姫の血縁

姫宮瑠璃

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色無し①

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武術大会は、7年生が優勝したそうだ。
決勝戦は、なんと、シャロン様対7年生。
真也は、そのシャロン様に負けたのだという。
ロレッティーナ様は、準決勝でその7年生に負けたそうだ。
オリヴァー様は・・・ライト先生とお兄様の記憶には残らなかったらしい。
大会終了後、急いで来たライト先生とお兄様にアンナの状態を軽く説明し、学園全体に治癒魔法をかけたのは19時くらい。
それから、ライト先生に記録の水晶を渡してから、アンナを見つけた時の話をして。
話をしている途中で、王太后様とお父様がいらして、また最初から話をして。
私が寮に戻って来たのは、日付が変わる頃だった。
アンナの診察結果は、感電と呼吸困難だった。
身体の状態を記録する水晶は、MRIと3D撮影を合わせた様な、外傷も内臓も確認できる素晴らしい魔道具で、身体の上を滑らすように水晶を動かすだけで記録出来る。
薄着、出来れば裸でやった方が良いとの事だったので、ボルト先生とヴィンセントに退室してもらい、私とハリエットで記録をした。
服を脱がすと、胸の真ん中辺りから、薄っすらと花が咲いたような赤い痣の様な物があったので、それがたぶん感電の痣だろう。
服も、胸の真ん中辺りが焼けていた。
あと、その時に気になったのが、服が覆っていた部位まで、身体が土で汚れていた事だ。
服の内側も土がついていた。
口の中からも土が出てきたので、身体中を土で覆われ、息が出来ないところを、心臓だけに集中する様に雷を放たれたショックで、心臓麻痺を起こしたのだろうという結論を、お父様とライト先生が言っていた。
犯行が行われているところを実際に見た訳では無いので、ナッサウ男爵令息が怪しいとはいえ、犯人であるとは言えない。
明日、事情聴取をするそうだ。
また狙われる可能性があるので、しばらくは邸で療養させるとお父様が連れ帰った。
本人は、帰る事を渋っていたけれど、その方が私としても安心だ。
貴族と平民という身分社会なのだから、閉塞的な考え方をする人がいるのは分かるが、だからといって、暴力は許せない。
ましてや、今回のは明らかに殺意がある。
偏見を持ちたくは無いが、ナッサウ男爵令息のあの態度は、好きになれない。

「ヒロミ様、お茶をお持ちしました。」

ハリエットが、お茶と軽食にスコーンを持って来てくれた。

「ありがとう。ハリエットも、もう休んで。」
「はい。ヒロミ様がベッドに入られるのを見届けてから、休ませて頂きます。」
「大丈夫よ。食べたら寝るわ。
明日も、早いのだし。」

ハリエットは、私の側に控えたまま、自室へ戻る気配が無い。
私は、小さく溜め息を吐くと、ハリエットをお茶に誘った。

「じゃあ少し、お茶に付き合って。
聞きたい事もあるし。」
「・・・かしこまりました。」

ハリエットは、少し逡巡した後、自分にもお茶を用意した。
テーブルの向かいに座る。

「何でしょう?お聞きになりたい事とは。」

私は、お茶を一口飲んでから、答えた。

「ナッサウ男爵令息が言っていた、『色無し』と、ナッサウ男爵家について。」

ハリエットは、ハッとしたように顔を強張らせ、そして大きく息を吐いた。
ハリエットは目を閉じ、呼吸を整えてから、私を見据えた。

「ヒロミ様の元の世界のお国では、黒髪の方が多いとお聞きしましたが、こちらにも、黒髪や黒に近い髪色の者がおります。」
「ええ。魔人と、魔物と人間な亜種、あと、魔力の高い人の中にたまにいるのでしょう?」
「はい。
聖女様と血の繋がりがある方の中にも、黒い髪色を引き継いだ方はおらず、この3つが黒髪の資質と考えられています。」
「だから、忌避する人がいるのでしょう?
お兄様のお母様が、私を誘拐した理由がそうだと聞いているわ。」

ハリエットは、お茶の入ったカップを見つめた。

「今では聖女様は『聖女』として崇められていますが、こちらに来たばかりの聖女様は、魔族だと思われ、殺されそうになりました。」
「・・・。」
「幸い、すぐに発動できた光魔法のおかげで、命を守る事が出来、魔族ではないと証明出来ましたが。
・・・魔族は光魔法は使えないので。」
「・・・。」
「それでも、それまでの常識に囚われた者達は、聖女様が如何に素晴らしい行いをしても、『魔族だ』と蔑む者がおりました。」
「・・・。」
「テルニア国と神皇国は、その様に考えている人が多いと思います。
我が国にも、祖父母世代の中には、まだその様に思っている者がおりましょう。」
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