【短編集】

染西 乱

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通っている学校に同担拒否男が転校してきた

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「そこに座っている朝野メグミの昔からの連れの吾島コージです皆よろしくお願いしますね。同担拒否なので、彼女のことを好きだというやつとは仲良くなれないかもしれないのですが、自分的には皆と仲良くやりたいと思っていますのでよろしくお願いします」

 うららかな陽の光の差し込む、日当たりのいい席でメグミは顔を真っ赤にして俯いた。この日がメグミの事実上の青春の終わりを示していたのは周りの皆が知るところである。

 別にコージはメグミの彼氏でもなんでもない。昔からメグミ至上主義のおかしな男なのだ。
 なんでもそつなく出来るし人当たりがいいが、メグミに近づく男の子いや、べたべたしたタイプの女にも容赦ないし、裏でもなにかやってる
 メグミは目立つタイプの女ではない。
 中間層に位置する目立たない女だ。
 それがコージのせいですべてパァ✋
 笑えばいいのか怒ればいいのかかなしめばいいのかわからん。
 コージの裏の顔もうすうす知っている。
 幼馴染だもの。コージが怪しい建物に出入りしているのを見たこともある。なにをするところなのか怖すぎて何にも言えない。
 興信所のような探偵業者の看板になっているが本当かどうかはわからない。

 この学園の男の子が皆メグミを遠巻きにしている。コージが転校してくるまでそれとなーくいい感じに仲のよかったワタルとも完全に疎遠になってしまっている。
 
 コージのいつの間にか懐に入ってくるその手腕には寒気を覚えるほどだ。
 
 今メグミに近づいてくる人には2パターンある。
 1つ興味本位。これは割合チャラチャラした令息に多い。
 そういうヤツは、コージにあることないこと調べ尽くされ弱みを握られて脅される運命にあるし、そういうヤツほど弱みなど叩けば山のように出てくるのだ。
 1つメグミではなくコージに興味があるとき。これは圧倒的な女の子が多い。それも結構キツめの性格の自分に自信のあるタイプ。

 純粋に「どうして直接話に来ないんだ?」という疑問から始まるそれは明らかに尋問めいたものであり、最後には搾りかすのようなよれよれの状態になりようやく解放される。メグミは正直脳内では、質問全てに「知らんがな」と返答しているが現実でそれをすればまだ禍根の元になって、日常生活がめちゃくちゃになるので頑張って相手の求める回答を授けている。

 とはいえメグミとコージはただの幼馴染であり、彼氏彼女でもなんでもない。
 昔からコージがメグミに一方的に纏わりついている。それを拒めないのはメグミの優柔不断さが主な原因だ。

 メグミは由緒正しいやんごとなき令嬢であったが、近々婚約破棄に巻き込まれる予定である。
 未来視でもなんでもない。
 兄が婚約破棄を行う予定であり、理由は「運命の女神と契りを交わしたから」という眉唾ものの理由であることから、周りの理解は得にくいであろうことが予想される。婚約相手からすれば勝手な言い分、見知らぬ女との浮気の言い訳にしか聞こえない上、その婚約破棄を大規模なパーティー会場でぶち上げる予定なのだ。(神様は嫉妬深い、大々的に縁切りしないとこちらの命が危ぶまれる)
 そうして、わが家はどこからも後指指される存在になるだろう。
 友達だって友達のままでいてくれる保証もない。が、コージは違う。

 メグミがどんな状況にあろうとメグミの側にいるに違いない。

なぜって、コージはそういう存在だから……。

 つまりは今の状況は少しあとの自分のためにしていることなのだ。
 メグミは一人になりたくないだけだ。

 女神と契った兄は今後神官長いや、もっと上の役職に就くだろう。もしかしたら人間やめる、とか言い出すかもしれないが、それは止めようと思っている。人が神になっていいことなどほとんどない。女神だって兄が人間であるから契ったに違いない。

 メグミの家は神下ろしの家系であるが、それを知るのは政治の中枢にいる一部の人間だけだった。

 平たく言えばコージもまたやんごとない神なのだ。
 神の行動に人が口出しするなど、言語道断。

 最近は面白半分暇つぶし半分でメグミに付き纏っている。

「メグミのことはオレが守ってあげるからな」

 神と幼馴染などとんでもない。
 恵が生まれた時には既にコージはきちんと祠に奉られた神であった。

 その祠を壊したのは他でもないメグミだ。

 だからなにをされても文句は言えない。
 コージに祟られる理由をメグミは有しているのだから。

「メグミはオレのお嫁さんになるんだからね」

 メグミは、コージのいつもの言葉に曖昧に微笑む。目の奥に真っ暗な暗闇が鎮座しているコージに見つめられて、体温が何度か下がった。
心臓の動きが悪くなったからである。

お嫁さんなんて嫌だ、などと拒否する形すら許されない。

メグミは冷たくなった腕をさすり、すぐ近くに置いてあった茶色いブランケットをひきよせた。
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