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隠れ家⑥
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ブリギッテは、頰や目元の筋肉が動かない様に息を吐き、力を抜いた。
顎を上げ、大きく息を吸った。
瞬きが多くならない様に、ゆっくりと目を閉じて開く。
緊張から来る、身体の硬直を他者に感じさせ無いように、指や腕、足を、違和感が無い程度に少し開くようにする。
声を出す前に、飴でも舐めているかのように、舌を口内で動かす。
驚愕や緊張、恐怖を感じた時、人は出来るだけ身体を小さく、丸めようとする。
呼吸が浅くなり、舌の動きは止まり、唾液の分泌量が減り、喉が渇く。
ブリギッテは意図的に、身体に起こりうる筋肉の緊張状態と逆の事をしているのだ。
「・・・まあ!私、ラウド様とは初対面だと思うのですけれど。ラウド様は、私を見かけた事がお有りだったのですか?
同じ職業だといっても、侍従と侍女では立場も内容も侍女の方が劣っていますわ。」
手の硬直を紛らわす為、ブリギッテはエスコートされていたラウドの手を両手で握り込むようにして、身体の緊張をほぐすように、右、左と首を傾げながら、話を逸らした。
ラウドは、そんなブリギッテを爽やかな笑顔を崩さずに、目だけを獲物を狙うかのように獰猛に光らせている。
「私は昨日まで従僕でしたから、侍従になっても任される仕事は似たようなものなのですよ。」
「そうなのですか。昇進、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。
私の昇進は、『聖女様』とリリアというメイドのおかげです。」
心なしか、眼光が鋭くなったラウドの言葉に、ブリギッテは疑問を持った。
「昨日まで従僕だった」「リリアの名前を知っている」事から、リリアの言っていた同種が彼の可能性は高い。
本人も、ブリギッテと「同種の事」について話をしたいと言っていたし。
しかし、彼の昇進が「井上とリリアのおかげ」というのはどういう事だろう?
カウンターに案内され、キッチンメイドによそってもらった食事をお盆に乗せ、テーブルまで運ぶ。
ラウドがブリギッテを連れて来たのは、出入り口から1番遠い、食堂全体を見渡せる席だった。
誰かが自分達に近づいて来たらすぐに分かる席だ。
出入り口に顔を向けるようにテーブルにお盆を置いたラウドの向かいに、ブリギッテが自分のお盆を置こうとすると、
「こちらですよ。」
と、ラウドの横にお盆を持っていかれてしまった。
横では顔色を窺いながら話をする事は出来ないが、周りに話を聞かれづらいのは有り難い。
これから話す内容が「同種の事」なら尚更、近づいて来る人を警戒しながら食事するのには、ちょうど良い。
椅子を引いてくれたラウドにお礼を言って、ブリギッテは席に座った。
今日の昼食は、胚芽パンに豆とチキンのトマトスープ、蒸したジャガイモにチーズだった。
控え室で取る食事よりは少し劣るが、下働きの庶民階級からすれば、かなり恵まれた食事だろう。
いつもならば普通に食べ始めるのだが、ブリギッテはラウドの様子を見守った。
枢機卿の侍従なら、食前のお祈りをするかもしれない。
ラウドは、ブリギッテの予想に反して、特に何もせずにスープにスプーンをつけた。
ブリギッテの視線に気付いたラウドが、笑顔を向ける。
ブリギッテも、カトラリーを手に取り、料理を食べ始めた。
「話をしたい」と言っていたラウドは、黙々と食べていた。
気詰まりではあったが、相手が喋らない以上、話す事は無いと、ブリギッテも無言で食べ進めた。
正午の鐘が鳴ると、食堂に居た人達と入れ替わるように、ドヤドヤと使用人や兵士が入って来る。
ラウドは、そのうちの誰かに手を挙げて合図をした。
ブリギッテと会ったのは、たまたまで、元々はその人と待ち合わせでもしていたのだろう。
しばらくすると、1人の兵士がラウドの向かいに、ガシャリとお盆を置いた。
「おい、ラウド。
デートを見せびらかす為に、俺を呼んだんじゃないよな?」
ちょっと不機嫌そうに、兵士はラウドに話しかけた。
「そう見えますか?
それは光栄ですが、残念ながら違います。」
ラウドは、ニッコリと兵士に微笑んだ。
「彼女は、今日のあなたのデート相手ですよ。」
顎を上げ、大きく息を吸った。
瞬きが多くならない様に、ゆっくりと目を閉じて開く。
緊張から来る、身体の硬直を他者に感じさせ無いように、指や腕、足を、違和感が無い程度に少し開くようにする。
声を出す前に、飴でも舐めているかのように、舌を口内で動かす。
驚愕や緊張、恐怖を感じた時、人は出来るだけ身体を小さく、丸めようとする。
呼吸が浅くなり、舌の動きは止まり、唾液の分泌量が減り、喉が渇く。
ブリギッテは意図的に、身体に起こりうる筋肉の緊張状態と逆の事をしているのだ。
「・・・まあ!私、ラウド様とは初対面だと思うのですけれど。ラウド様は、私を見かけた事がお有りだったのですか?
同じ職業だといっても、侍従と侍女では立場も内容も侍女の方が劣っていますわ。」
手の硬直を紛らわす為、ブリギッテはエスコートされていたラウドの手を両手で握り込むようにして、身体の緊張をほぐすように、右、左と首を傾げながら、話を逸らした。
ラウドは、そんなブリギッテを爽やかな笑顔を崩さずに、目だけを獲物を狙うかのように獰猛に光らせている。
「私は昨日まで従僕でしたから、侍従になっても任される仕事は似たようなものなのですよ。」
「そうなのですか。昇進、おめでとうございます。」
「ありがとうございます。
私の昇進は、『聖女様』とリリアというメイドのおかげです。」
心なしか、眼光が鋭くなったラウドの言葉に、ブリギッテは疑問を持った。
「昨日まで従僕だった」「リリアの名前を知っている」事から、リリアの言っていた同種が彼の可能性は高い。
本人も、ブリギッテと「同種の事」について話をしたいと言っていたし。
しかし、彼の昇進が「井上とリリアのおかげ」というのはどういう事だろう?
カウンターに案内され、キッチンメイドによそってもらった食事をお盆に乗せ、テーブルまで運ぶ。
ラウドがブリギッテを連れて来たのは、出入り口から1番遠い、食堂全体を見渡せる席だった。
誰かが自分達に近づいて来たらすぐに分かる席だ。
出入り口に顔を向けるようにテーブルにお盆を置いたラウドの向かいに、ブリギッテが自分のお盆を置こうとすると、
「こちらですよ。」
と、ラウドの横にお盆を持っていかれてしまった。
横では顔色を窺いながら話をする事は出来ないが、周りに話を聞かれづらいのは有り難い。
これから話す内容が「同種の事」なら尚更、近づいて来る人を警戒しながら食事するのには、ちょうど良い。
椅子を引いてくれたラウドにお礼を言って、ブリギッテは席に座った。
今日の昼食は、胚芽パンに豆とチキンのトマトスープ、蒸したジャガイモにチーズだった。
控え室で取る食事よりは少し劣るが、下働きの庶民階級からすれば、かなり恵まれた食事だろう。
いつもならば普通に食べ始めるのだが、ブリギッテはラウドの様子を見守った。
枢機卿の侍従なら、食前のお祈りをするかもしれない。
ラウドは、ブリギッテの予想に反して、特に何もせずにスープにスプーンをつけた。
ブリギッテの視線に気付いたラウドが、笑顔を向ける。
ブリギッテも、カトラリーを手に取り、料理を食べ始めた。
「話をしたい」と言っていたラウドは、黙々と食べていた。
気詰まりではあったが、相手が喋らない以上、話す事は無いと、ブリギッテも無言で食べ進めた。
正午の鐘が鳴ると、食堂に居た人達と入れ替わるように、ドヤドヤと使用人や兵士が入って来る。
ラウドは、そのうちの誰かに手を挙げて合図をした。
ブリギッテと会ったのは、たまたまで、元々はその人と待ち合わせでもしていたのだろう。
しばらくすると、1人の兵士がラウドの向かいに、ガシャリとお盆を置いた。
「おい、ラウド。
デートを見せびらかす為に、俺を呼んだんじゃないよな?」
ちょっと不機嫌そうに、兵士はラウドに話しかけた。
「そう見えますか?
それは光栄ですが、残念ながら違います。」
ラウドは、ニッコリと兵士に微笑んだ。
「彼女は、今日のあなたのデート相手ですよ。」
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