ぬい【完結】

染西 乱

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すでに今日の分の検品を終えてある。
薄暗く、埃っぽいバックヤードには、これでもかとぬいぐるみや、小物、おもちゃが並べられ、開始日時が決まっているものは手書きの日付のついたカゴに詰め込まれている。
今日出さないといけないものがなかったかと念のため見にきた薄暗いバックヤードの検品用の棚の上に、手に乗るサイズのぬいが落ちていた。
落とし物か、検品漏れかわからない。誰がこんなところに置きっぱなしにしたんだか。今日の検品担当の名前を確認しようと貼り出された紙を見る。
そこに名前のある社員さんは、今日はもう帰ってしまっている。
落とし物だとお客さんが探しに来た時に困るので、一応連絡ノートにぬいを預かっている(仮)ことを書いておく。
黒い作業台の上にぽつんと置き去りにされていたのは水色のシャツと、黒いズボンを着たシンプルなぬいだった。
やや垂れ目ではあるが真っ黒の瞳はきっちりとした細やかな刺繍が入っている。
そう安物でもないのかもしれないと感じる繊細な刺繍だ。
髪型はこれと言った特徴がなく、やや長めな前髪と肩ぐらいの長さに揃えられたまるで日本人形のような簡素な髪型だ。最近はかなり凝ったつくりのぬいが多いので、逆に珍しいほどのシンプルなデザインだ。

これはいわゆる職業系のキャラクターぬいだろう。
ほとんどの場合有名どころの某ハンバーガーショップや、某ネコ宅配業者、キャビンアテンダントなどかわいき制服でなおかつ、みんなの憧れの職業に扮したぬいというのは定番中の定番だ。

うちのゲームセンターの制服も水色シャツだし、警備員さんの服にもよくある配色だ。

 ひっくり返して背中までじっくりとみてみるが、このぬいにはタグが付いていない。
結果としてどこの商品なのかわからなかった。
そのため、返品もすることができない。

とりあえずは机の下の「なんでも入れ」に入れることにした。
これはなんかわからないものが出てきた時に一時的に入れておく場所だ。
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