生に聞いてみるも、来ていないという事だった。
鍛錬場の周りを見回ってみるも、人人人でなかなか見つけ出す事が出来ない。
寮に戻ったのかもと、踵を返すように鍛錬場から抜け出すと、本校舎の方へ向かう。
一個塀を挟んだだけで、喧騒が小さくなった。
「・・・赤に飼われた犬め!」
鍛錬場がある棟を抜け、回廊に出ると、急に怒鳴り声が聞こえた。
回廊に囲まれた庭に、男子生徒が植え込みの低木の纏りに向かって怒鳴っていた。
それは、先程アンナと闘っていたナッサウ男爵令息だった。
人の気配を感じたのか、ナッサウ男爵令息がこちらを見た。
ヴィンセントが、私の前に出た。
「おやおや、これは聖女の姪様。もう、観戦はお済みですか?」
ナッサウ男爵令息が、ニヤリと気味の悪い笑い方をしながら、こちらに歩いてくる。
ヴィンセントが警戒を強め、ハリエットが私を自身の後ろに隠した。
「別に何もしませんよ。
ベルローズ公爵は、余程色無しがお好きらしい。
では、失礼。赤に飼われた黒め!」
私達の側を通りながら、ナッサウ男爵令息はそう言って去って行く。
「貴様ー!何たる暴言を!」
ヴィンセントが剣に手をかけた。
「ヴィンセント!」
私は、止めようと声をかける。
ナッサウ男爵令息は、チラリとこちらを振り返ると、そのまま鍛錬場の方に歩いて行った。
「ヒロミ様、彼奴は公爵家を馬鹿にしました!切って捨ててもこちらに分があります!」
「私には、彼が何を言っているのかよく分からなかったわ。
失礼な事を言われているだろうとしか。
それに、今は私達しか居ないわ。私達に正当性があったとしても、証拠となる物が何も無いわ。」
私は、ヴィンセントを説得した。
ナッサウ男爵令息は、ベルローズ家や私に悪意がある様だが、文句を言われただけでは、相手を弾圧するには力不足だ。
「それに今、私は彼がさっきあの植え込みで何をしていたのかの方が、気になるのだけれど。」
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