133 / 150
婚約者③
しおりを挟む
康人は、目を瞑ると浮かんでくる姫小路裕美の肢体を、頭の中で必死に掻き消していた。
しかし、それは全くの無駄骨で、掻き消す先からまた浮かんでくる。
おまけに、身体を拭き清めた時の感触まで思い出して、顔が熱くなってくるのだ。
これは決して嫌だからという訳ではない。
寧ろ、他の男の誰かが姫小路裕美に同じ事をするなど、許せないと思うのだが、意識の無い相手に対する罪悪感がひしひしと沸いてくる。
「はあー・・・。」
手を握る事さえ、幼い時に数回、あったかどうかくらいなのに、ここ何日で手を握るどころかそれ以上の接触をしている。
マークライドに言われずとも、康人は、自分の想いが恋なのだと分かっていた。
こちらの世界に来て、姫小路裕美が声を出せなくなってから。
それまでは、「支えたい」「頼りにされたい」という思いだったが、こちらの世界に来て、「守りたい」から「護らなければ」に、そして「側にいたい」「自分が助けるのだ」から「誰にも傷つけさせない!」「自分が守る!」と独占欲が出てきた。
姫小路裕美に起こったトラブルが起因ではあるが、元より諦めようと思いながらも心の奥に押し込んでいた想いだ。
諦めようと思う原因の『姫小路家次期当主』という枷が取れて、浮かび上がってきたに過ぎない。
自分の想いを自覚した途端に、本人に断りも承諾もなく、肌に触れたり、抱き上げたりする事になり、嬉しい反面、姫小路裕美にどう思われるかが心配だった。
ーーー失望されるだろうか・・・。
昔風に言えば「責任を取る」だが、それはただの自己満足だ。
嫌な事をされた相手になど、関わりたくはないだろう。
もちろん、康人からしたら、そんな義務的な責任ではなく、喜んで姫小路裕美を迎えるのだが。
「なんだ、まだここで耽っていたのか。」
隣の部屋から、マークライドが笑いながら姿を見せた。
他の皆より先に、リストルードと共に転送魔法で姫小路裕美と一緒に王妃の寝室に入った康人は、隠し部屋やカラクリなどは知らずとも、王妃の間をすでに見ていた。
クロッシェントに姫小路裕美を渡す気など無いが、裕美自身が望めば、この部屋は姫小路裕美の物となる。
元の世界でも、こちらの世界でも、まだ何者でも無い自分は、クロッシェントに勝てる物を持っていないと、康人は自身の無力を感じていた。
康人は、いろんな感情で混乱気味だったのだ。
「お前も聞いておかなければ、いざという時にヒロミ嬢を守れないぞ。
ほれ、今からヒロミ嬢の元へ行くから、お前も来い。」
ふらつく頭を奮い起こすようにして、康人はマークライドの後に続いた。
寝室には、ヴィンセントが護衛に付いている。
他に、神官だった女性と、井上の執事をしていたシオンが一緒にいた。
敵であったシオンが、「手足を縛ってでもいいので『薔薇姫様』の元に居させて下さい」と強情にも動こうとしなかったので、そのまま寝室に置いてきた。
ヴィンセントもいるし、『聖女の繭』があるので、問題ない。
マークライドから、口頭で軽く隠し部屋や通路の話を聞きながら、隣りの部屋に入ると、寝室への出入り口で皆が固まっていた。
姫小路裕美は、寝室の奥に寝ているのだから、何かが邪魔している筈ないので、さっさと入ればいいのに、皆、茫然としている。
「ほら、何をボーっとしている。
さっさと入って来たまえ。」
部屋の中から、クロッシェントの声がした。
マークライドが咳払いをすると、皆がハッとして場を開けた。
康人はマークライドに付いて、部屋に入った。
部屋に入ってすぐに、リストルードが愕然としている表情が見えた。
疑問に思いながら、中を見ると、部屋の約3分の1がガラス張りになっていて、そのガラス張りの中で姫小路裕美がベッドに横たわっている。
そして、そのガラスに背を向けるようにヴィンセントが仁王立ちで立っており、ヴィンセントの睨む真前に、跪き祈りを捧げるかの様に指を組んだシオンがおり、壁に張り付くようにメイド服に身を包んだ女性神官が立って居た。
しかし、それは全くの無駄骨で、掻き消す先からまた浮かんでくる。
おまけに、身体を拭き清めた時の感触まで思い出して、顔が熱くなってくるのだ。
これは決して嫌だからという訳ではない。
寧ろ、他の男の誰かが姫小路裕美に同じ事をするなど、許せないと思うのだが、意識の無い相手に対する罪悪感がひしひしと沸いてくる。
「はあー・・・。」
手を握る事さえ、幼い時に数回、あったかどうかくらいなのに、ここ何日で手を握るどころかそれ以上の接触をしている。
マークライドに言われずとも、康人は、自分の想いが恋なのだと分かっていた。
こちらの世界に来て、姫小路裕美が声を出せなくなってから。
それまでは、「支えたい」「頼りにされたい」という思いだったが、こちらの世界に来て、「守りたい」から「護らなければ」に、そして「側にいたい」「自分が助けるのだ」から「誰にも傷つけさせない!」「自分が守る!」と独占欲が出てきた。
姫小路裕美に起こったトラブルが起因ではあるが、元より諦めようと思いながらも心の奥に押し込んでいた想いだ。
諦めようと思う原因の『姫小路家次期当主』という枷が取れて、浮かび上がってきたに過ぎない。
自分の想いを自覚した途端に、本人に断りも承諾もなく、肌に触れたり、抱き上げたりする事になり、嬉しい反面、姫小路裕美にどう思われるかが心配だった。
ーーー失望されるだろうか・・・。
昔風に言えば「責任を取る」だが、それはただの自己満足だ。
嫌な事をされた相手になど、関わりたくはないだろう。
もちろん、康人からしたら、そんな義務的な責任ではなく、喜んで姫小路裕美を迎えるのだが。
「なんだ、まだここで耽っていたのか。」
隣の部屋から、マークライドが笑いながら姿を見せた。
他の皆より先に、リストルードと共に転送魔法で姫小路裕美と一緒に王妃の寝室に入った康人は、隠し部屋やカラクリなどは知らずとも、王妃の間をすでに見ていた。
クロッシェントに姫小路裕美を渡す気など無いが、裕美自身が望めば、この部屋は姫小路裕美の物となる。
元の世界でも、こちらの世界でも、まだ何者でも無い自分は、クロッシェントに勝てる物を持っていないと、康人は自身の無力を感じていた。
康人は、いろんな感情で混乱気味だったのだ。
「お前も聞いておかなければ、いざという時にヒロミ嬢を守れないぞ。
ほれ、今からヒロミ嬢の元へ行くから、お前も来い。」
ふらつく頭を奮い起こすようにして、康人はマークライドの後に続いた。
寝室には、ヴィンセントが護衛に付いている。
他に、神官だった女性と、井上の執事をしていたシオンが一緒にいた。
敵であったシオンが、「手足を縛ってでもいいので『薔薇姫様』の元に居させて下さい」と強情にも動こうとしなかったので、そのまま寝室に置いてきた。
ヴィンセントもいるし、『聖女の繭』があるので、問題ない。
マークライドから、口頭で軽く隠し部屋や通路の話を聞きながら、隣りの部屋に入ると、寝室への出入り口で皆が固まっていた。
姫小路裕美は、寝室の奥に寝ているのだから、何かが邪魔している筈ないので、さっさと入ればいいのに、皆、茫然としている。
「ほら、何をボーっとしている。
さっさと入って来たまえ。」
部屋の中から、クロッシェントの声がした。
マークライドが咳払いをすると、皆がハッとして場を開けた。
康人はマークライドに付いて、部屋に入った。
部屋に入ってすぐに、リストルードが愕然としている表情が見えた。
疑問に思いながら、中を見ると、部屋の約3分の1がガラス張りになっていて、そのガラス張りの中で姫小路裕美がベッドに横たわっている。
そして、そのガラスに背を向けるようにヴィンセントが仁王立ちで立っており、ヴィンセントの睨む真前に、跪き祈りを捧げるかの様に指を組んだシオンがおり、壁に張り付くようにメイド服に身を包んだ女性神官が立って居た。
0
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
仕事繁忙期の為、2月中旬まで更新を週一に致します。
カクヨム(吉野 ひな)様にも投稿しています。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
レベル1のフリはやめた。貸した力を全回収
ソラ
ファンタジー
勇者パーティの荷物持ち、ソラ。
彼はレベル1の無能として蔑まれ、魔王討伐を目前に「お前のようなゴミはいらない」と追放を言い渡される。
だが、傲慢な勇者たちは知らなかった。
自分たちが人間最高峰の力を維持できていたのは、すべてソラの規格外のステータスを『借りていた』からだということを。
「……わかった。貸していた力、すべて返してもらうよ」
契約解除。返還されたレベルは9999。
一瞬にして力を失い、ただの凡人へと転落しパニックに陥る勇者たち。
対するソラは、星を砕くほどの万能感を取り戻しながらも、淡々と宿を去る。
静かな隠居を望むソラだったが、路地裏で「才能なし」と虐げられていた少女ミィナを助けたことで、運命が変わり始める。
「借金の利息として、君を最強にしてあげよう」
これは、世界そのものにステータスを貸し付けていた最強の『貸与者』が、不条理な世界を再定義していく物語。
(本作品はAIを活用して構成・執筆しています)
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活
天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる――
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる